チケットのことならチケットぴあチケットぴあ

こんにちは、ゲストさん。会員登録はこちら

チケットぴあインタビュー

飯森範親(フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2010)

飯森範親(フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2010)
ミューザ川崎シンフォニーホールを舞台に開催される夏の音楽祭「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI」。首都圏で活躍する9つのオーケストラの競演、家族みんなで楽しめる「こどもフェスタ」、ピアノやオルガン、ジャズのライブまで盛りだくさんの約3週間が今夏もやってくる!
このサマーミューザは、もちろん出演アーティストも毎回多彩な顔ぶればかり。その中でも今年2公演で指揮を担当するのが、ミューザ川崎を本拠地とする東京交響楽団・正指揮者の飯森範親だ。“サマーミューザのホストオーケストラ”東京交響楽団を率いる、こどもフェスタ(8月1日)とフィナーレコンサート(8月15日)に向け、その意気込みを語ってもらった。
――今年で6回目を迎える「フェスタ サマーミューザ」ですが、飯森さんが指揮をされたのは2005年(オルフの「カルミナ・ブラーナ」)、そして2006年(マーラーの交響曲第2番「復活」)ですので、久しぶりの登場ということになります。

たぶん、大きい編成の曲を振らせて欲しいと、自分から要望していたのかもしれませんね(笑)。このホール(ミューザ川崎シンフォニーホール)は、東京交響楽団がフランチャイズ・オーケストラとして定期演奏会ほか、重要なコンサートを行っていますから、お客様がとても暖かい雰囲気を作ってくださるんです。「私たちの街のオーケストラ」だと感じていただいているのでしょう。それは音楽家として、とてもありがたいことなんです。今年は「フェスタ サマーミューザ」で2つのコンサートを指揮させていただくことになり、とても楽しみにしています。


――指揮をされる2つのコンサートのうち、ひとつはファミリー向けの「こどもフェスタ」(8月1日)です。演奏する曲について、ご紹介いただけますか。

夏休みにご家族でお楽しみいただけるような選曲にしましたが、コンサートのテーマは「魔法」です。魔法に関する題名やテーマをもった曲ばかりを集めて『マジカル・オーケストラ!』というコンサート・タイトルを付けました。幕開けはチャイコフスキーのバレエ音楽『眠れる森の美女』から、とても有名な「ワルツ」を。2曲目の「魔法使いの弟子」は、映画『のだめカンタービレ』のサウンドトラックCDで僕が指揮をしているんです。ぜひ、その本人が指揮をする姿を観に来てください!ということで。この2曲で音楽の魔法にかかったお客様を、晴れやかな気分にしてくれるのがシベリウスのヴァイオリン協奏曲から、ダンスを踊るような第3楽章です。


――ソリストで登場するヴァイオリンの松本紘佳さんは、まだ中学生ということですが、共演はもうされていますか。

実は今回が初共演です。彼女のいろいろな演奏を聴かせていただき、とても豊かな才能をもっていらっしゃる方だなと感じました。オーケストラと共演するチャンスもまだ少ないでしょうから、新鮮な演奏を楽しんでいただけると思いますし、彼女にとっても大きなステップになるといいですね。お客様にとっては、未来のスター・プレイヤーに出会えるコンサートになると思います。


――後半の曲もご紹介いただけますでしょうか。

ファリャの「火祭りの踊り」はちょっとあやしい魅力をもった曲で、暗闇の中に真っ赤な火が燃えさかっているような光景を思い浮かべていただくと、より楽しめるかもしれません。映画『ハリー・ポッターと賢者の石』の音楽は、日本でも人気のある作品ですから、理屈抜きで楽しんでいただけるでしょう。ドイツで、やはりファミリー向けのコンサートをしたときに、この曲も取り上げたんです。そうしたらあちらは映画と並んで原作の本を読んでいる子どもたちが多く、それぞれがいろいろな光景を想像しながら音楽を聴いてくれたみたいで、とても喜んでもらいました。今回も盛り上がってくれるといいな、と楽しみにしているんです。


――コンサートでは飯森さんご自身が、曲の紹介などをされる予定はありますか。

僕もお話しをさせていただきますが、司会を務めてくれる長谷川静香さんがとても素敵な方なので、安心しておまかせしようと思っています。彼女とは昨年の末、4時間にわたるラジオの生放送番組をご一緒したんですよ。とてもクラシック音楽がお好きで、いろいろな疑問を初心者の目線で投げかけてくれ、それがとても新鮮だったんです。彼女ならお客様と同じ目線で音楽を楽しんでくれると思いましたから、今回の司会をお願いしました。このコンサートはオーケストラの楽器編成も大きく、いろいろな音色が楽しめると思います。僕には「音楽が好きな子どもたちの中に悪い子はいない」という持論があるんですけれど、今回のコンサートを聴いて楽器を始めたり、音楽がもっと好きになってくれたら本当にうれしいですね。


――「フェスタ サマーミューザ」のラストを飾るフィナーレコンサート(8月15日)も指揮をされますが、こちらはフランス音楽による本格的なプログラムです。

これは、東京交響楽団がミューザ川崎で演奏するようになり、カラフルな音色を手に入れたからこそ生きる選曲だと言えるでしょう。フランス音楽は、音色の美しいオーケストラが演奏すると本当に夢のような世界を作りあげることができますし、それだけに難しいとも言えます。ベートーヴェンなどのドイツ音楽と比べて幅広い音色や表現が求められますので、現在の東京交響楽団がどれだけの可能性をもっているか、証明する機会にもなるでしょう。僕にとっても思い入れがあるプログラムです。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」は、学生時代にいつもスコアを持ち歩いていたほどの僕にとって<聖書>と言える作品ですし、東京交響楽団と共にベルリオーズの「幻想交響曲」を指揮するのは10年ぶりですので、ちょっと感慨深いものがありますね。ラヴェルの協奏曲は横山幸雄さんという名手が弾きますので、素晴らしい演奏が聴けることでしょう。


