2012年4月、1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。尾崎世界観の胸を突き刺すハイトーンボイスと独創性溢れる歌詞世界、エモーショナルなロックサウンドで人気を博すクリープハイプが、デビューわずか2年目にして日本武道館2DAYSを敢行! 作品について、ライブについて、そして日本武道館公演への展望を4人に聞く。
――4月16日(水)、17日(木)に日本武道館2DAYSを行うクリープハイプ。昨年7月にリリースされた2ndアルバム『吹き零れるほどのI、哀、愛』は、いま振り返ってどんな作品だったと思う?
尾崎:去年の年明けからアルバム制作に取り組んで、発売されてからも年末までアルバムツアーをやっていたんで。2013年がそのままアルバムに詰まっていると思います。楽曲的にも無理ない範囲で色んなことが出来たし、良いアルバムになったと思いますね。
長谷川:1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』は、ひとつ踏み台に登る作業だったと思いますが、2ndは登った上で「どうしようか?」 という、余裕と好奇心が詰まってたと思うんです。
――単純にメジャーデビュー以降、何か意識は変わりました?
長谷川:メジャーとかあまり関係なく、作品ごとに変わってますね。レコーディングが終わった時には「やり切った!」と思うんですけど、聴き返して「あ~、いかん」と思って、その繰り返しです。
小泉:僕は2ndでパッと開けた感じがありました。1stの時はガムシャラで、自分のやることも見えてなかった感があったけど、2ndはもっと開放的な気分で作れて、自分の中のトンネルを抜けた感じが出せたと思うし、アルバムを聞き返してもそういう印象を受けて。自分にとって、すごく大きなポイントになる作品になりました。
――うん、それは聴き手側も感じた部分で。「憂、燦々」って、誰もが「良い曲だな」と思える、突き抜けたポピュラリティを持ちながら、ちゃんとロックで皮肉や毒も込められたクリープハイプらしさがあって。それがメジャーに行っての変化だと思うし、2ndがパッと視界が広がるような作品になった理由のひとつだと思います。
小川:そうですね。1stを出してシングルを重ねていくうちに自然と肩の力も抜けて、それがバリエーションの豊かさに繋がったと思うし。バンドのヒリヒリした部分は出しながら、全体として温かみがあるアルバムになったと思っていて。自分たちで聴いても、ちゃんと成長が見られる作品になったと思ってます。
――アルバムを掲げて昨年10月から行われた全国ツアー。バンドとしての成長はツアーにも表れていた?
尾崎:最初はなかなか掴めなくて大変でしたけど、ツアー中もすごいセットリスト変えたし、成長出来てるのが分かりました。でも、それも良いアルバムが出来たからだと思っていて、今までだったら「ちょっと違うかな?」と思っても、余計ダメになるのが怖くて変えなかったと思うんです。それが今回はもっと出来ると思ったから、どんどん変えていったし、それで良くなっていくのも分かったし。
――じゃあ、初日とファイナルでは全然違う物になっていた?
尾崎:全然違いましたね。ただ、初日は横浜club Lizardでやったんですけど、空調が壊れてものすごい熱気で、フロアもステージも水撒いたみたいにビシャビシャになって。ライブがどうとかっていうより、やってるだけで凄いなと思って(笑)。ライブ中も体の水分がなさすぎて、何度も足つってましたからね。
小川:ライブ中は全身びっしょりで、曲間に汗が吹き出てくるのが分かって。僕らも大変だったけど、見てるお客さんもびっしょりで、お互いに凄い体験しましたね。帰りにラーメン食べたよね?
尾崎:そう、天下一品ね。塩分をものすごい欲してたから(笑)。
――へ~、初日からとんでもない試練が待ってたんですね!
尾崎:それで色々考えて、積み重ねてたどり着いた分、ファイナルは色んな気持ちがあったし、いつもと違った感情があって。「こういう気持ちで最終日を迎えなきゃいけないんだな」と思いましたね。
――現メンバーになって5年、メジャーデビューから2年とハイスピードでの日本武道館ですが。日本武道館が決まった時の感想は?
尾崎:もちろん自分たちも嬉しかったですけど、周りの人が喜んでくれたのが嬉しくて。小さい事務所でずっとやってきて、関わってくれる人もそれなりに増えて、そういう人たちが「武道館でやるバンドに関わってるんだ」と思ってくれたら嬉しいなと思って決めました。武道館を目標にしていたわけではないですが、誰かを喜ばせたいとか、驚かせたいとか、何か思ってもらいたいと思ってやってるので、大きい会場で出来るのは単純に嬉しいし。こういうこと歌って、こういう活動してるバンドが武道館を2日間埋めたら、そこに何かが残るかな? と思っていて。色々言う人もいますけど、「じゃあ埋めてみろよ!」って言いたいですね。……と言いながら、まだ2日間埋まるか、すごい不安ですけど。
――アハハ。それも本音ですよね(笑)。
尾崎:武道館以降のことも気になりますしね。「武道館をやった後のクリープハイプがどうなるか?」っていう。そういう意味では、その先に進むために早く済ませておきたい場所だったりもしたんで。もう、早く済ませちゃいたいですね!
