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チケットぴあインタビュー

ブロードウェイミュージカル american IDIOT「アメリカン・イディオット」マイケル・メイヤー

ブロードウェイミュージカル american IDIOT「アメリカン・イディオット」マイケル・メイヤー
これまでのブロードウェイの常識を覆す演出でアメリカのショービズ界の住人たちを驚かせた、『春のめざめ』、『アメリカン・イディオット』。2013年にはメトロポリタンオペラの演出でオペラ演出に初挑戦。『リゴレット』の舞台を16世紀のイタリアから1960年代初頭のラスベガスに移し、度肝を抜いた。マイケル・メイヤー──、彼は間違いなく、今もっとも注目すべき演出家の一人だ。『アメリカン・イディオット』ツアーカンパニーと共に、灼熱の東京に来日した彼に、本作製作の経緯、そして、作品に込められた思いを聞いた。

──演劇のアカデミー賞ともいわれるトニー賞で、最優秀演出賞を受賞したマイヤーさんですが、やはり子どもの頃からミュージカルがお好きだったんですか。


「3歳のときに『オズの魔法使』(1939年/アメリカ)を見て、それこそ魔法がかかったかのように魅了されたんだ。その後、ジュディー・ガーランドが出演している映画を片っ端から観たんだけど、ブロードウェイミュージカルを映画化した『青春一座』(1948年/アメリカ)はとりわけ印象的だった。ミッキー・ルーニーとジュディー・ガーランドが“ショーをやりましょう”と言って、路上でショーを始めるんだけど、それがだんだんと大きなミュージカルになっていく──。それを見て、なんて素敵なんだろう、僕もミュージカルを作りたいと思ったんだ。7歳くらいのときだったと思う。当時はまだ自分も舞台に立ちたいと考えていて、家族に向けて、自宅の庭で自作の小さな芝居を上演していたよ。つまり7歳くらいのときから、今と同じようなことをやっていたんだ。成長していない、とも言えるかな(笑)」



──トニー賞を受賞した『春のめざめ』も、現在、世界ツアー中の『アメリカン・イディオット』もロックミュージカルにカテゴライズされる作品ですが、メイヤーさんとロック音楽との関係を教えてください。



「母がフォーク・ロックミュージックを好んで聞いていた影響で、サイモン&ガーファンクルやキャロル・キング、カーリー・サイモン、ジェイムス・テイラーの楽曲は、子どもの頃からよく耳にしていたよ。だからかな、ジョニ・ミッチェルとか、バーブラ・ストライサンドとかを聞くようになったのは自然の成り行きだった。15歳のとき、初めてライブでエルトン・ジョンの歌を聞いたときは衝撃が走ったよ。その瞬間から、僕はポップミュージックの大ファンになったんだ。ビリー・ジョエル、イーグルス、そして、バンド系も、とにかくいろいろなジャンルのポップミュージックを聞きまくった。自分の青春時代と、ポップミュージックの最盛期ともいえる時代が重なっていたのはすごくラッキーだったと思う。80年代に入ってからはそうした音楽からは少し遠ざかっていたんだけど、90年代に入り、あるとき、ラジオからグリーン・デイのアルバム『ドゥーキー』(1994年)の楽曲が流れてきたんだ。なんていい曲なんだろうと、一瞬でグリーン・デイの虜になった(笑)。ラジオで彼らの曲がかかるたびに、気分が高揚したよ!」



──マイヤーさんがグリーン・デイのアルバム『アメリカン・イディオット』(2004年)を初めて聞いたのは、映画『マイ・フレンド・フリッカ』(2006年/アメリカ)の製作中だったと聞いています。



