@ぴあインタビュー

ロック・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」 山本耕史インタビュー

今度のヘドウィグは“お祭り騒ぎ”! とにかく楽しんで欲しい──

股間に残ってしまった“怒りの1インチ”を抱え、愛を求め歌い続ける… 初演、再演と大きな反響を呼んだ山本耕史主演『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』が、待望の再々演決定! 映像、舞台と数々のキャリアを積む彼だが、この作品だけはまた特別な意味を持つようだ。彼、山本耕史の“ヘドウィグ”にかける想いとは?

 

──2007年の初演、昨年の再演に引き続き、早くも3度目の再々演となりますね。

山本「定期的にやりたい作品だと思ってたので、単純に再演は嬉しいです。日本って、ごく一部のものを除いてずっと続いていく舞台作品が少ないですよね? やっぱり、お客さんが『観に行きたいな』と思えるときに観に行けるものがいいなと思うんですよ。もちろん上演権とかいろんな問題はあるでしょうけど、“いい作品”っていうのは何回も上演したいと思うんです。日本では僕は今回3回目になりますけど、それだってニューヨークとかに比べれば10年くらい遅れているわけで。こういう作品がある、こういうロックミュージカルというか、ロックパフォーマンスがあるよ、ということをもっとたくさんの方にお伝えできる、その1歩になればいいな、と」

──初演、再演と拝見すると、人によっては普通の演劇のように楽しんだり、ライブのように楽しんだりと、客席の楽しみ方も多様化した感じがありました。

「お客さんも楽しみ方をどんどん知っていったところがありますよね。ルールを守って楽しむ分にはどんどん楽しんで貰っていいし。そういう意味ではちょっと特殊な作品ですよね。これまでの上演では若い人はもちろん、お年を召した方も“楽しかった”と言ってくださって。本当に年齢や性別を問わず、幅広い人に訴える作品なんだなと思いました」

──初演時から台詞は日本語で、楽曲は英語で歌われていますが、これはどういった経緯だったんでしょうか?

「これは演出のスズカツさん(鈴木勝秀)と僕の一致した所だったんですけど、英語の作品を日本語にしたときって、どうしても歌詞に“あれ?”って思うことが多いですよね。英語でのグルーヴ感が失われてしまったり、意味が変わってしまったり。でも、英語の歌をその意味はよくわからないけど好き、っていう人も多いですよね。それはその曲の英語の持つ語感だったり、グルーヴ感が好きなんだと思うんです。で、やっぱりその曲の持つ意味というのは、どこか伝わると思うんですよ。だったら日本語にして元の曲の持つグルーヴ感とかを損なうよりは、この作品の楽曲の良さを伝えるために、忠実に英語のままがいいんじゃないかと。最初は賛否両論でしたけど、再演の時は“再演でも英語のままでよかった”っていうアンケートがあったり(笑)、面白いですね」

──昨年のツアーのラストでは、作者でもあるジョン・キャメロン・ミッチェルを迎えた大打ち上げも開催されましたね。

「貴重な体験でしたね。作ったのはジョンなわけだし、僕はそのフィーリングを日本で伝えただけであって。作った本人と同じ舞台に立てたのは嬉しかったですね。ジョンはすごくクリエイティブで繊細な人、という印象。僕はおおざっぱなタイプなんですけど(笑)。一つ一つのことに意味を持って創り上げている方なんだろうな、と思いました」

──初演からのこの2年間を振り返られて、一番印象に残ったことは?

「最初は本当に大変でしたよ。台詞量も膨大ですから。でも、ある時に台詞が“自分の言葉”として出る瞬間があって、それは役者として貴重な体験をさせてもらえました。だから再演の時の方が特に、台詞が自分の言葉になった分いろんなものを追及できたかな、と思います。こんなに違うもんなんだな、と思いましたね」

──演じ手としては、かなりハードな作品なのでは? と思うんですが……

「この作品は結構精神的に削られますね。意外と体力はあるんですけど、やっぱり初演の時はマチソワ(※)とかきつかったです(笑)。今まで、役柄が日常に食い込んでくる作品ってほとんど無かったんですよ。俳優で自ら役柄に日常も合わせていくタイプの人もいますけど、でもそれまでの僕はまったくなくて。でもこの作品に関しては違った。役者としてのエネルギーだけじゃ駄目で、プライベートのエネルギーまで注がないとできないんですよね。その時の“生きているエネルギー”を全部注がないと。“こなす”だけでは駄目で、魂の底から絞り出すというか……“芝居”という感じだと駄目なんです。舞台上で“生きて”ないと」

──これまでの東京公演は新宿FACEでしたが、今回は広い空間になりますね。

「空間は大きめですけど、もう“お祭り騒ぎ”っていう感じでいいんじゃないかな、と思うんですよね。これまで観たことあるお客さんも、初めて観に来るお客さんも、とにかく楽しんでいただければ、と思います」


※マチソワ=マチネ・ソワレ 1日に昼公演、夜公演と2回公演を行うこと。


取材・文:川口有紀  撮影:源 賀津己


▼ロック・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」
【大阪公演】11月27日(金) 大阪厚生年金会館 ウェルシティ大阪 芸術ホール
【東京公演】12月2日(水) ~ 6日(日) Zepp Tokyo

[劇作・脚本]ジョン・キャメロン・ミッチェル [作詞・作曲]スティーヴン・トラスク
[上演台本・演出]鈴木勝秀 [翻訳]北丸雄二
[出演]山本耕史/ソムン・タク


━「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」とは━
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチとは1960年代、まだ世界が東と西に分かれていた頃。
愛と自由を手に入れるため性転換手術を受けたものの、手術の失敗によって股間に「アングリーインチ(怒りの1インチ)」が残ってしまった、男でもあり女でもあると同時にそのどちらでもないロックシンガー、ヘドウィグ。
幾多の出会いと別れを経験し、傷つき倒れそうになりながらも己の存在理由を問い続け、「愛」を叫び求める彼女(彼)の姿を描いた本作は、ブロードウェイをはじめ世界各国で公演され、熱狂的な支持を受けた。

<日本版上演記録>
2004年・・・三上博史主演で日本版舞台が公演される。(東京を含む6都市7会場)
2005年・・・三上博史主演で再演。(東京を含む3都市4会場)
2007年・・・山本耕史主演で日本版舞台を上演。イツァーク役は中村中。(東京を含む5都市6会場)
2008年・・・山本耕史主演、イツァーク役にソムン・タクを迎え、上演。
2009年・・・山本耕史主演で再々演。


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