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チケットぴあインタビュー

吉田兄弟

吉田兄弟
その魅力を多くの人に知ってもらい、より身近な音楽・楽器として親しんでもらえるようにと、津軽三味線の音色を発信し続けている吉田兄弟。'99年のメジャーデビュー以降、全米ツアーを行うなど世界的にもその名を轟かせている。11月15日(水)には、津軽三味線二丁の演奏にこだわったニュー・アルバム『飛翔』をリリース。その新作を引っさげて現在全国ツアーを敢行中だ。今回のツアーは、井上陽水、松田聖子、福山雅治など多数のアーティストのヒット曲を手掛けるアレンジャー・井上鑑氏を音楽監督として迎えているが、兄・吉田良一郎の持つ日本民謡などに根ざした純日本的な感性と、アマチュア時代からセッションを積極的に行ってきた弟・吉田健一のミクスチャーな感性が、井上氏のアレンジにより、バンド形式での全く新しい邦楽へと変化したライブはまさに必見だ。

──今回のニュー・アルバム『飛翔』では、二丁の津軽三味線のみの演奏ということですが、津軽三味線スタイル にこだわろうと思われた きっかけは何ですか。

兄・吉田良一郎(以下兄):「アメリカに行って、2人だけでコンサートをやっていく内に自信が出てきたことかな。それまでは2人だけのコンサートって実はやったことがなかったんですよ。デビュー当時は手持ちの曲も少ないし、1~2時間津軽三味線だけでのステージをやる自信がなかったんですね。
それが曲が増え、そして自分のカラーがはっきり見えてきて、初めて昨年から今年にかけて津軽三味線二丁だけのツアーをやったんです。その流れで今回津軽三味線だけでアルバムを作ろうか…ということになったのですが、ある意味原点回帰というか、吉田兄弟の中でやっと一周したような気がしていますね。
一番こだわったのはまず音色。今の録音再生技術で、ダイナミックな音、小さい音、様々な津軽三味線の音を忠実に再現することは難しいんですが、試行錯誤しながら、土臭い、津軽三味線らしい音色で録音できたと思います。それとライブ感。いつもレコーディング後コンサートになるので、その際に若干曲が変わってしまうことが多かったので、ライブ感のあった曲を入れてみたかったんです。」

──アメリカの話も出てきましたが、海外で演奏してみてどうでしたか?

兄:「日本ではどの会場で演奏しても大体同じ箇所で拍手が起こりますが、海外のお客様はどこで拍手が起こるかわからないし、曲中に全く起こらないこともあるんです。初めて海外に行った時、拍手が起きないことに結構ショックを受けました。特にヨーロッパ。ヨーロッパのお客さんはクラシック的に聴くんですよ。でもアメリカは違って、やっぱりジャズの国だからかもしれないけど、自分がいいなと思った時に個々が拍手をするんです。だからアメリカはとても演奏しやすい場所ですね。海外でやってみて、どんな場所でも演奏できるという自信に繋がりました。」

──海外での経験は大きかったみたいですね。

兄:「『時の砂』という曲があるんですけど、海外で演奏した時に返って来た言葉が“かわいい”とか“綺麗”とか、ある意味津軽三味線では出てこない言葉だったんですね。日本ではどうしても固定概念があるので、それをどんどん壊していきたいと思っています。」

──津軽三味線二丁だけでの演奏はどんなところが大変でしたか?

弟・吉田健一(以下弟):「基本的には転調が出来ない楽器なので、難しい点は多かったですね。」

兄:「バンドサウンドでやると心強いところがありますが、今回は全ての音を津軽三味線で表現しなければならない。なので曲によっていろいろなことを意識しましたね。今回のアルバムの『Panorama』っていう曲で言えば、ドラムがいない分三味線だけでリズムを表現しなければならなかったり、僕がベースラインを弾かなければいけなかったり、様々な試行錯誤がありました。」

──兄弟でやることでのプラス面、マイナス面はありますか?

兄:「僕としては兄弟でやることでのマイナス面はないと思っています。それに、弟と僕のカラーがはっきり分かれているので、喧嘩をすることはあまりないですね。曲で言えば、作曲した方がその曲の主導権を握るようにしているんですが、それがバランスよくやっていく秘訣なのかもしれないです。僕らプライベートでは 一切会わないんですよ。しかも 、お互いメールしても返事が返ってこなかったりすることもしばしばで(笑)。」

弟:「仕事で一ヶ月の大半会っていますから、普通の兄弟よりは仲が良いとは思いますよ。…とは言え、他の兄弟がどんな感じなのかは解らないので、何とも言えませんけど(笑)。」

──兄弟ならではの利点の方が多そうですね。

兄:「十何年間ずっと一緒にやってきていますから、違うプレイヤーと組んでやる時とはリズムの取り方などは全然違いますね。自然と合うんです。それに、演奏していると調子の良し悪しがすぐ分かります。一番分かりやすいのは『じょんがら節』なんですよ。」

──デビュー7年目ですね。振り返ってみてどんな7年間でしたか?

弟:「一番最初はオリジナルを作って間もなかったので、名前を覚えてもらうのが精一杯だったというのが正直なところです。今回津軽三味線二丁でのアルバムリリースに繋がったのは、7年間の自信が一番大きいのかもしれませんね。
もちろん、その中でアメリカなど海外を経験したというのも自信に繋がったというのはあると思います。今までは、いろいろなミュージシャンがいないと津軽三味線の表情を見せられないんじゃないかなと思っていたので、今回津軽三味線だけでいろいろな表情を表現できたということは良かったと思いますね。」

──11月よりツアーがスタートしますが、今までのツアーと違うところがあったりしますか?

弟:「今回のツアーは2部構成にする予定です。2人とも個性がはっきり分かれているので、それを生かせるように…ということで、どっちかというと前半が民謡とかクラシック的な兄の要素が強いもの、後半にミクスチャー的な僕の要素が強いものを持ってきています。
それと今までは必ず2人のソロ場面があったのですが、今回は曲単位でソロがはっきり分かれているので、あえてソロの場面というのはやらないのが今までとの違いでしょうか。CDは2人だけでの、ライブではバンドバージョンにアレンジし直しての演奏になるので、ライブならではの楽しみ方ができるかなと思います。」

兄:「どうしても津軽三味線って“荒波”とか“吹雪”とかそんなイメージがあるかと思うんですけど、それだけじゃなく“優しさ”だったり“かわいらしさ”だったりの、様々な音色を楽しんで頂ければと思います。」

取材・文:菅原美幸(チケットぴあ九州)

吉田兄弟

吉田兄弟画像

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プロフィール

北海道琴別出身。父の影響で、共に5歳から三味線をはじめる。兄弟共に数々の津軽三味線コンテストで受賞を重ね、'99年メジャーデビュー。'00年のアルバム『MOVE』は、'01年度第15回ゴールドディスク大賞/純邦楽アルバム・オブ・ザ・イヤー、'02年に発表した『Soulful』は第17回ゴールドディスク大賞/日中国交正常化30周年記念特別賞を受賞。

'03年には全米デビューを果たし、'04年には韓国、'06年には香港でもアルバムがリリースされた。日本国内のみならず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでのコンサートも積極的に行っている。日本の伝統芸能の枠を超えて、ワールドワイドに活躍できるアーティストとして注目を集めている。