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チケットぴあインタビュー

三崎和雄

三崎和雄

勝っても負けても病院送り……。一切の妥協を知らない三崎和雄は、リング上でひと際異彩を放ち続けた。秋山成勲やダン・ヘンダーソン、ジョルジ・サンチアゴなど国内外の強豪との死闘など、格闘技の歴史に数々の名勝負を刻んできた。そんな正真正銘の日本男児が、米国格闘技界の挑戦の道半ばで、引退発表を行った。三崎はなぜ引退を決め、これからどこへ向かうのか。12月22日(土)・後楽園ホール『DEEP HALEO IMPACT~三崎和雄引退セレモニー~』に臨む"男の中の男"を直撃した。
――三崎選手の引退興行の内容が明らかになりましたが、今の率直な感想を教えてください。

「今まで一緒に汗を流してきた選手、自分が尊敬している選手と同じリングに立ち、最後を迎えられたら、『幸せだな』という思いで、いろんな選手に声をかけさせてもらいました。年末は格闘技の大会が多い中、もっと大きな舞台を用意されている選手もいる中で、このリングを選んでくれたというのは、言葉ではお礼が言えないくらい感謝しています」

――どのような大会にしたいですか。

「試合数は7・8試合で多くはならないですが、1試合1試合に価値がある、それぞれがメインになるような試合をマッチメイクしています。セレモニーも、みなさんに満足してもらえる内容になる。『観に行けばよかった』と思う内容になるので、早めにチケットを買っていただきたい。今まで、自分に携わってくれた方や応援してくれた方にもう一度自分の姿を見ていただきたいので、少しでも興味がある人は迷わずチケットを買ってほしい。僕もその時間を共有したい。今回、リングに上がってくれる選手たちも同じゴールを目指す仲間だし、会場で応援してくれたファンとも支えてくれた関係者とも同じ時間を共有したいので、ぜひ会場までいらしてください」

――三崎選手自身のエキシビションマッチは予定していますか。

「(米国格闘技団体の)ストライクフォース(SF)との契約上、どういう表現をしていいのか難しいので……。複数試合契約が残っているため、公式戦はできないのですが、表現としてはセレモニーとしか言えないです。みなさんに納得してもらえる形で、パフォーマンスをしたいなと思っているので、当日お楽しみにしていただきたい」

――引退を発表してからの周りの反響はいかがですか。

「やっぱり、『本当にやめるのか、やめないでくれ』という声が一番多いですね。金原(弘光)さんにも記者会見で、『本当にやめちゃうの、まだできるだろ』と言われました。僕自身も、みなさんに僕の体を通じて、メッセージのある闘いを見せていきたいなという気持ちはあるんですが、ここでひとつの節目を迎え、違った形でみなさんに貢献できるようにがんばっていきたい」

――引退後の具体的なビジョンは。

「現役中サポートしていただいた(サプリメント会社の)HALEOさんと何か一緒にいいものを作りたいということは話しています。具体的にはジムを作って、そこで選手を育てたいなと思いますね」

――引退の決め手になったのはケガなのか、次の仕事なのか、どちらですか。

「正直、ケガが一番大きな理由ですね。僕自身、強さに憧れ、チャンピオンになるためにこの世界に来ました。そして、闘っているうちにチャンピオンになることよりもメッセージを伝えるという意味のあることを知りました。闘いは肉体的な表現なのですが、どんどん精神性を突き詰めていった。ただ今度は『自分をどう表現していけばいいだろう』と悩んでいた時期がある。そんな時、長渕(剛)さんに『お前悩んでいるんじゃないよ、もう(現役は)いいんじゃねえか』と声をかけていただき、何か自分の中で心が晴れた部分があった。でも、現実問題として、すぐに現役引退できない。そんな中、次はケガに直面した。ケガをして、ドクターストップがかかっている状態でも迷っている自分がいるわけですよ。『俺は選手をやめても、みんなにメッセージを伝えられるのか。ケガをしていても現役を続けたい』という葛藤もありました。だけど、やっぱり、伝えていかなければならないことがある。現実的にはケガでストップして、最終的には神様が自分にケガという形で引退という選択を置いていったのかなと思います。このタイミングのケガは必然だったんだなと思います」

