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チケットぴあインタビュー

エディー・ジョーンズ

エディー・ジョーンズ

「NZ戦の成功は勝つことしかありません」

母国・オーストラリア代表(ワラビーズ)を率いて、ニュージーランド代表(オールブラックス)に勝利したことがあるエディー・ジョーンズHC。着実なステップを果たしてきた日本代表に、世界王者を驚かせる秘策はあるのか? 圧倒的な力の差を認めた上で、世界的智将は本気で歴史的大番狂わせを狙っていた。

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――今回、オールブラックスと戦う意義は何だと思いますか。

「日本代表とオールブラックスが戦ってきた過去の歴史を変えることはできません。しかし、未来は変えられます。オールブラックスは、直近の50試合の勝率が90%を越える最強チームです。こんなスポーツチームは他競技でも見当たりません。一方、日本代表は向上している段階のチームです。オールブラックスとの対戦は、日本代表のベンチマーク(評価基準)となるでしょう。我々は今、目標である世界トップ10入りに向け、梯子を上っている途中です。6月には、世界ランキング5位のウェールズに勝ちました。次のステップがオールブラックスです。ここで、自分達が目指す日本らしいプレーをすることが大切です」 

――日本らしいプレーとは。

「世界一パスを多くし、世界一のフィットネスで走り回る。そして、闘志に満ち溢れたプレーです」

――世界トップ10までの梯子が十段あるとしたら、今はどのあたりでしょう。

「4段か5段目でしょうね。梯子というのは、一段一段上る必要がありますが、もしミスをしたら、一番下まで落ちてしまいます。上り続けること、伸び続けることが大事です」

――『オールブラックス』とは、あなたにとって何ですか。

「我々オーストラリア人にとっては、一番嫌いなチームです。ニュージーランドは世界でもっともラグビーが盛んな国です。オーストラリアはそうではありません。他にもたくさんの人気スポーツがあります。両国ラグビーの交流史をひもとけば、大半はニュージーランドが勝っています。しかし、私がオーストラリア代表の監督を務めた時代(2001年から2005年)は、45%くらいの確率で勝利していました。ですから私はオールブラックスに勝てるという感覚を持っています。日本代表としても、そういう感覚を持って臨みたいと思います」

――どうすれば勝てるのですか。

「オールブラックスの選手達は彼ら自身が持つ運動能力の高さ、パワーの優位性を信じています。しかし、彼らを考えさせることができれば、そのパワー、運動能力を半減させることができる。オールブラックスに勝つためには、南アフリカやイングランドのように、運動能力やパワーで同等レベルになるか、彼らを考えさせるラグビーをするか、この二つしかありません。日本は、彼らをいかに心地よくプレーさせないかを突き詰め、不意打ちや予想外のプレーをすることで活路を見出すのです」

――2003年のラグビーワールドカップ準決勝では、あなたがヘッドコーチとして率いたオーストラリア代表が見事にそれをやってのけました。

「オールブラックスは試合開始のキックオフ・ボールを我々の陣地深くに蹴り込みました。彼らは我々がそれをタッチに蹴り出すと思っていました。しかし、我々はそこから90秒間、ボールを保持して攻め続けたのです。ここで彼らに考えさせたことで、勝利への道筋が見えたのです。日本代表も11月の対戦では、いつもと違うことをして彼らを考えさせなくてはいけません。たとえば、スクラムの時、オールブラックスはゆっくり時間をかけようとする。その時、我々は素早くボールを出し、素早く動く。いつもと違うことをするには、勇気が必要です」

――多くのチームはその勇気が持てません。

「ほとんどのチームは、オールブラックスのプレーを見てしまっています。試合前のハカ(ウォークライ)は、彼らのフィジカルの強さを象徴しています。多くのチームはハカを恐れ、前半40分のあいだ傍観者になってしまう。ファンの皆さんにも同じことが言えます。多くのラグビーファンは、オールブラックスが来日した時、彼らにいいプレーをしてほしいと思っている。日本という国は、オールブラックスやハカが好きです。自分が応援するチーム以外のジャージを着るなら、オールブラックスを着る人が多いでしょう? それでは勝てません。
 今回、日本代表選手は、これまでとは、まったく違った気持ちでプレーします。できれば、観る側も気持ちを変え、日本に勝ってもらいたいと思っている人で観客席を埋めてもらいたいのです。チケット購入の際、どちらのチームをサポートするか、チェックする欄も設けたらどうでしょう(笑)」

――ハカに対抗して日本も何かやりますか。

「サムライダンスみたいなものを探したのですけどね(笑)。春シーズン最後(6月23日)のアメリカ戦後、すぐに日本代表選手にハカの映像を見せました。何度も見て慣れることで恐れはなくなります。これから2ヵ月の準備により、日本代表選手がハカを見る時は、キックオフから何をしようかと考えるようになるでしょう」

――日本代表も、試合前、必ず全員で中央からゴールラインまで走りますよね。あの狙いは。

「我々は世界一フィットネスが高いチームであり、すでに走る準備はできているということを見せているのです。オールブラックスが、ハカで自分達のフィジカルの優位性をアピールしているのと同じです」

