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いま、角界では23歳の若武者が横綱をも凌駕するほどの話題を集めている。入門から1年半、本人も予想だにしないフィーバーのなか、遠藤はただただ日々の稽古に励んでいる。髷を結うこともできなかったほどのスピード出世にも、本人は「まだまだ」と語り、「上位陣に通用する実力はまだない」と分析する。9月14日(日)に初日を迎える『九月場所』でも、遠藤はしっかりと足もとを見つめ、目の前の一番だけを見据える。

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(C)日本相撲協会


まだまだ。上位陣に通用する実力はまだない

――追手風部屋への入門から1年半という時間は、あっという間でしたか? あるいは、長かったでしょうか?

早かったですね。「めまぐるしく時間が過ぎていった」という感じでしょうか。

――充実した思いを、日々抱くことができていて?

どう、ですかね……。本場所の15日間が終わると、何かしらの充実感や達成感はありますが。これから現役生活を続けていくなかで、充実しているなと思えるように頑張っていきたいです。

――本場所を重ねるごとに、「成長できているな」と実感できていますか? それとも、「まだまだだな」という気持ちが強いですか?

まだまだです。

――具体的には?

全体的なものです。上位陣に通用する実力はまだないですし、すぐに力はつかないと思うので、少しずつ、一場所一場所経験しながら、自分のものにしていきたいです。

――いま現在の課題は?

それも全体的なものです。ひとつではありません。稽古をしているときから、「ここはこういうふうにやっていこう」とか、「これはこうしなきゃいけない」ということがあります。そういう一つひとつに、しっかり取り組んでいきたいです。

――データを見ますと、体重が増えていますね。

「何kgにしたい」と思って体重を増やしているのではなく、稽古をしながらですね。稽古をして身体を鍛えていけば、自然と筋肉がついていく。それは体重が増えることとイコールだと思うので。どんどん稽古をして筋肉をつけていけば、体重も増えていくでしょう。

――『九月場所』は幕内での7場所目ですが、周囲の期待は高まるばかりです。

そのあたりはあまり、自分では気にしないようにしています。もちろん、本場所などでいただくたくさんの声援は、自分のなかでやり甲斐になっています。

――声援が重圧になることはない?

そうですね……重圧とは感じていません。「もっともっと頑張ろう」という気持ちが強くなります。

――周囲から寄せられる熱い視線と、自分の取組にギャップを感じることはありますか?

多少はありますけれど……そういうギャップがないようにしていきたいと思います。

――実績十分で角界入りした遠藤関ですから、自分の周囲が騒がしくなることも想像できたのではありませんか?

いえいえ、そんなことはまったくありません。想像できていたら、大変な自信家でしょう(苦笑)。まったく想像していませんでした。地方巡業などでファンの方と接するのも、まだまだ慣れていないですし。

――相撲人気の高まりを感じますか?

巡業先でお客さんが満員だったりすると、「高まっているのかな」と感じますね。

いつまでも勉強と言っていられない

――西前頭筆頭として迎える『九月場所』が、いよいよ迫ってきました。いまの心境からお聞かせ下さい。

上位陣との総当たりになりますので、前回経験したことを生かしながら、一番一番しっかり取っていきたいと思います。

――前回の経験と言うのは、東前頭筆頭で臨んだ今年の『三月場所』ですね。どのように生かしていきますか?

生かすも殺すも自分次第ですので、やはり生かしていかなければいけないと思います。

――上位陣との総当たりとなりますと、心身の消耗度もかなり激しいのでしょうか?

多少はそういうところがあるかもしれません。ただ、それも慣れだと思います。

――本場所では「一番一番を大事に取りたい」というコメントがしばしば聞かれますが、星勘定を考えるよりも、目の前の取組に集中することに意識を傾けている?

はい。一番一番しっかり相撲を取ることが大事だと思いますので。

――『九月場所』に向けては、「いつまでも勉強と言っていられない。もっと向かっていって、自分の相撲を取りたい」という言葉もあります。心境の変化があったのでしょうか?

