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チケットぴあインタビュー

箭内道彦

箭内道彦
金髪にすらりとした長身。そして、やわらかな福島なまりを含んだしゃべり方‐‐。2011年3月11日、東北、東日本を襲った震災以降、故郷である福島県の復興のために『風とロックLIVE福島 CARAVAN日本』実行委員長として、またバンド、猪苗代湖ズの一員として多方面で活躍しているクリエイティブディレクター、箭内道彦。4月7日には初の関西公演となる『風とロックLIVE福島 神戸 CARAVAN日本』が神戸国際会館で開催される。当日は、震災から半年後の2011年9月に福島県内6カ所で開催されたイベント『LIVE福島 風とロックSUPER野馬追』を追ったドキュメンタリー映画とトークショー、そしてライブで構成。“CARAVAN日本”の名の通りに昨年12月の福島からスタートして沖縄、北海道、長崎など日本各地を旅してきた『風とロック』に注ぐ箭内道彦の思いを聞かせてもらった。

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――『風とロック LIVE福島CARAVAN日本』で全国各地を回ってこられて、各地の皆さんの反応はいかがですか?


「みんな優しくてあったかいですね。会場に来て下さる方はそれぞれの土地の地元の方が中心ですけど、福島から観に来ましたっていう人もいたり、福島からその土地に避難してる人もいたり、“日本全国全部ついていきます!”っていう人もいたり。福島のことを知ってもらうための場っていうのはもちろんなんですけど、それとともに、来てくれた人それぞれにとっての“ふるさと”って何だろう?ってことを思ってもらったり、いろんな場所で開催することによってたとえば福島と沖縄が仲良くなるきっかけの日だったり、福島と札幌が仲良くなるきっかけの日だったり。そんな風にも考えています。実は沖縄で開催した時、終演が1時間以上、押しちゃったんですね。普通に考えて東京でそれをやっちゃうと会場の人とか怒る人が出てくるんですけど(笑)、沖縄では誰も怒らなくて。そこに甘えちゃった部分もあるんですけど(苦笑)、沖縄の人の大きさや大らかさをすごく感じたんですよね。福島の人も多分怒らないんですよ。福島の人はそういう時に我慢するんですよね。沖縄と福島って、日本全体で考えなきゃいけない問題を小さな地域に押し付けられてたりする共通点があるのかなって思ったりして、だからこそいろいろ頑張らなきゃいけないなと思ったりもしましたね」



――ライブの前に、2011年9月に福島で6日間にわたって開催された野外ロックフェス『LIVE 福島 風とロックSUPER野馬追』のドキュメンタリーが上映されます。このライブを映画にしたいと思われたのは、全国の人に知ってもらいたかったからでしょうか?


「まさにそうですね。この時You Tubeでライブ配信をしたんですが、200万近いリアルタイム試聴をしてもらったんですよ。その場に集まったのは2万数千人でしたけど、それがこうやって広がっていくんだっていうのを目の当たりにして、もっともっとたくさんの人に福島を知ってもらいたいし、“知る” 復興支援というか、復興支援にもいろいろ方法がありますけど、お金を出すとか実際に福島に行くことじゃなくてもよくて、“福島に生きている人達ってこんな人達ですよ”っていうのを知ってほしかったし、それを伝えたかったんですね」



――自分を振り返ると、復興支援といっても何かが出来るわけじゃないんですが、“震災のことをずっと忘れないでいる”という応援の仕方もあるのかなと思ったりします。


「それはとても大きなことだと思います。震災直後からそうですけど僕なんかの若い頃と違って(笑)、今の若い人はまっすぐだし真面目だし純粋だし、“自分は何もできない”ってことで自分を責めるんですよね。でも、忘れないことだけでも支援だよって言ってるんです。ライブに来て楽しむことも支援だし、支援してる人を応援することも支援だし、もっと支援ということがカジュアルに気楽なものになったらいいなと思うんですね。そうじゃないと、“自分にできることはなんだろう?”“それが出来ない自分は無力だ”と思ってしまうことがもったいないなと思うんですね。だから、忘れないでいてくれたら、そんなに大きい支援はないと思うし、福島の人も心強いしうれしいと思います」



