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売れない役者と腕利きの殺し屋の人生がひょんなことから入れ替わり、そこに婚活中の女性編集者との恋も加わり…という恋と笑いとサスペンスが交錯した名作『鍵泥棒のメソッド』。この大ヒット映画を、演劇集団キャラメルボックスが今春舞台化する。映画の脚本・監督を務めた内田けんじと舞台版の演出・成井豊に本作の魅力や舞台への期待についてたっぷり話を訊いた。

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初の純粋な映画原作の舞台化! 魅力は「照れくさくないハッピーエンド

内田けんじ

――これまで映像化された作品を含め、小説原作の作品(「『容疑者Xの献身』ほか)はありますが、純粋に映画作品の舞台化はキャラメルボックスにとって初めてです。

成井:単純に映画として感動して「これやりたい!」って思っちゃった(笑)。テーマ的にも主要な3人が自分の人生、他人の人生を「演じる」ということをしてて、すごく演劇的だなと思いますが、それは後付けの理由。何より面白かったから。

内田:光栄です。どんな舞台になるのか、想像できそうでできないんですよ。映画には映画なりのごまかし方というのがあって(笑)、それは演劇とは全く違うテクニックですからね。想像できないからこそ楽しみです。

成井:内田監督の作品はいずれも善意が最終的に報われ、善人が勝利する。エンターテイメントはそうあるべきだと思うけど、絵に描いたような人生讃歌じゃ道徳の授業になっちゃう。内田監督の映画はお説教臭さがなくて、でも登場人物たちが幸せのための一歩を踏み出す。照れくさくないハッピーエンドなんです。僕も常にそれを目指してるけど、実ははすごく難しいことで、この映画はその数少ない成功例なんですよ。

内田:僕自身、それはこの映画を作る上でずっと言ってたことです。いまの時代、ハッピーエンドを作るのは難しくて、強引にそこに持っていけば物語が閉じちゃう。それでもこの映画はハッピーエンドを自分への“枷”にして作りました。確かに道徳的なことって退屈なんですが、でも本当に道徳から外れたキャラって、お客さんは何の感情移入もしてくれない。そのバランス――悪いことやってばかりのアンチヒーローでもどこかに道徳が入っているというさじ加減はすごく考えました。

役者には、脚本ではなく『堺さんの演技から読み取れ!』と言ってます(成井)

成井豊

――銭湯で殺し屋のコンドウが転んで記憶喪失になるシーンをはじめ、演劇でどう見せるのかが気になるシーンがたくさんあります。

成井:考え中ですね。小説原作の時もそうですが「ここをこうすれば舞台化できる」という必勝法を思いついて『やろう!』と決めたわけではなく、まず惚れ込んで、そこから悩み、苦しむわけです(苦笑)。でも悔しいですが、あのままやるのは無理ですよ! どうアレンジするかですね。そういうシーンが山ほどある。

内田:別に石けんで滑って転ばなくてもいいわけですからね。どんなきっかけでもいいですから。「なるほど。そう変えてきたか!」となるのか「そのままやってもこんな効果的にできるのか?」となるのか楽しみです。

成井:映画と違ってアップもカット割りもできないのが演劇の弱点。でもどこを見るのかお客さんに選ばせることができる――つまりカットや編集をお客さんができるのが演劇の面白さだと思います。例えば映画で香苗(広末涼子)の顔がアップの時、コンドウ(香川照之)はどんな表情やリアクションをしていたのか? 映画では見せられないけど演劇ならできるんです。

内田:編集の時に全員が面白すぎて困ったことが何度もありました。全部、引きの画で見せたいって(苦笑)。何でもない広末さんの顔や堺(雅人/桜井)さんのリアクションだけで十分、シーンがもつんですよ。

――桜井、コンドウ、香苗という3人のキャラクターをどう見せるのかも楽しみです。

成井:役者には内田さんの書いた脚本を舞台化するのではなく、あくまで映画を舞台化するのだと言ってます。もちろん素晴らしい脚本ですが、僕がこの作品に触れたのは映画からですから。あくまで映画を舞台にしたい! 役者には「脚本からこう読み取れる」ではなく「堺さんの演技から読み取りなさい」と言ってます。でももちろん、堺さんじゃない役者がやるから、自分でできること、やりたい方向に修正していくじゃないですか。うちの劇団、29年目にして初の挑戦ですよ(笑)。多田(直人)と畑中(智行)のWキャストが桜井を演じますが、あいつら、死ぬほど堺さんの演技を見ると思いますよ(笑)。でもそれが楽しいみたいです。これまでやったことがないから。

