──この指揮者とオーケストラとは初めての共演だそうですね。
「ええ、共演するのはまったく初めてですので、とても楽しみにしています。指揮者、オーケストラとどんな音の対話ができるのか、それが一番心待ちにしている面です」
──シベリウスのヴァイオリン協奏曲は、チャイコフスキー国際コンクールでも演奏されましたが、この作品にはどんな思いを抱いていらっしゃいますか。
「とても難しい作品だと思います。シベリウス自身がヴァイオリニストを目指した人で、この楽器をよく知っているため、さまざまなところに難度の高い和音がちりばめられている。フレーズも長く、リズムもとりにくい。なんだか、ヴァイオリニストに意地悪しているみたい(笑)。でも、結果としてすばらしい作品になっているので、多くのヴァイオリニストが好んで弾くわけです。この作品は私の欠点が出にくいので、コンクールのときに選びました。 欠点ですか? 舞台に出て本番になると旋律をものすごく歌いすぎたり、カーッとなって走りすぎたりすることがあります。でも、シベリウスはそうした思いにならずに演奏できるんです」
──この作品は楽章ごとにまったく異なる表現を要求されると思いますが…。
「まず第1楽章から、オーケストラにソリストが歩み寄っていかなければうまくいきません。楽譜に忠実に演奏することが大切になります。第1楽章がもっとも弾きにくく難しいですね。第2楽章は少しロマン派的な弾きかたをしてちょっとテンポを揺らしても大丈夫。でも、第3楽章はまたテンポを守ってきっちり弾いていかなければなりません。全体的にオーケストラとの音の対話に心を配り、集中力を高めないと。この作品は12歳のときに初めて弾きましたが、そのときに先生がアイザック・スターンの録音を聴かせてくれました。以来、ずっと弾き続けています。難しいけど大好きな曲ですよ」
取材・文:伊熊よし子 撮影:山口亮治