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チケットぴあインタビュー

城 彰二

城 彰二
北京五輪の出場権をかけ、4ヵ月に渡る最終予選がいよいよスタートする。今回は、1996年のアトランタ五輪で“マイアミの奇跡”を起こした城彰二に最終予選の見どころを聞いた。負けられない試合が続く最終予選では、窮地に追いやられる場面も出てくる。それを乗り越える方法を、自らの体験談を思い返しつつ語ってくれた。

——北京五輪の最終予選がいよいよ始まります。初戦は8月22日(水)、国立競技場でのベトナム戦。是が非でも勝ち点3が欲しいところですが、どう予想されますか。

「正直言って、勝ち点1でも拾えたらいいと思っています。非常に厳しい戦いになりますよ。ベトナムには、フル代表としてアジアカップ(UAE、カタールを抑えベスト8進出)を経験した選手が複数います。実力的にかなりレベルが高いという印象ですし、日本としても初戦で力が入ってしまう部分はありますから」

——どうしても、圧勝での勝ち点3を期待してしまうのですが。

「ゼロの可能性だってありますよ。初戦の重要性は誰しもが認識しています。だからこそプレッシャーも大きいし、僕の経験では、こういう大会の初戦で普段通りにプレーできたことは一度もない。日の丸の重み、国民の期待、メディアの扱いと、選手には様々な重圧がかかってきます。ベトナムは勝たなければならない相手だと言われますが、アジアのレベルは上がっていますから」


——アトランタ五輪の最終予選でも、初戦はイラクと1-1で引き分けています。城さんが先制ゴールを決めたものの、追い付かれた。

「1点取った後、守りに入ってしまった。今までにない精神状態で自分を見失い、冷静さを保てませんでした。あの試合に限らず、初戦というのは得てしてそういう状況に陥りがちです。プレッシャーが視野を狭くする。あるいはシュートを打つときに、普段なら見えるキーパーとゴールがまったく見えなくなって外したり。そういうシーンは多く見られますよね」

——ベトナム戦も、決して楽観はできないということですね。

「もうひとつ懸念があります。今回の五輪世代は非常におとなしい。闘志は持っているんだけど、それをプレーで表現できていないんですよ。ですから真剣勝負になったときのメンタル面が、少し心配ですね。五輪予選は戦争です。やるか、やられるか。そういう気持ちも非常に大事ですから」

——少し不安になってきました。

「ただ、おとなしい反面彼らは非常に冷静でもあります。もしかしたら普段通りのプレーでベトナムに大勝するかもしれない。そうすればチームは勢いに乗ります。U-22という年代は、勢いに乗ったら普段以上の力を出しますから。大会が進むに連れてどんどん成長して、僕の懸念を吹き飛ばして欲しいですね」

——勢いという意味では、ひとつ下の世代(7月にカナダで開催されたU-20 ワールドカップ日本代表。本大会でベスト16進出)の合流も心強いですね。

「世界大会でいい経験をした選手たちの加入によって、上の世代が『俺たちが試合に出るんだ』と奮起しますからね。逆にU-20の選手たちは『レギュラーを奪うぞ』と考えている。ライバル意識が生まれて競争が始まると、チームはいい方向に向かうのがサッカーですから」」

——最終予選6試合の中で、窮地に追いやられる場面も出てくると思います。そういう時には、何が一番必要でしょうか。

「開き直りです」

——即答ですね。アトランタの最終予選でも、開き直った瞬間はあったんですか。

「勝てば本戦出場が決まるサウジアラビア戦ですね。試合の前に、相手のビデオを見たんですよ。普段なら、映像を見ながら『この選手にはこう対処しよう』といった話をするんですが、あの時だけはみんな黙ってしまった。サウジがあまりにも強かったから。監督も選手も無言になって、しばらく呆然として、それでミーティング終了。みんなサーッと部屋に帰っていった。そのくらいの衝撃を受けました」

——それでも試合では、早い時間帯に先制します。ゴール前でパスを受けた城さんが、前園(真聖)さんにヒールでラストパスを出した。

「相手が強すぎたから、開き直れたんですよね。リスクを負っていこうという気持ちになれた。トライしないと何も生まれないですから、ああいった意表をつくプレーが自然に出たんだと思います。でもあのチームはみんなが目立ちたがったから、リスクを負いすぎて失敗もしました。明らかに個性が強すぎた(笑)」

——それでも最後は2-1、全員でリードを守り切りました。個性派の選手たちが開き直ってリスクを負った。だからこそ、28年ぶりの五輪出場は果たされた。

「今の選手たちも、もっと『オレが、オレが』でいいと思うんですよ。ただ、彼らもいろんなプレッシャーを感じている。アトランタから3大会連続出場で、本戦に出場して当たり前という雰囲気も大きな重圧でしょう。でもそこで消極的にならずに、リスクを負ってどんどんトライして欲しい」

——トライを促すためにも、サポーターはスタンドで声を張り上げないといけないですね。

「選手は、必ずみなさんが感動するようなプレーをしてくれます。勝ちたいという強い気持ちを胸に、自分の持っているものすべてをぶつけようとしますから。その強い気持ちをさらに強めるのが、サポーターの声援なんです。みなさんの声援で選手の背中を押して、勝たせて欲しいと思います。そして感動を、勝利の喜びを、選手と一緒に味わってください」


取材・構成:中山一成(CRCC) 撮影:遠藤正太

城 彰二

城 彰二

城 彰二

城 彰二

プロフィール

1975年鹿児島県生まれ。鹿児島実業高等学校を卒業後、ジェフユナイテッド市原(現・ジェフユナイテッド市原・千葉)に入団。横浜マリノス(現・横浜 F・マリノス)を経て、レアル・バリャドリード(スペイン)、2003年より横浜FCに加入。2006年J1昇格、J2優勝に貢献し、同年現役を引退した。J1通算230試合95得点、J2通算151試合44得点。国際Aマッチ通算36試合7得点。2007年より、JFAアンバサダー・Jリーグ百年構想メッセンジャーとして全国で活動している。