――そう言って頂けるとこちらもうれしくなります。今回のキャラバンにも参加されている渡辺俊美さん(TOKYO NO.1 SOUL SET、猪苗代湖ズ)が昨年12月に大阪でソロライブをされ、『I love you&I need youふくしま』と故郷の富岡町を歌った『夜の森』を歌ってくれました。その2曲を紹介する時に“みんなの歌だよ”と言われていたのが今も心に残っています。個人的な話ですが、そのライブがあった12月の暮れに自分の実家に帰省した時、今の日本には故郷に帰ることができない人が何万人もいるという事実を改めて思い知り、「みんなの歌だよ」と言った俊美さんの言葉が強く思い出されました。


「うん。俊美さんのその言葉には “(震災に関するいろんな出来事は)みんなで考えなきゃなんない問題なんだよ”ってことも含まれてると思うんだけど、“みんなにふるさとがあるんだよ”ってことも伝えたかったんじゃないかなと思うんですね。『I love you&I need youふくしま』も、福山雅治さんがギターのフレーズを入れてくれたバージョンが出た時に、福山さんも“この歌を聞くと(福山さんの出身地である)長崎を思い出す”って言ってたんですね。歌では“ふくしま”っていう4文字になってますけど、それぞれがそれぞれのふるさとを大切に思ったり、自分だけじゃなく友達の故郷も大切に思えたらいいなと思うんです。たとえば、友達の故郷(ふるさと)や、自分が行ったことのある場所で何かが起きたら、“旅行に行った時に出会ったラーメン屋のおばちゃん、心細くないかな?”って思うわけで、自分にとっての第2の故郷、第3の故郷をそれぞれに作っていくことが大事だなって思うんですね。友達が住んでる場所が日本中にあったら日本中どこで何があっても自分の故郷のように心配することができるし、『風とロック』がそういうきっかけが始まる日にもなったらいいなと思うんですね。それと、全国を回って最後に福島でも開催するんですが、福島の人たちにとっては、(そこに集まるのは)地元の人だけじゃなくいろんなところからみんなが集まってくるわけで、福島を応援してくれたり支えてくれたり、忘れないでいてくれたりする人とナマで触れ合うことができる場になるというのも大きな体験だと思うんです。自分はひとりぼっちだと思っていたけど、遠いところから来て応援してくれる人が横でニコニコしているのを見れる。それは大きいですよね」



――「故郷(ふるさと)」という言葉もいい言葉ですね。


「うん。このイベントは“ふるさと”がテーマですね。それぞれのふるさとだったり、“君”と“僕”のふるさとがテーマのイベント。僕も故郷にはヤなことが多かったんで、震災の5年ぐらい前まではほとんど帰ってなかったし、むしろ“嫌いだ”って公言してた時期もあって。でも、帰らなくても、そこに(ふるさとが)あり続ける大事さというか、そこにあるから嫌いでいられるということをすごく感じました。だから、本当の意味で今故郷に帰れない人達がいて、帰れない場所が日本の中にあるというのは、とても異常なことなんだと思うんですね」



――箭内さんが参加されているTHE HUMAN BEATSの『Two Shot』という曲はミュージックビデオの映像も、ひとつひとつの詞の言葉もとても温かい気持ちが広がる曲ですね。


「ASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチ(後藤正文)と対談をした時に、あの歌が自分の中に生まれ始めたんですね。ゴッチも「The Future Times」というフリーペーパーを作っていて、ゴッチと僕では言ってることや考えてること、している行動も違うけど、同じ部分とか、大切にしたい部分はちゃんとお互いの中に見つけられるし、そういう2人が1つのフレームに入っていく年にすべきだなぁとその時に思って。放射線の功罪のうちの罪のひとつに、みんながバラバラになってしまったことがあるなぁって思ったんですね。住む場所もバラバラで、福島には今も200万人の人達がいるけど、全国に自主避難をした人達もいる。避難した人は、“故郷を捨てるのか”って言われたり、逆に避難した人は福島にいる人達に“子供たちを守るためにはそんなところに住んでちゃダメだ”って言ったりするケースもあって。みんな大切なものを守りたいと思ってしている行動なのに、お互いを責め合ってしまってたりすることがあるんですよね」



