前作『SENTIMENTALovers』以来、約3年半ぶりとなる7枚目のオリジナル・アルバム『FAKIN' POP』を、3月にリリースした平井堅の全国ツアー。新作がパブリック・イメージと自分の感覚とのバランスに苦しんだ経験も糧にして獲得した境地がうかがえる痛快な内容となっただけに、ある種突き抜けた勢いのあるステージを見せてくれそうだ。
平井堅は2000年にリリースした『THE CHANGING SAME』以降、連続して100万枚以上のセールスを達成している。これは現在の日本の男性ソロ・アーティストの中では圧倒的にトップに位置する。しかしセールスが大きければ大きいほど、パブリック・イメージも肥大化し、アーティスト本人にとってはプレッシャーとなることも少なくない。平井堅もそうしたプレッシャーと巧みに戦ってきた者の一人といっていいだろう。
1995年にCDデビューした彼の名前が一般的に知られるようになったのは、2000年にリリースした8枚目のシングル『楽園』。それまでの曲調とは異なるR&Bテイスト濃厚な楽曲だったが、これが広く知られる彼の第一印象となった。しかし彼はそうしたイメージを裏切るような楽曲も発表し続け、2002年にはアメリカ歌曲『大きな古時計』をカバーしたシングルも大ヒットとなる。傍目には極めて順調に見える流れだが、本人にとってはこうした現象が起きるたびに、世の中が自分に何を求めているのか考え込むことも少なくなかったようだ。
2005年のシングル『POP STAR』、そして昨年のシングル『fake star』は、そうした葛藤を糧にしたと思われる楽曲である。今年3月にリリースされた最新アルバム『FAKIN' POP』は、その両方を収め、さらに目映いほど多彩な曲調で、ボーカリストとしてのアイデンティティを謳歌した作品だ。自分自身を突き放した目線を獲得したことによる清々しさは、2005年のベスト・アルバムに『歌バカ』と名付けるような振る舞いにも現れている。こうして現在の彼は、音楽に取り組むしなやかなスタンスを身に付けた。5月から始まる今回の全国ツアーでは、歌に対して迷いの無い覚悟を固めた“歌バカ”ならではの純粋なエネルギーで、突き抜けた勢いのあるステージを見せてくれるだろう。(2008/3/28)