「そうなんだ。当時、撮影のためにカリフォルニアに滞在していて、滞在先から現場まで、毎日、片道45分の道のりを車で通勤していたんだ。その車に積んでいた唯一のCDが、グリーン・デイの『アメリカン・イディオット』だった。パシフィック・コースト・ハイウェイを走りながら、このスリルあふれるCDをひたすら聞きまくっていたよ。
 このアルバムは、僕らの、そして、アメリカのもっと若い世代の心の叫びそのものだったんだ。当時、アメリカは最悪な時代を迎えていた。2001年の世界同時多発テロのあと、ブッシュは、明確な理由もなく、アフガニスタンに侵攻し、我々は自分の無力さを実感した。選挙権を持たない若い人たちはなおさらだったと思う。街はこの世界に存在してはいるのだけど、どこに進んでいったらいいのかわからない、そんな“迷子”の若者たちであふれていた。そんな行き場のない時代に、(グリーン・デイのフロントマンである)ビリー・ジョー・アームストロングは、『アメリカン・イディオット』を通して、若い人たちの心を代弁してくれたんだ。根性、怒り、そして、明確なビジョンを持った彼の声は、若者の心にビビットに響いた。ビリーは、女の子のこととか、マスターベーションとか、マリファナとか、そんなことだけではなく、もっとずっと大きなことを歌っていたんだ。一個人ではない、その他、大勢のことをね。
 このアルバムにはたくさんの物語が詰まっている。何度も何度も聞いているうちに、僕のなかでアルバムのなかで綴られている物語が見え始めてきたんだ。
 時代は、9.11が起こったブッシュ政権下、『ジーザス・オブ・サバービア』の歌の主人公には、2人の親友がいて、田舍での暮らしに退屈していた彼らは自分探しの旅に出ようとする。やがて3人は別の道を歩きはじめる。主人公のジョニーは、街に出て、自分の分身ともいえるセント・ジミー、そして、女の子に出会う。やがて、戦争が起こり、彼は“生きる”という勇気ある選択をする。怒り、痛み、愛、セックス、ドラッグなど、さまざまな感情や出来事を経験を通じて、彼は“受け入れる”ということを学ぶんだ。
 そんなことを考えていたせいか、『春のめざめ』に関するインタビューでロック音楽の話になったとき、『アメリカン・イディオット』には物語がある、絶対にミュージカル化すべきだ、なんて話をしたんだ。すると、その記事を読んだ『春のめざめ』のプロデューサーがすぐに電話をかけてきて、数週間後、グリーン・デイのエージェントと彼らのマネージャーと打ち合わせをすることになったんだよ。自分でも驚くべき展開だったよ(笑)」



──ミュージカル『アメリカン・イディオット』には、個性的なキャラクターがたくさん登場します。彼らはどのように、生み出されたのでしょうか。



「主人公のジョニーと、彼の親友のタニーとウィル。田舍に住んでいる人、街に住んでいる人、タニーと一緒に中近東で戦っている人。そして、セント・ジミー──。いろいろな要素を持つ人たちをひとつのキャンバスに描きたかった。そういうとなんだか複雑そうだけど、ストーリーそのものはシンプルなものにしたかったんだ。
 たとえば、夜、ひとりで新宿の街を歩いていたとする。明確な行き先があって、そこに向かっているんだけど、その途中でいろいろなものが目に入って、それが気になり始める。そんな感情を、音響や、感情があふれ出たようなバイオレンスな振りも使って、ステージ上で表現したいと思ったんだ」



──ジョニーの分身ともいえるセント・ジミーはとりわけ不思議な存在です。彼はいったい何者なんでしょう(笑)?



「映画『ファイト・クラブ』(1999年)の映画の主人公は、彼の頭の中で自分とは異なるキャラクターを生みだす。自分が無力なぶん、力のあるキャラクターを想像するんだよね。でも生みだされた人物はまぎれもなく、彼の一部分なんだ。セント・ジミーもそんな存在かもしれないし、もしかしたら、単なるドラッグリーダーかもしれない(笑)」



──ロックコンサートさながらのテンションで100分間をノンストップで駆け抜ける、ミュージカル『アメリカン・イディオット』は、ほかのブロードウェイミュージカルとはかなり毛色が異なる作品です。ブロードウェイ公演を拝見しましたが、客層もほかのブロードウェイの劇場よりも若い人たちが多かった印象を受けました。