――ケガがありながら強行出場した3月・SFのポール・デイリー戦はご自身の中で引退試合として臨んだのでしょうか。

「試合前にケガがあり、本来であればデイリー戦はするべきではなかったのかもしれない。まさに『これで終わっていいのか、これで終わりにしなければいけない』と迷っていた時だった。でも、自分はすべての試合が最後だと思って臨んできた。剛さんのステージと同様に、僕も1試合1試合に命を懸けてリングに上がっているわけですから、生きてリングを降りることができるとは思っていない。ひとり暮らしの時は試合前に家を整理して、保険の証書を机の上に並べて、母の日の花のカーネーションを並べました。もしものことが起こった場合、家に最初に入るのが親だろうと思いますから。いつも『この試合が最後』という気持ちでリングに上がっていますから、デイリー戦も同じような気持ちでリングに上がっていましたね」

――デイリー戦では、花道を歩く時に三崎選手の笑顔を初めて見ました。気持ちの変化があったのでしょうか。

「そうですね。自分の体を酷使し、精神を追い込んで、最後は敵地で突っ込んでいくぞという気持ちでリングに向かったんですが、笑顔が出ましたね。リングに上がる前、みんなとひとりずつ、『ありがとう、みんなとこの場所に今立てて幸せだよ』と話し、ハグをした。アメリカでの試合に僕の仲間が20・30人駆けつけてくれたし、この試合を迎えるために、剛さんや(新極真会師範の)新保(智)さんが僕のために時間を割いていただき、朝から晩まで付きっ切りでトレーニングを一緒にしてくれた。『俺はこんなに幸せでバチが当たるな、俺は世界一幸せな男だな』という思いから、花道での笑顔が出てしまったんですね。『ここで死んでも、悔いはない』と思ったんでしょうね」

――長渕さんと新保さんによる、大の男が泣くほどの練習を積んで幸せと思えるのはすごい世界ですよね。

「何なのでしょうね。これは体を動かした人間でないと、わからない感覚なんですかね。剛さんに『試合を特別なものだと思ってはいけない。試合と同じ状況を日々の稽古で作らなければいけない』と言われた。それで剛さんが鹿児島合宿を組んでくれました。朝から夜まで、剛さんと新保さんがマンツーマンで付きっ切りで、食事の管理までしてくれた。1日何回稽古したか覚えていないほどキツかった。自分はもう3日目でぶっ倒れました。この年になって泣きながら練習したのも久しぶりでした。精神と体は表裏一体で、どちらが欠けてもだめなんですね。体と精神が悲鳴を上げ、涙を流し、その先にあるのは幸せ、苦しみではない」

――そのデイリー戦で勝利し、ベルトも視野に入った中での引退の決断は葛藤も大きかったでしょう。

「本当はSFでベルトを巻いて、最後は(世界最大の格闘技団体の)UFCに挑戦したいなという気持ちはありました。引退って何なんですかね。完全燃焼して終わる選手は少ない。引退しても引退し切れないし、実感も湧かない。でも、現役に対する悔しさを残して、次のステージを迎えるのは起爆剤になるはず。選手たちと一緒に汗と涙を流して、『リングに向かっていこう、世界のベルトに向かっていこう』と切り替えているので、モチベーションは落ちていない」

――悔しさが次の原動力になるのは、三崎選手らしいですね。

「日々悔しい思いをしています。満足した瞬間なんて生まれてこの方一度もない。『もうやりきった、もう完璧だ』と思ったことは、今まで生きてきてない。そこで完璧だと思ってしまうと、次がないと思う。常に悔しさと孤独の闘いです」

――引退発表から心の変化はありますか。

「人間として、ファイターとして、剛さんとの出会いは僕の中で非常に大きな影響を与えてもらいました。格闘技とは別世界のミュージシャンですが、目には見えないハートの部分、精神性は共通でした。自分は殴り合って闘いを見せているのではなく、精神の成長を遂げるために闘っているんだと思うようになった。長渕さんを見ても、ただ歌っているわけではなく、言葉と曲に非常にメッセージが詰まっていて、精神的なことを突き詰めている。剛さんとの出会いで、自分自身成長した、変化したというのはありますね」