毎場所が勉強であることに、変わりはないんです。ただ、取組の前から負けることを考えないように、本場所前から「勉強だ」という意識を持つのではなくて、本場所が終わったあとで結果的に「勉強になったな」と思えるほうがいいという意味です。

――なるほど。

初めて上位陣と総当たりした『三月場所』では、最初から勉強だという考えが強かったかもしれません。最初から負けることを考えていたつもりはなかったのですが、とにかく初めてなわけですし、周りからも「勉強の場所だな」と言われていたこともあったので。でも、これからは最初からそういう気持ちでは臨まない、ということです。

――これまでは胸を借りる気持ちが強かったのでしょうか?

いまでも先輩力士との取組では、胸を借りる気持ちはあります。ただ、最初から「勉強だ」という気持ちでは臨まないということです。

――小さなことかもしれませんが、気持ちの持ちようで取組が変わるかもしれませんね。

いや、まだ、そういう気持ちで本場所に臨んだことがないので、結果が変わるかどうかは分かりませんが(苦笑)。

良い相撲を取っても負けたら意味がない

――遠藤関や大砂嵐関らを「次世代を担うであろう力士たち」として並び立てたり、ライバル同士として取り上げたりする報道が見受けられます。意識する力士はいますか?

いや……とくにはいないです。誰かを見下しているとか、自分に値する相手がいないとか、そういう意味ではないですよ。自分は昔から「この人はライバルだ」とか、「この人には負けたくない」とか考えるタイプではないんです。誰かを意識するのではなく、自分の取組に集中するようにしています。

――1年半前から比べて、土俵の上で見える景色が変わってきたところはありますか?

そういうものはないですね。変わったことと言えば、本場所に対する取り組み方でしょうか。本場所の間にどうやって生活をしたらいいのかが、最初の頃はつかめなかった。いまはもう、こういうふうに生活をすれば疲れがたまらないとか、そういった生活のリズムは自然と作れています。

――本場所でのリズムの作り方で、心がけていることは?

いつもと同じ生活をすることですね。睡眠と食事をしっかりとって、疲れを残さないようにする。それでも疲れを感じるようなら、お風呂へ行ったりして。特別なことはしません。

――トップアスリートが体感するゾーンのような領域に、入ったことはありますか? 相手の動きがスローに見える、声援が耳に入ってこない、といったことは?

あまり気にしたことはないですが……声援が聞こえないことは、過去にありました。どういうときにそうなるのかは、言葉で説明するのが難しいですけれど。それは本場所だけじゃなく、集中していれば稽古場でもそうなりますよ。

――遠藤関が思い描く、理想の力士像とは?

強い力士ですかね……うまいと言われる相撲も、結果的に強い相撲というか、辿り着くのは強い相撲だと思うんです。受けても強い相撲とか。良い相撲を取っても負けたら意味がないので、やっぱり理想は勝つ相撲じゃないですか。おそらく、誰もが理想はそこへ辿り着くのではないでしょうか。

――相撲の魅力とは?

勝敗がすぐに決まるじゃないですか。土俵から出たり、転がったり、手をついたりすると、負けになってしまうのが相撲です。勝敗の決め方としては単純かもしれないですけど、だからこそ数秒のなかでの攻防がある。単純だけど深い。他の力士がどう思っているのかは分からないですけど、自分はそう思います。本場所に足を運んでいただけたら、テレビとは違うものを感じてもらえると思います。

取材・構成:戸塚啓
撮影:スエイシナオヨシ

チケットぴあインタビュー 大相撲九月場所 遠藤関インタビューのページです。

INFORMATION

大相撲九月場所

【日程】9月14日(日)~28日(日)
【会場】両国国技館

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PROFILE

遠藤聖大(えんどうしょうた)

1990年、石川県生まれ。183cm、150kg。日本大学4年時にアマチュア横綱と国体横綱を獲得し、幕下10枚目格付出の資格を得る。2013年2月、追手風部屋入門。同年『三月場所』で初土俵を踏む。新十両で迎えた『七月場所』で14勝1敗の優勝。史上4人目となる十両1場所通過、幕下付出から史上最速の3場所での新入幕を果たす。『九月場所』で9勝を挙げ勝ち越し。『十一月場所』こそ6勝9敗となるが、2014年の『一月場所』で11勝を挙げ敢闘賞を受賞。前頭筆頭で迎えた『三月場所』は6勝9敗、その後、7勝8敗、8勝7敗として、『九月場所』は再び前頭筆頭となる。『五月場所』では横綱・鶴竜から初金星を挙げる。

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