――あぁ、わかります。


「脱原発のこともそうだと思うんですけど、原発がなくなってもちゃんと生活が成立していくことはみんなが願ってることだけど、脱原発のデモを見ると、中には“福島でもっと悪いことが起こることを期待されてるんじゃないか?”って思い込んじゃう人もいたりして。日本人って、思ってることを全部は外に出さないところが良さでもあり悪いとこでもありと言われてきたけど、この震災があってみんな自分の考えを言うようになったんですよね。“原発はなくすべきだ”とか、“大切な人は守るべきだ”とか。それはいいことだと思うんだけど、自分の意見を行った後に人と調和する方法を知らないんじゃないかな?と思って。自分と違う考えの人を否定して終わりじゃなく、“なるほど。だったら2人でこれからどうしていこうか?”っていうことをみんなで考えることができたら。『Two Shot』という曲がそのきっかけになったらいいなって。猪苗代湖ズの『I love you& I need youふくしま』だけでは足りなかったものを『Two Shot』で補えたらなぁって思ったんですね」



――そういう成り立ちで生まれた曲だったんですね。


「2月に札幌で『風とロック』をやった時にゴッチが来てくれたんですよ。出演者もその土地、その場所によってバラバラで、福島出身のアーティストもいればゴッチだったり斉藤和義とか、独自の発言、独自のスタンスによる活動をしてきている人もいて。そういういろんな人がいる場所が『風とロック』、『LIVE福島CARAVAN日本』ではありますね。だから“福島”って入っていたり“日本”って入っていたり、その土地の名前も入っていて凄い複雑なイベント名になってるんですよね(笑)」



――そのイベントがいよいよ関西にやって来てくれます。


「4月7日の神戸公演では阪神淡路大震災を経験しているガガガSPや黒猫チェルシーも出ますし、音速ライン、渡辺俊美、富澤タクの福島組もいれば、怒髪天や高橋優みたいに震災前から『風とロック』のイベントで福島に来てくれているアーティストも出ます。フェスでもないし普通のコンサートともまた違うんで、のんびり観ていてもらえばいいし、休憩がてらロビーに出てくると、福島のことを伝えるパネル展もあります。休んだり観たり、立ち上がりたい人は立ち上がって、歌いたい人は歌ったり、長い時間ですからそんなふうに過ごしてもらえたらなぁと思いますね。全国各地そういう感じでやってきていて、“親戚の家に来たような気分だ”ってよく言われてます(笑)。『風とロック』はもうそういう芸風になってますね」



――芸風(笑)。


「ハイ(笑)。福島で怒髪天のライブを観てもらうとわかるんですけど、福島の人はみんな怒髪天の曲を歌えるんですよ。『歩きつづけるかぎり』でも、『雪割り桜』でも。『風とロック』のイベント前後に怒髪天が福島でワンマンをやる時に、俺はチケットもぎりをよくやりに行ってるんですよ。お客さんとしゃべりたいんで(笑)。そうすると、70代ぐらいのジイちゃんがスタンディング会場の最前列で拳を突き上げて“オーッ”てやってるんですよ。もうね、福島県における怒髪天のとけこみ方というか、心の支えられ方ってすごく大きいなぁって思います。子供達も怒髪天が大好きで、普通にみんな歌えるんですよ。“歌詞の意味分かってんのかなぁ?”って思うぐらい(笑)。福島独特の光景じゃないですかね」



――それはすごいですね!


