――アルバムを作る上でポイントにしたことはありますか?
クハラ「出来た楽曲に正直に演奏しようっていうのはいつもと変わらないんですけど、太鼓の段階ではより生々しい音にしたいっていうのはありました。叩いてる様子までも封じ込められたらいいなって」
――聴き手の意識を開放するパワーを備えた曲や光をイメージさせる曲が目立っていると感じたのですが、チバさんは曲を作る上で考えてたことはありますか?
チバ「いや、いつもと変わんない。とにかく曲を作り上げて、演奏して、レコーディングしていくという。同じ時期に作ってるから、アルバムにした時に、ひとつの匂いみたいなものは出てくるとは思う。歌詞に関しては、確かに光が出てくるものは多かったかもしれない」
――歌がダイレクトに伝わってくるという印象も受けました。聴き手のことを考えたりは?
チバ「意識はしてない。ただ、1曲目の『FREE STONE』にしても、ボーカルだけから始まると、かっこいいよなって思ってて。広い意味では、そういうのも聴き手のことを考えていることになるのかもしれない」
――自分自身も聴き手でもあるわけですもんね。1曲目の『FREE STONE』はアルバム『STAR BLOWS』を象徴する曲のひとつだと思うのですが、どんなきっかけから生まれたのですか?
チバ「原形は去年の“38 NIGHTS ON FOOL”ツアーの時からあったんだよね。ツアー中のライブハウスでのリハでもやったりしてて、ツアーが終わって、リハスタに入ってから完成させた」
――この曲の“悲しみも 明日も 引き連れて 吹き飛ばそうぜ”というフレーズはアルバム全体にもかかってきそうですね。
チバ「『STAR BLOWS』というタイトルを決めてから、その流れで歌詞を書いたというのはあった」
――歌とバンドの演奏との一体感がより濃くなっているという印象を受けました。
クハラ「歌が後から入るケースが多かったんですが、歌が入って、全部が入った完成形を聴く時に、よっしゃーっていう感覚は強かったです」
チバ「『FREE STONE』の場合は最初から“I GOT A FREE STONE”というとこは歌ってた。黒人の女の人のコーラス入れたいとか、そういう話はしてた」
クハラ「断片でヒントがあって、黒人のコーラスが入るって聞いて、ああそっか、そういう感じね、じゃあこうしようかな、みたいなことはありましたね。それはどの曲でもあるんだけど」
――歌とバンドサウンドとのこの濃密な一体感は、メンバー4人がこの5年間、一緒にステージに立ったり、曲作りしてきた成果でもありそうですね。
クハラ「それは確実にあると思います。だから逆に分業で大丈夫というか、各々の判断でやっていいというか」
チバ「1曲1曲に対して各々が見えてるものを互いにすぐに理解出来るようになってきたということだと思う。タイムラグがほとんどなくなった」
――曲が生まれる瞬間をモチーフにしたと思われる「ピアノ」は実に美しい曲ですが、どういうところから生まれたんですか?
チバ「原型みたいなものは最初にスタジオ持っていってやった時にすぐ出来て、その時から構成はほとんど変わってないんじゃないかな」
クハラ「そうだね。お初にやったことがまんま生きていたりしてますね。ピアノのリフが始まった時から、ああいうドラムパターンは当たっていた気がするし」
――チバさん、こんなにも美しい歌を作る人には見えないわけですが。
チバ「見えない?(笑) まあ、俺以外のメンバーのおかげだね(笑)。頭のベースのイントロみたいなのはハルキのアイディアなんだよね。ハルキが『ピアノを入れたい』って言ったんだけど、『違う。お前弾け』『やっぱりそうきましたか』って、弾いたのが良かった。ハルキのダブルのベースに対してのイマイ君のあのギターも最初から出てきてた」
――アルバムラストの『SUPER SUNSHINE』はライブの光景が目に浮かぶ名曲ですが、どんなところから?
クハラ「これもスルッと出来たんじゃなかったかな」
チバ「早かったのは早かった。最初の捉え方はみんな違ってた。俺はストーンズの『You Can't Always Get What You Want』みたいなイメージだったけど。ゴスペルっぽいというか。途中からキューがテンポを上げたんだよね」
クハラ「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『Heroin』みたいなイメージがあって。ドスドスドスっと上げていきたいなって」
――太陽を呼び起こすパワー、誕生させるパワーを持った曲ですよね。個人的な勝手な解釈ですけど、The Birthdayというバンド名から生を祝福するニュアンスを感じていたので、そのバンド名と繋がる曲でもあるのではないかと思いました。
チバ「なるほど。そういう話を聞くと楽しくなるよ。そういうふうに勘ぐってもらえたら、うれしいね」
――さっき『STAR BLOWS』というタイトルは完成する前からあったとのことでしたが、どういうところから出てきた言葉なんですか?
チバ「アルバムの曲目すら決まってない時に、ジャケットをどうしようかって、デザイナーの人と話してて、それこそThe Birthdayじゃないけど、星がブワーッ吹っ飛んでるイメージが浮かんできたんだよね。後から思ったのは、星が誕生する瞬間かもしれないし、消滅する瞬間かもしれない。どっちにもとれるところがいいかなって。輪廻転生じゃないけど、続いている感じ、何が始まりで何が終わりかわからない感じがいいなと」
――バンドも4月から7月まで、長いツアーがありますが、そのツアーに向けての抱負というと?
チバ「まず健康になりたい(笑)。“健全な肉体に健全ななんとかが”って言うじゃない?」
――酒を飲むのを節制するとか?
チバ「いや、逆に酒を飲まないと、胃が痛いんだよ」
クハラ「それマズいんじゃないの? 健康は基本ですね。特に太鼓は五体がしっかりしてないと、やりたい表現も出来ないですから。この音を出したいのに、出来なくなったって、嫌じゃないですか。老いていく体と気持ちのバランスをとって、ドラムに向かいたいですよね」
――ツアーではどんな演奏をしたいですか?
クハラ「生演奏の良さを多くの人に知ってもらいたいですよね。今のレコーディングって、ドラムを叩かなくても、打ち込むことでリアルな音を作ることが出来るんですよ。それはそれでおもしろいと思うし、手法としては否定しないんだけど、生演奏でしか出せないものもあるわけで、生のアンプ、スピーカーから出て来る生の音は何か揺さぶるものがあるんだなというところを感じてもらえたらと思っています」
チバ「その場で見る、聴くって、それ自体がすごいことだし、いいなと思う。そこに向かってがっつり演奏したい。そのためにも体調を整えなきゃってことだね(笑)」
ザ・バースディ
写真左から、クハラカズユキ(ds)、チバユウスケ(vo&g)、ヒライハルキ(b)、イマイアキノブ(g)。
2005年結成、2006年シングル『stupid』でデビュー。2008年には日本武道館公演を成功させた。
4月3日(土)からは全国ツアーに突入する。