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チケットぴあインタビュー

神尾真由子

神尾真由子
2007年のチャイコフスキー国際コンクールから3年。バイオリン部門で日本人史上2人目の優勝者となった神尾真由子が、同ピアノ部門最高位のミロスラフ・クルティシェフとデュオ・リサイタル・ツアーを開催する。同世代のアーティストと行う待望の全国ツアーに向けて、その意気込みを語ってもらった。
――チャイコフスキー・コンクール優勝から3年。振り返ってみていかがですか?

空白のような月日でしたね。さすがにコンクール後は激動のような流れになりましたが、最近ようやく落ち着けるようになりました。変わったことと言えば... うーん、インタビュー依頼を頂くことが少し増えました(笑)。

実はコンクールを受ける時は、チャレンジすることには意味を見出していたんですけど、結果でこうなりたいという野心は特に無かったんです。元々音楽と心の中で距離を少し置くタイプということもあるかもしれませんが、コンクールで何かが大きく変わるとも思っていなかったんですよ。

演奏についても、楽曲そのものははとても大切だけど、演奏家としての自分をあまりに過大に評価して頂くと、ちょっと違うかなと思っています。大事なのは演奏家よりも楽曲ですから。でも、もちろん人間ですから褒めていただければ嬉しいですけどね。


――今年の秋のツアーは、神尾さんと同様に2007年のチャイコフスキー・コンクールのピアノ部門で優勝されたクルティシェフさんとの共演ですね。年齢も神尾さんより1歳年上で同世代。コンサートでは初共演ですか?

コンクール後に入賞者によるガラ・コンサートがありましたが、ふたりだけでデュオ・リサイタルをやるのは初めてです。コンクールの時はとても忙しくて、他の人の演奏を聴く機会なんかは全く無かったのですし、彼とは最後の記者会見でちょっと会ったくらい。実は最初はあんまり良い印象じゃなかったんですよ(笑)。いまは激変しましたけどね。私は最初大嫌いな人が後で好きになる事が多いんです。


――初めてクルティシェフさんの演奏を聴いたときの印象はどうでしたか?

何回か彼のリサイタルを聴きにいったことがあるんですが。そうですねぇ。何というか...お尻を叩いてきそうな演奏だなと思いましたね(笑)。後ろからつついてくるような感じかな。


――面白い表現ですね。ツアーのプログラムは、ベートーヴェン、ブラームス、R.シュトラウス、そしてチャイコフスキーなどかなりバラエティ豊かな作品が並びましたね。これはどういうポイントでセレクトされたんですか?

私はどちらかといえば、いつも弾きたいと思う曲や、あとは若いうちに弾いたほうが良いなと思う曲を感覚で選ぶタイプなんですけど。でもクルティシェフさんが「どうせ適当に選ぶんでしょっ」ていってほとんどセレクトされちゃいました(笑)。

実は当初、プロコフィエフのバイオリン・ソナタがプログラムに入っていて。ちょっと苦手だったので参ったなと思っていたんですが、途中で変更になったんです(笑)。でもせっかく練習していたのに彼に変更されてしまったので「代わりにあなたのリサイタルでプログラム選んじゃうからねって。全部バッハとか」って言って困らせてあげました。


――同世代ならではの和気あいあいとしたやり取りですね。逆にクルティシェフさんのセレクトで、神尾さんのお好みにあったものは?

リヒャルト・シュトラウスのバイオリン・ソナタですね。私が大好きな曲。でも最初にプログラムの相談をしているときに私が提案したら、彼が無反応だったんです。それで、この曲をあまり知らないのかなと思って、YouTubeで楽曲調べて大量に彼に送りつけてみたんです。そうしたら「シュトラウスは僕の愛を勝ち取った気がする」と言ってくれて採用になりました(笑)。


――神尾さんは小さい頃に憧れだったバイオリニストの方はいますか?

