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@ぴあコラム

シェリル・クロウ

 1993年のデビュー以来、グラミー賞の常連となっている現在の女性ロック・ボーカリストを代表するビッグ・ネームが、6年ぶりに行う来日公演。婚約解消、闘病、養子を迎えるなど、波乱に富んだ実生活を糧に、自らの原点に立ち返るようにして制作した最新アルバム『ディトアーズ』を携えて、ピュアなエモーションを放ってくれる。

 アーティストにとって、平穏な生活が表現活動に直結するかどうかは、極めて切実なテーマといえる。1993年に『チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ』でデビューしたシェリル・クロウは、その収録曲『オール・アイ・ウォナ・ドゥ』が、ビルボード誌で最高2位を獲得する大ヒット。アルバムも全米で400万枚を超え、一気にアメリカを代表する女性ロック・アーティストとしての地位を手に入れている。

 その後も彼女は、たびたびグラミー賞に輝き、まさに順風満帆といったコンディションで、アーティスト活動を展開。2005年に『ワイルドフラワーズ』をリリースした時は、すでに次のアルバムのための楽曲を書き終えており、翌2006年にはポップで明るい新作を発表する予定だというアナウンスが流されていた。

 しかしその後の彼女は、突如として信じられないようなアクシデントに見舞われた。2005年にはツール・ド・フランスの歴代最多優勝者として知られるランス・アームストロングとの婚約を発表し、幸福の最中にいるように見えたが、2006年に突如破局。さらに彼女自身が乳癌であることが発覚したのだ。手術は無事に成功した。だがこうしたアクシデントを経験した彼女の心境は、2005年に書いてあった楽曲を歌うようなものではなくなっていた。

 その療養期間を経て今年に到着した最新アルバムが、『ディトアーズ』だ。プロデューサーにデビュー作を手掛けたビル・ポットレルを起用したこの作品の核となるのは、アーティストとしての華やかな成功の影で、孤独な闘いを強いられていた彼女自身のプライベートな気持ちを素直に綴った楽曲。それでいて日本盤は、養子に迎え入れた子供のことを歌ったボーナス・トラックで、ポジティブに締めくくっている。本作を携えて6年ぶりに実現する今回の来日は、生々しい説得力に満ちたものとなるに違いない。(2008/7/25)