――昔「世界最強になる」「闘いは殺し合い」「リングで死ねたら本望」と言っていた人間と同一人物とは思えません(笑)。

「はい、おっしゃる通りです(笑)。田舎のやんちゃしていた兄ちゃんが闘いの場をリングに移して、リングでひたすら強さを追い求めてきた。単純に世界一強い男になりたいというのが自分の目標だった。だんだん闘いを通じて、闘いというのはもしかするとメッセージ性の強いものだと感じるようになった。見ている人たちが、来た時と帰る時の表情が違うわけです。エネルギーがみなぎって、『こんなに小さい日本人がでかい外国人に向かっていって、日本人すげえな』とか、『小さな日本人でも勝てるんだ』とか、感じてもらうだけで僕としては満足です。闘うことによって、ひとりの人間の気持ちを動かす、前へ進めるというのは、すごいことだと思う。でも、途中で『俺は神様でもないのに、人間を変えるなんて、何勘違いしているんだ』と気付くわけです。100人いたら100人、1000人いたら1000人、1万人いたら1万人の感じ方がある。自分の闘いで全員を変えることは不可能なんです。そこで、自分のこの体をこの魂で普段の生活から見直して、100%納得いく生活を送り、修行のような生活を、15分間の試合のための準備と捉えました。自分の生き方を15分で見せるために、まずは自分がどこまで極限、究極、限界まで全うできるかという考え方に変わった。自分を前に突き進めるものは精神しかない。体を鍛え、心を鍛える、それが自分の格闘技で出会って学んだことなんです。12年間の格闘技人生で学んだことを、今後は下の世代に伝えていかないといけないと思いました」

――三崎選手と言えばダウンを喫したからの逆襲。第2エンジン、第3エンジンは格闘技の常識を覆しているという自覚はありますか。

「ダウンを喫しても、体は生きている、心臓は鼓動している、魂は元気なんです。科学的にも医学的にも証明できないでしょうけど、生きているんです。試合の記憶がないのはよくありますから、僕は生命力だと思っている。生きることへの執着ですよね。僕は人一倍生命力は強いと思う。それは人一倍怖がりだったり、寂しがり屋だったりするからです。その弱さがあるからこそ生きなければいけないという思いが強くなる」

――12年間の現役生活で印象に残っている試合は何ですか。

「みなさんが一番印象に残っているのは秋山(成勲)戦だと思うんですよ。僕にとっても、秋山戦は成長を遂げるために必要だったんだなと思う。PRIDEというライオンの群れのボスとHERO'Sというライオンの群れのボスが草原でばったり会ってしまった。それは闘わざるを得ない。お互いにリスクが大きい。精神的に勉強させてもらったし、試合が終わっても勉強させてもらったから、いろんな意味で秋山さんに感謝しています。この業界は狭いですから、またどこかで交わることはあるは思う。その時はお互いに格闘技を盛り上げるようなことができればと思いますね」

――どれだけ遺恨があっても、闘いを通じて理解する部分はあるんですね。

「リング上で殴り合って、試合が終わったら何で握手して健闘を称え合うことができるか、観ている人にびっくりされるんですけど、闘いってそういうものなんです。それは闘った者しかわからない。大観衆の前でお互いに殴り合って、すべてをさらけ出しているわけです。そこで勝った負けたは、結果としては残りますが、たいした問題ではない。人間対人間で、隠しようのない場所で闘っているわけですから、その当事者のふたりにしかわからない感情がある」

――2度にわたるジョルジ・サンチアゴ戦は勝敗を超えた、とんでもない闘いでした。

「そう言っていただけるのが一番うれしい。その言葉を聞くために僕の人生はあるわけです。サンチアゴ戦も秋山戦もダン・ヘン(ダーソン)戦も何年も前の試合ですが、いまだにみなさんに街で声を掛けてもらってます」

――三崎さんの引退は他の選手とは異なるイメージがあります。試合はしなくなっても、強さの探求は終わらないんじゃないですか。

「現役選手を引退するだけです。精神の修行というのは生まれた時から死ぬまで、もっと言えば死んでからも続くわけです。魂の成長あっての自分ですから、毎日が精神の修行ですよね。現役を引退しても次のステージでの魂の成長のために、肉体や精神を酷使し、魂の成長を続けなければいけない。今度肉体が動かなくなったらまた別の手段を考えて、自分の命がなくなった時は次、別の生命を神様にいただいて同じことが続く。そこで止まることはありません」

取材・構成:碧山緒里摩(ぴあ)

<プロフィール>
三崎和雄●みさきかずお
1976年、千葉県生まれ。中学から柔道を始め、高校卒業後に香取道場でキックボクシングを学ぶ。その後、菊田早苗率いるグラバカに入団。2001年、パンクラスにてプロデビューし、同年パンクラスネオブラッドトーナメント優勝を勝ち取る。2004年にPRIDE武士道に参戦し、2006年PRIDEウェルター級GP優勝を果たす。2007年大晦日、秋山成勲をKOするも、その後無効試合となる。2008年より戦極に主戦場を移す。2012年、米国ストライクフォース進出で白星で飾るも、10月に引退を発表。戦績は25勝11敗2分1無効試合。


『DEEP HALEO IMPACT~三崎和雄引退セレモニー~』
□12月22日(土)18:30 ※18:00からオープニングファイト
<桜井隆多vs金原弘光>
<桜木裕司vs高瀬大樹>
出場選手:宮田和幸/金原正徳/山内佑太郎
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