――ESCOLTAのデビューは2006年12月。クラシック出身のテノール田代さんと、バリトンの吉武さん、ポップス出身の結城さんが初めて顔を合わせたときの印象はどういうものだったのでしょう?
吉武大地:「それぞれ違うタイプの歌手たちが一同に集まってオーディションをしたので、メンバーが決まったときは『まとまるのかな?』と(笑)。今まで自分がやってきたクラシックだけじゃなくて、新しいことが始まるんだ、という大きな期待がありました」
結城安浩:「僕はポップスやR&Bしか歌ったことがなかったので、テノールとかバリトンとか、パートが分かれているジャンルは未知の世界でした。声が朗々としていて、大きいんです。人の横でそんな声出すんだ、と驚きました(笑)。カルチャーショックでしたよ。ESCOLTAで歌う中で、自分のスタイルも少しずつ変わってきましたが、異文化コミュニケーションみたいな形が一番面白いと思うので、あえてあまり(クラシックのスタイルに)寄り添おうとは考えなかったな。万里生は万里生の、大地は大地の自分らしさを高めて、もっともっとオリジナルになっていくのがESCOLAの醍醐味なので」
田代万里生:「結成してから、本当に色々なことを三人で経験してきました。嬉しいことだったり、悲しいことだったり…それがそのまま歌になるんです。この六年一緒にいたことで、お互いのことがよくわかってきたし、とにかくステージが毎回楽しみなんですよね。僕たちがやりたいと思っただけでは出来ないことも、支えてくれるスタッフさんや、応援してくださる方のおかげで実現してきた。本当に色んな人たちに助けていただきましたね」
――それぞれソロとしての活動も充実していますが、再びESCOLAに戻ってくるとリフレッシュ感はありますか?
結城:「帰ってきた感、はありますね。実家みたいな感じ(笑)。外では気を張って頑張って、帰ってくるとリラックスしながらもすごい刺激をもらえる。そういうところがいいんですね」
田代:「ミュージカルやオペラは、その作品に合わせて歌唱指導の先生がいらっしゃるんです。役としての歌なので、声の出し方も全然違う。キャラクターとしての表現になるんです。ESCOLTAは、等身大の田代万里生になれる場所。三人というところもバランスがいいんじゃないかな。まったくタイプがバラバラだし」
吉武:「それぞれソロで得てきたものを、ESCOLTAに還元している感じです。毎回メンバーから刺激を受けているし、そういうところがいいんですね。個々のキャラクターだけでなく、「3人らしさ」も出していかなくてはと思っているし。CDも楽しんでいただきたいけど、ESCOLTAは生のコンサートをやるために、成長を続けてきたんです」
――二月のオーチャードが楽しみです。リハーサルにも熱が入りそうですね。
結城:「本番のためだけの練習とも限らないですから。そこにいる大地と万里生に歌を聞かせたいと思っているので、リハーサルはリラックスしたライブみたいな感じでやってます。二人を魅了したいですね(笑)。途中でモノマネなども入れて…エンターテイメントしていますよ」
田代:「ヤカンのモノマネとかうまいんです」
結城:「ヤカンとか、にわとりとか、志村けんさんとか、土井たか子さんの掛け合いとか…。本番のステージで万里生からヤカンを振られて、肝をつぶしかけたことがあります。結構な数のお客さんなのに」
吉武:「リハーサルで、結城くんが万里生にプレゼンしているということですよね(笑)」
――(笑)笑いもあり、感動もあり、と。昨年リリースされたアルバム『愛のうた』からの曲がメインになるのでしょうか?
吉武:「新しいアルバムからもやりますし、ファースト、セカンド、サードからの曲や、デビュー曲『愛の流星群』や、途中でカンツォーネも入れたいですね。明るくて、お客さんと楽しめる楽曲もやりたい」
結城:「震災以降、三人でステージに立てること自体がとても貴重なんだと思うようになりました。震災の直後は、中止になったコンサートもありましたし…。大地と万里生が歌っているのを、ステージの一番近くで聴いているのが、僕にとっての幸福なんです」
田代・吉武:「そんなことを考えていたとは」
結城:「え、気持ち悪がってない?(笑)」
――(笑)オーチャードホールというホールならではの演出は?
吉武:「クラシックの殿堂ホールなので、フォーマルな雰囲気になると思います。このSinging DramaというシリーズはESCOLTAがデビュー前から取り組んでいたもので、コンサート全体でも、歌ひとつひとつにもドラマを感じてもらいたいというテーマがあるんです」
田代:「僕たちはコンサートのたびにお客さんからものすごいパワーをもらっています。歌でパワーを出し切っただけ、その何百倍も客席からパワーが返ってくるんです」
結城:「だから、コンサートが終わった日は眠れないですね。コンサートの翌日は僕の誕生日ですし、そのままずっと起きていると思います(笑)」
――(笑)喉をいたわって、本番にそなえてくださいね。