「うん。うれしいんだと思いますね。猪苗代湖ズは福島出身者なので、ふくしま”って歌ってるのは当然なんですけど、福島出身でも何でもない怒髪天がこれだけ福島のことを心配してくれて応援してくれてるってことがうれしいんですよね。復興支援って、もちろん地元の人達が1番中心にならなきゃいけないことなんだけど、そこに出身者達がどう動けるか。でもそれだけじゃ全然足りなくて、出身者でも在住者でもない人達が心配してくれたり励ましてくれることってすごく大きな心強さになるんですよ。でも、中には“自分は福島出身者じゃないから”って遠慮して下さる人もいて。でも“自分が出身者じゃないからって引け目を感じる必要ないよ”っていつも言ってるんですよ。だって、出身者じゃない人が福島を忘れないでくれたり福島のために働いてくれてるってことは、1番の勇気であり心強さになると思うんですよね」



――そうかもしれないですね。


「それと神戸に関しては、阪神淡路大震災の時に“オレ、何をやれてたんだろう?”っていう反省というか、恥ずかしさっていうのがあったんですよね。それもあって今回、神戸で開催することの意味は自分の中でも大きくて、神戸の方が福島をいろんな形で支援して下さったことへの感謝もありますし、こうやって全国を回ってきて沖縄や長崎、広島もそうなんですけど、これまでに(戦争や地震など)痛みを背負ってきている人達の優しさ、大きさを改めて感じますね」



――2年前の震災の時、神戸では“困った時はお互い様”とあちらこちらで言っていたのを思い出します。


「うん。これからは福島がそういうふうに “困った時はお互い様”っていろんなところのために動くリーダーになれたらいいですよね。僕自身も日本中のアーティストに助けられてるんですよ。だって……大変ですよね。自分が日本中から贈り物をもらっちゃった気分というか。そうなると、みんな大事にしたくなる(笑)」



――あはは!


「これがきっかけで“福島県って本当に優しい人ばっかりだね”って県になれたらいいなと思うし、それは“弱さ”という意味の優しさじゃなく、強さのある優しさを持つべきだと思う。もちろん、“今はまだそんな余裕ないよ”って人もたくさんいますけど、これから大人になる子供たちも含めて、これからの日本にとってもすごく必要なやさしさを持てたらいいなと思いますね」



――気が早いですが、この『風とロック LIVE福島 CARAVAN日本』が終わられた後、次の計画はありますか?


「規模はどうなるかわかりませんけど、何らかの形でこのことはずっと続けていかなきゃと思いますし、キャラバンを回る中で新しい宿題をもらうと思うんですよ。実際、沖縄の会場の下見と打ち合わせに行った時に、(沖縄に)自主避難されてる30代のお母さん達に会ったんですけど、“この人たちに聴いてもらう歌がないんだ”ってことに気づいて『こたえよ』っていう詞を僕が書いて、俊美さんが曲をつけてくれたんですね。そうやって歌が生まれました。そうやって、その土地、その土地で見たこと知ったこと出会ったことで、次にやらなきゃいけないことが生まれてくると思ってます。僕は良くも悪くも常に行き当たりばったりで、今回のキャラバンも急に“全国を回るよ”って決めたりしてみんなに迷惑をかけてるんですね(苦笑)。だけど、その時に必要なもの、足りないものを直に感じてから次の行動を決めて、それをすぐ実現するのが性分だと思うので来年、再来年の計画は実はまだ何もないです。でもずっと、“福島を支えなきゃ”っていう思いは一貫していることだと思いますね」



ライター:梶原有紀子

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箭内道彦(やない みちひこ)プロフィール

1964年、福島県郡山市出身。クリエイティブ・ディレクター。広告代理店・博報堂に入社。
その後独立し、「風とロック」を設立。タワーレコード「NO MUSIC,NO LIFE.」、
資生堂「uno」など数々の話題の広告キャンペーンを手掛ける。「月刊 風とロック」発行人。
同じ福島県出身の松田晋二(THE BACK HORN)、山口隆(サンボマスター)、
渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)と組んだバンド「猪苗代湖ズ」として
2011年大晦日の紅白歌合戦にも出場。
また、キヨサク(MONGOL800)、Mummy-D(RHYMESTER)、亀田誠治との
スペシャル・プロジェクト「THE HUMAN BEATS」として楽曲「Two Shot」をリリース。
現在、「風とロック LIVE福島 CARAVAN日本」の実行委員長として全国ツアー中。
http://kazetorockcaravan.jp/