――俺は単純にこういうバンドが、武道館に立つことが痛快です。
長谷川:痛快だと思ってもらえたら、僕らも嬉しいですね。これで終わりでも、ここが最終目標というわけでもないんで。武道館を通過点にして、早くその先に進みたいです。
小泉:僕も一緒ですね。バンド仲間とか親とか、周りの人がすごい喜んでくれるのがモチベーションにもなってるし。好きなバンドは大抵、武道館を経験しているので。まずはそういう人たちと肩を並べるために、一度武道館を経験したいし。
――なるほど。しかし、「やったぁ、日本武道館だ!」って人は一人くらいいないんですか?(笑)
小川:いや、もちろん嬉しいですし、ツアーファイナルの時、楽屋で「クリープハイプ 日本武道館2DAYS」ってポスターを見た時は背筋が伸びる思いがしました。「武道館には魔物が住んでる」みたいな話も聞くんで、武道館をしっかり乗りこなしたいと思ってます。
――武道館のステージで、まずどんなことをしたいと思いました?
尾崎:映像を使いたいなと思いました。武道館用の映像を撮って、ライブと繋げていきたいと思ってるんですが。それも演出としての映像じゃなくて、ちゃんと物語を見せていきたいと思っています。
――武道館ライブは、16日公演が「平日の武道館 バイト編~ねぇ、シフト代わってくれない?~」、17日公演が「連日の武道館 正社員編~有給休暇の使い道、これが私の生きる道~」と意味深なタイトルが付いてますが、これも物語性と関係がある?
尾崎:そうですね。楽しみにして下さい!
――演奏に関してはいかがですか?
長谷川:演奏に関しては、特別なことはないですね。
小泉:ずっと4人で音を出してきているので、今まで積み重ねてきたことを大きな舞台で証明したいという気持ちはあります。
尾崎:いつものライブハウスの距離感と違うんで、不安な部分もあるんですけど。奥の方まで音が広がっていく感じとか、いつもは感じられないことも感じられて。ライブハウスとホール会場の良い部分をいっぱい見つけて、武道館に限らず、その場所で一番良い方法で表現していけるバンドになりたいですね。
――物語性という話も出ましたが、初日と2日目では内容もガラリと変わる感じですか?
尾崎:セットリストも映像も全く違う物にしようと思っていて。2日間あるんですけどやることも全然違うんで、僕らの感覚としては1日しかないくらいの感覚なので、お客さんにもぜひ2日間とも見に来て欲しいですね。
取材・文:フジジュン
エンタメ初体験を教えてください。
小学校の時に巨人×ヤクルト戦を観に行って。すごい盛り上がった瞬間があって、「なんでだろう?」と不思議だったんですけど。それがあの原辰徳選手がホームランを打って、バットを放り投げる有名なシーンだったことを後で知ったんです。(尾崎)
一番最初に買ったCDは何ですか?
小学6年生の頃、ドラゴンクエストにハマっていて。ドラゴンクエストのCDを買ったのが初めてです。知識が付いた時、オーケストラの三和音をシンセサイザーで起こしている音を聞いて、改めて凄いと思いましたね。(長谷川)
無人島に行くとしたら、どのCDを持っていきますか?
BLANKEY JET CITYが好きだったので、横浜アリーナでやった解散ライブのライブ盤「LAST DANCE」です。(小泉)
バンドを始めたきっかけを教えてください。
弾き語りをやってて、一人では完成しない音楽を誰かとやるのも面白そうだなと思って、バンドを始めました。あと単純にデカい音を出したかったです。(尾崎)
最近体験したエンタメで一番感動した(面白かった・笑った・泣いた・衝撃を受けた)ものを教えてください。
最近読んでいる本で、万城目学さんの「プリンセス・トヨトミ」です。映画にもなったんですけど、この発想や設定が面白いですよね。(小泉)
僕は洋ドラマの「ウォーキング・デッド」です。いわゆるパンデミック物なんですけど、避難した先で起こる事件も延々と描いているのが斬新なんです。(長谷川)
「音楽と人」で銀杏BOYZの峯田和伸さんと対談して。それを自分で本屋さんで買って読んで、あの時の記憶がテキストや写真の中に残っているから嬉しかったですね。(尾崎)
スポーツニュースで、フィギアの羽生選手の演技を見て。身体を使って自分を表現して、自分の持っていた最高記録を更新する姿に感動しました。(小川)
最近注目している人はいますか?
ケラケラってバンドが良いなと思って、CDを買いました。昔からストリングスやピアノが入ったバンドが好きだったんですけど、すごく音も面白くてよく聴いてます。(長谷川)
10年前の自分に声をかけるなら何と声をかけますか?
バンドやってたんで、「辞めんな」って言いたいですね。その後すぐ、やってるバンドが解散して、路頭に迷うんですけど。「お前のやってること間違ってないから」って言ってやりたいです。(小泉)
10年後の自分に声をかけるなら、なんと声をかけますか?
「10年前の今ごろ、すごい大変だったな」って言います(笑)。(尾崎)
好きな言葉・座右の銘は?
好きな言葉じゃないですけど、今思い浮かぶのは「寝耳に水」です。(尾崎)
将来の夢・これから(武道館後)挑戦したいことを教えてください。
大きなステージに立てば立つほど、ギタリストとして求められることも多くなっていくんで。その場その場の課題を乗り越えていくのが目標ですね。(小川)
「クリープハイプ」というバンドを漢字一文字で表すと?
(インタビュアーの「愛じゃない?」の言葉を受けて)
じゃ、愛でいいです。ちょっと恥ずかしがったりしてる間に誰かに言ってもらえたのが、すごく嬉しかったので。(尾崎)
チケットぴあのインタビュー「Special Interview 一語一会 クリープハイプ」のページです。
尾崎世界観 (Vo./Gt.)
小川 幸慈 (Gt.)
長谷川カオナシ (Ba.)
小泉 拓 (Dr.)
2001年結成、2009年11月に現メンバーとなり、本格的に活動をスタート。2012年にメジャーデビュー。