内田:信長を演じるなら、本人の映像がないから何をやってもいいけど、ジム・モリソンの人生を映画化することになったら彼の映像を見まくる。それと同じですね(笑)。

――映画を既に見ている観客は内田ワールドの“肝”とも言える大どんでん返しをすでに知っているわけで、そこは大きなハンデを背負ってるといえますが…。

成井:もちろん、どんでん返しは初見の衝撃が一番すごいですが、話が面白ければ何度見ても面白いんです。複数回の鑑賞に堪えうるものこそが本当のどんでん返し! それはエンターテイメントの鉄則です。『ルパン三世 カリオストロの城』の北の塔へのジャンプシーンだって、ジャンプするって分かっていても何度見ても面白い! それは何度目でも関係ないんですよ。

内田流”映画作り 名作の裏に数々の没アイディアと裏設定あり!

【※以下、ネタバレに関する話題もありますのでご注意ください!】

成井:先ほどうかがったら、あて書きではなく、最初にキャラクターを考えて、そこから話作りをスタートさせたと。しかも香苗からスタートさせたと聞いて非常に面白かったです。僕はそういう書き方ができないんです。どうしても最初のアイディアがあって、話を膨らませてキャラクターを作っていくので、驚きでした。

内田:僕も本当の最初はシチュエーションなんです。そこからこの3人のキャラクターが出来上がってきたんですが、最初の物語は破綻しちゃった(苦笑)。それでもこの3人のキャラクターに惚れ込んじゃったです。この3人を生かすためにまたお話を組み立てて…。オープニングで香苗が「私、結婚することになりました」と言い出すけど、そこから全く違う物語が展開していくアイディアは山のようにありました。

――映画を見た観客は、桜井とコンドウの人生が入れ替わるというアイディアから全てが生まれたと想像してしまいますが…

内田:入れ替わりのアイディアなんてホントに最後の最後で出てきました。最初は香苗がお父さんの後を継いだ女社長で、コンドウはその社員だけど、実はお父さんに娘=お姫様を守るように託されていて…というお話だった。桜井はどの稿でも無職のダメなヤツでしたね(笑)。裏の設定もみっちり細かく決まってますよ。コンドウがなぜ、ダークサイドの仕事に手を染めるようになったか? 昔はボロアパートに住んでたけど、妻に逃げられて…とか。映画で桜井の部屋に初めて入ったコンドウが「かすかに懐かしいような…」と言いますが、それは実感なんです(笑)。

成井:うちの劇団、衣裳替えに最低1分はないとダメなんです。僕は脚本を分析して、時間の経過は1週間くらいかな? と考えてたんです。そうなると衣裳替えが6回必要なんですが…。

内田:映画でコンドウ(香川照之)が似合わない桜井の服をだんだん着こなしていくのを僕らも楽しんでました。ちなみにこの映画での時間の経過は3~4週間。20日以上、1か月以内ですね。

成井:それが聞けて良かった(笑)! 香苗がコンドウに「結婚してください」と言うだけの時間は必要なので、数日ではないけど、お父さんの死期が迫っているので2か月以上でもないなとは思ってたんですが。

内田:1か月以上だと、大家さんが家賃を取りに来て「あんた誰?」となっちゃう。そういう理屈をひとつずつ消しながら作りました。ただ、香苗が「結婚してください」と言った時点で、彼女はまだ恋に落ちてはいないんです。就活で面接を受けたような状態で、彼女にとっては「努力家」で「健康」というのが条件で、感情の盛り上がりはいらないので。

成井:なるほど。他にもいろいろお聞きしておきたいことが…コンドウが寄る銭湯は24時間営業? それとも夕方から開いている銭湯ですか?

