――歌手のみなさんは、日本は初めてですか?
カーリン・コンリー(以下CC):日本どころか、アメリカから出るのが今回初めてなの。ツアーでアメリカ中を旅したことはあるんだけど…。とてもエキサイティングな気分です!
――歌手としてのキャリアは長いのですよね。
CC:5歳から歌を歌い始めて、子供のためのショーなどで『シンデレラ』や『眠れる森の美女』を歌い続けてきました。とても内気な女の子だったので、母親が心配して演劇のクラスに私を入れたんだけど …7歳のとき、『リトル・マーメイド』の「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌ったら、ママが泣いていたの。「なんて綺麗な声なの! ママは知らなかったわ」って(笑)。それがすべてのはじまりです。
――子供の頃からとても素晴らしいシンガーだったんですね。トニーさんはミュージカル『マンマ・ミーア!』や『ウィ・ウィル・ロック・ユー』に出演されてきました。
トニー・ゴンザレス(以下TG):僕が歌い始めたのは小学生のとき。音楽の先生に勧められてサマー・ミュージカル・シアター・キャンプに参加したんだけど、すっかり歌の世界に夢中になってしまって。コーラスをしたり、毎日走り回ったりして、とにかく楽しくて楽しくて仕方がなかった。そんな子供だったので、高校と大学でも歌とダンスを学んで、エンターテイナーを目指したんです。
――なるほど。ミュージカルと「ディズニー・オン・クラシック」では、表現やテクニックの面で違いはありますか?
TG:それはいい質問だね。ディズニーの歌を歌うときは、そのキャラクターになりきると同時に、物語全体を伝えるストーリーテラーのような役割も負うことになると思う。僕は今回『アラジン』からの曲をたくさん歌うんだけど、アラジンのいたずら好きなところと、物語の面白さを伝えたいと思っているよ。
CC:私の場合は、子供の頃からディズニーの歌を歌っていたから、その頃の気持ちを忘れないということかしら。子供の夢見る気持ちでメリー・ポピンズやプリンセスになれたらいいな。オーケストラとの共演は歌手にとって素晴らしい体験だから、とても楽しみにしているの。
(ここで指揮者のブラッド・ケリーさん登場。歌手たちと仲良く握手をする)
――マエストロにとって、カーリンさんとトニーさんは理想的な歌手ですか?
ブラッド・ケリー(以下BK):もちろん。長いツアーになるから、人間的に打ち解けられるということはとても重要だよ。こうして一緒に東京に来て、朝食やインタビューをともにしていても、本当に居心地のいい人たちだし、演奏の面でもとてもいいコンビネーションなんだ。テレビ収録(『題名のない音楽会』)でも、とても素晴らしかった。そして二人とも、すごい美人にハンサムだ。これ以上何も望まないよ(笑)。
――(笑)今年は10周年を迎えるわけですね。2002年以来共演している東京フィルハーモニー交響楽団“ネバーランド・オーケストラ”とは、長い歴史になりました。
BK:コンサートの数でいうと、250回はやっているはずだよ。最初からずっと一緒にやっているメンバーもいるし、7年目、8年目というメンバーも少なくない。深い絆を感じるね。意思疎通の面でも、私と彼らには特別な何かが働いていると思うよ。とても愛している。ファミリーみたいなものだね。
CC:テレビの収録でも、オーケストラはとても素晴らしかったわ。「この曲では全員立って演奏してください」というオーダーに対しても、みんな笑顔で対応してくれるの。チェロやコントラバスもいるのに。歌ってるときにちょっと後ろを振り向いたら、みんな笑顔で演奏していて…涙が出そうだった!
――息バッチリなのですね。ところで、今年のテーマは「Dreams Come True」で、1928年から1955年までの古いディズニーの音楽もとりあげると聞きました。どのような準備をされていますか?
BK:作品でいうと『白雪姫』『ピノキオ』『ファンタジア』といったマスターピースをとりあげて、13分くらいのメドレーを作ったんだ。皆さんが「ああ、あの曲だ」と思い出して、楽しい気分になれるようなアレンジにしたかった。きっと楽しんでいただけると思います。
――日本は震災後、意気消沈していますし、世界中でも不穏なニュースが跡を絶ちません。こういう時代に「ファンタジー」はどういう意味をもつと思いますか?
CC:私は、夢を持ちつづけて、幸福になることを諦めないで欲しいと思っています。『ピーター・パン』の歌の歌詞に、そういうフレーズが出てくるの。日本の皆さんには、とにかく「夢を持ち続けて」と言いたい。私は歌でそれを伝えたいです。
TG:僕はエンターテインメント業界で生きているけれど、この世界にもいいときもあれば、悪いときもある。大変な世界だけど、僕が歌い続けているのは、自分の才能をみんなに幸せになってもらうために使いたいからなんです。日本全国を回って、心に訴えかける歌を歌って、みんなを笑顔にしたい。
BK:私のところには、コンサートが終わるたびにたくさんのメッセージが寄せられるんだけど、これまでのお客さんには「病気だけど、生きる勇気をもらった」という人もいれば「落ち込んでいて自殺を考えていたけど、生き続けることにした」という人もいたよ。我々の音楽から勇気を与えられたというんだ。去年の(震災後の)コンサートも、皆に勇気を与えたいと思って演奏したし、今回も、常に美しい将来が待っているんだということを伝えていきたいね。私にとっても、日本は特別な国なんだよ。