「ブロードウェイの主な客層はやや年配の白人で、お金に余裕がある人たちで、彼らはエンタテインメントを求めて、『マンマ・ミーア!』『ジャージー・ボーイズ』『ウィキッド』など、何度も同じショーに足を運ぶ。いつ、どこに行っても、同じ種類の“楽しみ”が約束されているから、安心できるんだろうね。良くも悪くも、劇場に足を踏み入れる前から、これから見ようとする作品が何を与えてくれるかわかっているんだ。
 でも『アメリカン・イディオット』の客席には、それまで劇場に来たことがなかったような、たくさんのグリーン・デイのファンたちの若者たちがいた。体中にピアスを付けて、緑に染めた髪の毛を立てた若い人たちが、アッパーイーストのお金持ちの隣に使って、お互いに、「なんでこの人たちがここにいるんだろう」と不思議そうに目を合わせていたんだ(笑)。そのどちらもが喜んでくれている姿を目の当たりにできたのは、何よりハッピーな瞬間だったよ。それまで絶対に交わることがなかった異なる世界が出会い、新たな関係が築けたことは、とてもエキサイティングだった。そしてそれは、『ウィキッド』を求めて(『アメリカン・イディオット』を上演している)劇場に足を運んだ、なかにはグリーン・デイがパンクロックバンドだと知らなかったような従来のブロードウェイのお客さんにとって、初めて期待していたものと違う作品に出会った瞬間だったと思う」



──その作品を日本で見ることができるのはとてもうれしいことです!



「今回のツアーの何よりの強みは、キャストが若いということ。今、実際に、自分が演じるキャラクターの年代を生きているんだ。“私が22歳のときって、どんなだったっけ?”と過去を振り返り、その感情を思い出さなくてもただそのまま演じればいい。そして、彼らは、自分たちのすべてをかけて、『アメリカン・イディオット』という作品に挑んでくれている。すばらしいことだと思う。
 客席で見ていただくみなさんにも、この作品を通してこれから人生を生き抜いていくためのインスピレーションを得てもらえるんじゃないかな。シンプルなストーリーだけど、いろいろな要素を持っている作品なんだ。曲はもちろんすばらしいし、視覚的にも楽しめる、エンタテインメント性あふれる旅を満喫して欲しい。きっと、みんなが今まで観たことのないショーになっているはずだよ」



──最後に、『アメリカン・イディオット』以外の、メイヤーさんの最近の活動について教えてください。メイヤーさんが監督を務めたドラマ『SMASH』は、昨年、日本で放送されました。スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮を手がけ、ブロードウェイを舞台に、ミュージカル製作の舞台裏と人間模様を描いた、ミュージカルファンにはこたえられないドラマですが、ブロードウェイの舞台裏って、ほんとうにあんな感じだったりするんですか(笑)。



「そんなわけないよ(笑)。ほんの少しは反映させているけれど、あれはテレビのショーだから、かなり大げさになっている。でも僕自身、この仕事はとても楽しんだし、日本のみなさんも楽しんでくれたと聞いてとてもうれしいな」



──2014年春はブロードウェイで、ニール・パトリック・ハリス主演の『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の演出をすることが決まっています。



「実は、ジョン・キャメロン・ミッチェルが『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を書き始めた当初、僕は演出家としてこの作品に関わっていたんだ。でも、同時に手がけていた『トライアンフ・オブ・ラヴ』(1997年)がブロードウェイに進出したのをきっかけに、現場を離れざるをえなくなってしまった。『トライアンフ・オブ・ラヴ』は自分で企画した作品でもあったからね。大好きな作品だし、また関われることは本当にうれしいよ。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』はすでに完成されている作品で、何も足す必要はないし、足すつもりもない。ヘドウィグはヘドウィグだからね。ただ、ニール・パトリック・ハリスにとっては、ものすごく大きな挑戦だと思う。今までこういう作品に出演したことがないからね。高いヒールを履いて、ヴィッグを付けて、演じ、歌うことに、まずは慣れなくちゃいけない(笑)。この秋から動き出すわけだけど、全力でサポートするつもりだし、僕自身、とても楽しみにしているよ」



取材・文:長谷川あや


▼ブロードウェイミュージカル american IDIOT「アメリカン・イディオット」
8月7日(水) ~ 18(日) 東京国際フォーラム ホールC(東京都)

[出演]アメリカ招聘カンパニー [音楽]グリーン・デイ
[作詞]ビリー・ジョー・アームストロング(共同脚本)
[演出]マイケル・メイヤー(共同脚本) [振付]スティーヴン・ホゲット