――今、日本代表がオールブラックスに勝っている部分はありますか。

「今はありません。それが現実です。オールブラックスは、ベストのアタック(攻撃)、ベストの防御、ベストのスクラムを持っている。だからこそ勝ち続けるのです。しかし、日本代表も世界一のアタッキングチームになることができるし、フィットネスも高める可能性を持っています」

――オールブラックスのメンバーで注目している選手を教えてください。

「NO8のキアラン・リードです。104kgでそれほど大きな選手ではありませんが、ラインアウトも彼が中心だし、ボールキャリアとしても素晴らしい。ディフェンス能力も優れています。そして、いつもグラウンド上で熱意を持ってプレーしています」

――若い選手では。

「11番のジュリアン・サヴェアでしょうね。彼はパワー、スピードが卓越し、スキルもある。2年前はハイボールのキャッチが苦手でしたが、今では90%のハイボールをキャッチしています。上手くなりたいというハングリー精神に充ち溢れるプレーヤーです」

――どんなメンバーに出てきてほしいですか。

「ベストの選手達と対戦したいです。たとえば、ダン・カーターと立川理道のSO対決なんて、見てみたいですよね。ただし、彼らの日本戦での目的のひとつは若いリーダーを育成することです。キャプテンのリッチー・マコウをはじめ、多くの中心選手が30歳を超えている。次世代のリーダーを育てなくてはならないのです。日本戦はそのいいチャンスだと考えているでしょう」

――今季から、スクラムは組む前に相手とジャージをつかみ合い、組んだ瞬間の衝撃の少ない方法になりました。このルールは、日本に有利でしょうか。

「アドバンテージはありません。どんなルールであろうが、うまく組む方法を見つけられるかどうかが問われるのです。8月に行われたオールブラックスとオーストラリア代表の試合を見ていると、最初はオーストラリアが有利に見えたのに、後半はオールブラックスが押していた。いいスクラムを組む方法を見つけたということです。日本代表は夏合宿でスクラムを向上させることができました。オールブラックスに勝つためには、スクラムもキーポイントになるでしょう」

――日本には、「心技体」という言葉があります。日本代表選手に求めるもので、プライオリティーをつけるとすると、どんな順番になりますか。

「今のラグビーはフィジカル(体)が最初です。次にメンタル(心)、そしてスキル(技)です。男子のテニスと同じ傾向ですね。テニスの選手も近年どんどん体が大きくなり、小手先では勝てなくなっています。ラグビーもサイズが大きくなり、スピードも早くなっている。日本が勝とうとするなら、まずは、『体』を作らなくてはいけない。『心』とは、他チームと違うプレーをしていることを信じること、その上で、『技』を上げていくことが必要でしょう」

――個人的なオールブラックスとの思い出を聞かせてください。

「私が初めてオールブラックスと対戦したのは、1988年のことです。ランドウィック・クラブの一員として、シドニーのホームスタジアムで迎え撃ちました。その時、オールブラックスのキャプテンは闘将ウェイン・シェルフォードでした。ハカの時、額の血管が浮き出ていた。声を出すたび、パカパカと血管が浮き出るのです。本当に怖かった(笑)。ただ、個人的にはニュージーランドの選手は好きだし、ラグビーを愛する気持ちに彼我の違いはありません」

――いい思い出はありますか。

「勝ったことです。2001年には、ニュージーランド南島のダニーデンで勝ちました。その場所でオーストラリアが勝つのは、1913年以来のことでした。それほどまでに長い間、ダニーデンではオーストラリア代表は勝てなかったのです。雨が降っていて、その日は、キック&チェイス戦法を使いましたが、見事な勝利でした。そして、2003年ラグビーワールドカップ準決勝でも勝つことができた。多くの人々はオーストラリア代表が完敗すると予想していました。しかし、勝つことができた。人々は、『オールブラックスに勝てると言うなんて、クレージーだ』と言います。その通りかもしれない。でも、それができると信じなければ絶対に勝つことはできないのです」

――準備の時間は限られていますね。

「メンバーのセレクションは一貫性が大事です。トップの35名は分かっています。ただ、常にチームを向上させたいと思っているので、新たな選手が入る可能性はあります。今の代表選手も態度が悪くなれば落とします。国内の試合を見て、9月、10月に1回ずつ強化合宿をし、オールブラックス戦、その後に続くヨーロッパ遠征のメンバーを選びます。そして、オールブラックス戦については、ラグビー人生最後の試合だというような意気込みでプレーしてもらいます」

――勝つこととは別に、11月の試合は何ができれば成功ですか。

「成功とは勝つことしかありません。次に、勝つ可能性を感じる時間帯を作ることです。ここが重要なのですが、勝つつもりでプレーし、うまくアタックし、ディフェンスで勇気を見せる。そうすれば必ず勝機が訪れます。日本代表にとってこの試合は、また一段梯子を上る絶好の機会なのです」

Text●村上晃一
Photo●出村謙知

(プロフィール)
エディー・ジョーンズ
1960年1月30日、オーストラリア生まれ。小柄ながら現役時代はHO(フッカー)として活躍。1996年東海大のコーチ、1997年サントリーのコーチ、1999年豪州・バーバリアンズのコーチを経て、2001年には豪州代表ヘッドコーチに就任。その後、GM兼監督として、サントリーをトップリーグ、日本選手権の2冠へ導く。2012年、日本代表ヘッドコーチに就任。

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