――フランス音楽は、現在の飯森さんにとってどういった位置にある存在でしょうか。

この10年ほどは特にドイツ音楽を追求してきましたから、実は指揮をする機会があまりなく、フランス音楽だけのコンサートというのは僕にとっては珍しいことなんです。ラヴェルも「ボレロ」を指揮することはありますけれど、他の曲を指揮することはあまりなかったですね。ただし、自分にとっては指揮者の原点でもある大事なものであることも確かです。と言いますのも、学生時代に「このまま指揮の勉強を続けてもいいのだろうか」と悩むほど大きな壁に当たり、そうした中でひと筋の光を与えてくださったのが、フランス音楽の指揮にかけては神さまのような存在であるジャン・フルネ先生でした。ドビュッシーやラヴェルの音楽をレッスンしていただき、最高の讃辞をいただいたことがあるんです。そのとき、自分がやってきたことは間違いではなかったし、これからもさらに勉強を続けようという意欲が湧いてきました。あの体験があったからこそ、今こうして指揮者になれていると考えれば、フランス音楽が僕にもたらしたものは大きいですね。そうした個人的感慨もあり、今回は僕にとって大きな通過点になるんじゃないかと思っているほどなんです。


――2回のコンサートともに公開リハーサルもあります。

リハーサルとコンサートと、ぜひ両方ともご覧になっていただきたいんです。と言いますのは、リハーサルと本番でオーケストラのテンションがこれだけ変わるものなのか、これだけ本番はすごい演奏になるのかというところを、比較し体感していただきたいんですよ。それがプロのすごさなんだということをわかっていただけると思います。


――ミューザ川崎シンフォニーホールでは、もちろん何度も指揮をされていますが、あらためてその魅力を教えてください。

僕の中では日本でトップ3に入るホールです。これだけ広い空間であるにもかかわらず、後ろのほうで聴いてもオーケストラの音がちゃんとまとまって聞こえますし、ステージと客席が近いせいか、お客様との一体感が楽しめるホールなんです。これはオーケストラの楽員にとってもうれしいことでしょう。またホールというのはオーケストラにとって、独自のサウンドを作り出すための"楽器のひとつ"だとも言えますが、東京交響楽団はリハーサルやコンサートで何度も演奏をする中、このホールをもっともよく知っているオーケストラになり、ホールの音響特性を生かした自然な演奏ができるようになりました。いいホールというのは、演奏のしかたも大きく変えてしまうものなんです。フィナーレコンサートの3曲は多彩な楽器が並び、いろいろな音色を楽しめますので、ミューザ川崎だからこそ聴ける豊かなサウンドを味わっていただければうれしいですね。


取材・文:オヤマダアツシ



◆◇◆フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2010◆◇◆

-飯森範親 出演-

◆こどもフェスタ「マジカル・オーケストラ!」
□8月1日(日) 14:00開演
指揮:飯森範親
バイオリン:松本紘佳
管弦楽:東京交響楽団
○チャイコフスキー:「眠れる森の美女」より
○デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」
○シベリウス:バイオリン協奏曲より第3楽章
○ファリャ:バレエ音楽「恋は魔術師」より「火祭りの踊り」
○ジョン・ウィリアムズ:交響組曲「ハリーポッターと賢者の石」より
※公開リハーサル(要予約)

◆東京交響楽団フィナーレコンサート
□8月15日(日) 開演15:00
指揮:飯森範親
ピアノ:横山幸雄
○ベルリオーズ(幻想交響曲)
○ラヴェル(ピアノ協奏曲ト長調)
○ドビュッシー((牧神の午後への前奏曲)
※12:00より公開リハーサルあり。


§ フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2010 §
  公演スケジュール

◆東京交響楽団オープニングコンサート
□7月25日(日) 16:00開演
◆読売日本交響楽団
□7月28日(水) 20:00開演
◆東京都交響楽団
□7月29日(木) 15:00開演
◆東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
□7月30日(水) 20:00開演
◆NHK交響楽団
□7月31日(水) 16:00開演
◆こどもフェスタ『マジカル・オーケストラ!』
□8月1日(日) 14:00開演
◆こどもフェスタ『ピアノ☆ファンタスティック』
□8月2日(月) 11:00開演
◆こどもフェスタ『おはなしオルガン』
□8月3日(火) 11:00開演
◆神奈川フィルハーモニー管弦楽団
□8月4日(水) 15:00開演
◆新日本フィルハーモニー交響楽団
□8月5日(木) 20:00開演
◆東京フィルハーモニー交響楽団
□8月6日(金) 19:00開演
◆洗足学園音楽大学ポップスオーケストラ
□8月7日(土) 17:00開演
◆日本フィルハーモニー交響楽団
□8月8日(金) 15:00開演
◆サマーナイト・ジャズ!
□8月10日(火) 20:00開演
◆昭和音楽大学管弦楽団/しょうわジュニア・オーケストラ
□8月12日(木) 19:00開演
◆オルガニストの極意II~真夏の夜の風・オルガニストは風使い~
□8月13日(金) 20:00開演
◆東京交響楽団フィナーレコンサート
□8月15日(月) 15:00開演