五嶋みどりさんですね。幼稚園くらいの頃かな、五嶋みどりさんの演奏の音がとても悲しげ音に聴こえていた印象があって、特に惹き付けられたのを覚えています。いま私のすごく仲の良い友達がみどりさんに教わっていて、ロサンジェルスに遊びにおいでよと言ってくれるので、近いうちに行ってみたいですね。


――悲しげな音が一番好きだったんですね。

幼稚園の頃から発表会では短調しか弾かないって言い張っていましたね。でも大人になってからは、例えばイツァーク・パールマンとかの演奏の素晴らしさもきちんと分かるようになってきました。


――最後に今秋のデュオ・リサイタルに向けて、ファンの皆さんにメッセージを頂けますか?

特に今年になって演奏面で目指すべきところが変わってきました。ちょっと大人になった私の演奏を聴いてもらえたら嬉しいですね。
あとクルティシェフさんとのコンサートは面白くなる予感がしています。私自身も、同世代でツアーを行う機会がなかなか無かったのでワクワクしています。ぜひ期待していてください。


取材・文・吉原学(チケットぴあ)


▼神尾真由子&ミロスラフ・クルティシェフ
 2010年 デュオ・リサイタル

■10月29日(金)18:30開演 青森市民ホール 【A】
■10月31日(日)18:30開演 横浜みなとみらいホール 【B】
■11月06日(土)14:00開演 福島市音楽堂 【B】
■11月07日(日)14:00開演 サントリーホール 【A】
■11月09日(火)19:00開演 ザ・シンフォニーホール 【A】

【A】
チャイコフスキー:なつかしい土地の思い出 Op.42
        :憂鬱なセレナード Op.26
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 「春」Op.24
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.108

【B】
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28
チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ Op.34
        :憂鬱なセレナードOp.26
ワックスマン:カルメン幻想曲
R.シュトラウス:バイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
神尾真由子

神尾真由子

神尾真由子

神尾真由子

神尾真由子

(c)Uwe Arens-Sony Masterworks

プロフィール

神尾真由子は「この才能は、ただただ神から授けられたとしか言いようのないヴァイオリン奏者」「歌心に満ちた音楽が体の中からあふれ出てくる」などと絶賛され、その将来を嘱望されている。
2007年の第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、世界中の注目を浴びた。
リンカーン・センターはじめ世界各地でのリサイタルは絶賛を博し、ニューヨーク・タイムズ紙には「正確なテクニックとあたたかなビロードの音色で示す強靱な表現力」と評された。これまで日本の主要オーケストラはもとより、インバル指揮/トーンハレ管弦楽団、メータ指揮/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、スピヴァコフ指揮/ロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団、ロックハート指揮/ボストン・ポップス・オーケストラ、ノセダ指揮/BBCフィルハーモニック管弦楽団、バイエルン州立歌劇場管弦楽団、バレンシア歌劇場管弦楽団、プラハ・フィルハーモニー管弦楽団などと共演。また、サン・モリッツ、コルマール、ヴェルビエなどの著名フェスティバルにも出演している。
最近は、フェスティバル・ストリングス・ルツェルン、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、カルガリー・フィルハーモニー管弦楽団、ロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団、BBC交響楽団などに客演し、欧米各地でリサイタルを行った。今後は、メータ指揮/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とのツアーや日本でのリサイタル・ツアーなどを予定している。
レコーディングではソニー・クラシカル・インターナショナルと国際専属契約を結び、RCA Red Sealレーベルよりデビューアルバム「PRIMO」をリリース。09年6月には、第2弾アルバム「パガニーニ:24のカプリースOp.1」をリリースした。
これまでに里屋智佳子、小栗まち絵、工藤千博、原田幸一郎、ドロシー・ディレイ、川崎雅夫の各氏に師事。現在はザハール・ブロンのもとで研鑽を積んでいる。
大阪府知事賞、京都府知事賞、第13回出光音楽賞、文化庁長官表彰、ホテルオークラ音楽賞はじめ数々の賞を受賞。
使用楽器はサントリーホールディングス株式会社より貸与された1727年製ストラディヴァリウスである。