──再演となる『ムサシ』に、小次郎役での出演が決まった時の気持ちは?
「率直に言うと、複雑でしょうがなかったですね。再演の舞台に出演するのは初めてですし、初演は1年前という近い時期でしたから。それに、初演で小次郎役を演じた小栗旬くんとは昔からの友達。彼が演じた役を今度は自分がやると、比べられるんじゃないかとか、ネガティブな気持ちにもなりました。もちろん、楽しみにしている部分もあるんですけどね」
──今回の再演について、小栗さんとはお話されましたか?
「小次郎役をやると決まった時点で、一番最初に話しました。僕が「悩んだんだけど、やるから!」って言ったら、「小次郎役は俺の方がすごいだろうって思いがあるけど、勝地がやるって聞いて楽しみになった」って言ってくれたんです」
──演出の蜷川幸雄さんも背中を押してくれたのでは?
「僕がまだ出演を悩んでいる状態の時に、蜷川さんが「『ムサシ』の再演、聞いてるよな!? お前、やるよな!?」って、すごくワクワクしている姿を見まして(笑)」
──宮本武蔵役の藤原竜也さんとは初共演ですね。
「僕が人生で初めて観た舞台が、竜也くんの『身毒丸』でした。震えるほど感動して、いつか僕も舞台に立ちたいと思ったことを覚えています。お互いの稽古場を訪ねるようなことはあっても、なかなか同じ舞台に立てなかったので、やっと夢が叶います。ロンドン公演を行うバービカンシアターは、竜也くんが初舞台を踏んだ劇場。「勝地もその舞台に立てるのは、いい経験になると思う」というメッセージをいただきました。やっと共演できるね、と言ってくださったのも嬉しかったですね」
──新バージョンの台本にはもう目を通しましたか?
「はい。読んでみると、初演よりスピーディでテンポもよくなりそうで、楽しみが湧きました。蜷川さんからは、初演とは異なった武蔵と小次郎の関係性を描きたいと思っているという話を聞きました。武蔵だけじゃなく、小次郎だって多くの人を斬ってきたんだという、血の匂いがするような動物的な部分を出したいと。そういうところを取り入れて演じられたらなと思います」
──まずロンドンで開幕、日本凱旋公演の後は、ニューヨーク公演と続きますね。
「海外公演の経験がないぶん、逆にぶつかっていけるんじゃないかと信じて、そのくらいの勢いでやれたらなと。でも、まだこうやって取材を受けているだけなのに、めちゃくちゃ恐いんですけどね! これだけプレッシャーかかるのも当然ですが、後悔だけはしたくない。初演をなぞるんじゃなく、自分らしさを出せたらいいなと考えています。『ムサシ』は再演で違うものになったね、小次郎役が勝地になったことで、また変わったねって、思われるようにしたいです。物怖じせず、やっていけたらいいですね」
取材・文:笠原桐子 撮影:星野洋介
▼『ムサシ』ロンドン・NYバージョン
5月15日(土) ~ 6月10日(木) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉)
[作]井上ひさし [演出]蜷川幸雄 [音楽]宮川彬良
[出演]藤原竜也/勝地涼/鈴木杏/六平直政/吉田鋼太郎/白石加代子/他