内田:24時間ではなく普通の銭湯で夕方から…

成井:ということは“死体”の処理に半日かけているんですね。

内田:その通り。ほとんど徹夜で安全な沖縄まで送り届けて、それから東京に戻って、もう夕方になってるんです。

――脇役に関してもいろんな設定があると伺ってます。

内田:桜井の元カノが出てきますが、彼女の現在の彼氏も実は役者です。つまり桜井は役者に彼女を取られちゃったということ。劇団を主宰してたけど、人気役者がどんどんいなくなって立ち行かなくなり、女優の彼女も他の役者に取られた(笑)。しかも、その役者が、コンドウが出る映画にちょっとだけ出てるんです。それから、僕は香苗とお父さんの関係が個人的にすごく好きで、彼女はファザコンなんです(笑)。だから父親に似た男性を好きになってるし、音楽の趣味やキレイ好きというところも一緒。パジャマ姿の香苗が出てきますが、あれも父親が買ってきたものを素直に着てる。衣裳さんにそういう設定で用意してもらいました。

――最初に出てくる香苗の手帳の予定に「大相撲」とあります。

内田:間違いなくお父さんと一緒に見に行く(笑)。とにかくお父さんが好きなんです。

生で桜井という男の人生を“目撃”できる。それが演劇の魅力!

――演劇をやっていた桜井を主人公にしていますが、監督自身、以前からよく舞台を見に行かれるんですか?

内田:『運命じゃない人』を撮った後、いろんな役者さんを見に行くようになって演劇に触れるようになりましたが、10代の頃は縁がなく、やっと30を超えてから魅力を知りました。演劇の“マジック”は何度か味わいましたが、当たり・ハズレと言いますか…当たった時の凄さ、生の空気が動く感じは凄いですね。あれを10代で味わったら止まんないなと思います。

成井:その通りです。三振の多いホームランバッターなんです(笑)。2時間の生本番だということが演劇の魅力。2時間で桜井という男が自殺未遂から始まって、急に金持ちになって、やがてヤクザに狙われてというのを体験する。お客さんはそれをわずか数メートルのところで生で“目撃”できるんです。一度、コンドウの人生は白紙になるけど、それを取り戻していく。これをうちの役者にも体験させたいし、お客さんにも味わってほしい。ハードルは高いけどやりがいがあります。うちの役者に堺さん、香川さん、広末さん以上の演技ができるのか…(笑)? “生”であることを武器に、5週間みっちり、稽古します!



取材・文:黒豆 直樹
撮影:源賀津己

チケットぴあのインタビュー「キャラメルボックス「鍵泥棒のメソッド」内田けんじ×成井豊スペシャル対談」のページです。

INFORMATION

■キャラメルボックス「鍵泥棒のメソッド」

原案・原作:内田けんじ

劇作・脚本・演出:成井豊

出演(Wキャスト):
【Black】畑中智行 / 阿部丈二 / 渡邊安理
【White】多田直人 / 岡田達也 / 岡内美喜子

大森美紀子 / 西川浩幸 / 前田綾 / 大内厚雄 / 石原善暢 / 小多田直樹 / 笹川亜矢奈 / 毛塚陽介 / 関根翔太


<東京公演>
公演日:5月10日(土)~6月1日(日)
会場:サンシャイン劇場

<神戸公演>
公演日:6月5日(木)~10日(火)
会場:新神戸オリエンタル劇場


チケット情報


★お知らせ★
「鍵泥棒のメソッド」がWOWOWプライムにて放送決定!
4月29日(火・祝)19:30~(129分)
公式サイトの放送予定ページは
コチラ

PROFILE

■内田けんじ

映画監督、脚本家。
1972年、神奈川県川崎市生まれ。 サンフランシスコ州立大学芸術学部映画科卒業。自主制作映画『 WEEKEND BLUES』(2001年)でぴあフィルムフェスティバルに入選。劇場長編デビュー作『運命じゃない人』(2005年)で第58回カンヌ国際映画祭で4賞を受賞。『アフタースクール』(2008年)で第32回日本アカデミー賞・優秀脚本賞を、『鍵泥棒のメソッド』(2012年)で第36回日本アカデミー賞・最優秀脚本賞を受賞するなど、綿密に伏線を張り巡らせ、先の読めない展開と意外なラストで観客を驚かせるオリジナル脚本と演出で、独自の世界観を作り上げる。

■成井豊

脚本家・演出家。
1961年、埼玉県飯能市生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専攻卒業。1985年、加藤昌史、真柴あずきらと演劇集団キャラメルボックスを創立。旗揚げから同劇団で脚本・演出を担当するほか、テレビ朝日金曜ナイトドラマ『てるてるあした』『雨と夢のあとに』の脚本や、日本テレビ開局50周年記念事業 福澤一座旗揚げ公演『進め!ニホンゴ警備隊』(2004年)や明治座『つばき、時跳び』(2010年)の脚本・演出、『天使の耳の物語』『君の心臓の鼓動が聞こえる場所』(ポプラ社)の小説を執筆するなど、多方面で活躍中。

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