――まず、大林さんの眼から見た今回のワールドカップの見所を教えて下さい。
「とにかく、今大会は北京五輪の出場権が懸かっているという点が最大の見所になりますね。それに尽きます。まだ五輪出場権は開催国の中国以外、どの国も持っていないわけで、今回のワールドカップでは男女とも全チームが北京を狙ってきますから、きっと凄い大会になりますよ」
――まず、注目の男子ですが、植田監督が就任してからかなり強くなっている印象です。期待できそうですか?
「今までになく、本当に充実している印象ですね。とにかく植田監督自身がバルセロナ五輪経験者ということで、その頃の熱く戦う姿勢を監督自身が貫き通してますから。男子はバルセロナ以降、本当にどん底に落ちた感じでしたが、植田監督、大竹コーチ、そしてキャプテンの荻野正二という“バルセロナ三人衆”が、今の選手たちに当時の熱く戦う姿勢をチームに教え込んで、みんながそれに付いてきている感じなんです」
――今大会、男子のメンバーはどんな感じになるのでしょうか?
「レギュラーが固定されてないのが特徴ですね。それほどチーム内競争が激しいということなんです。大学生の福澤達哉などは、千葉進也や越川優あたりを超えるんじゃないかと言われてますし。とにかく、12人を選ぶのがこれほど大変だという状況は、今までの男子ではあり得ないくらいなんです!」
――大林さんは、男子で鍵を握っている選手は誰だと思いますか?
「山本隆弘ですね。それと石島雄介。そして越川か福澤、荻野か千葉か、そのあたりは本当にポジション争いが熾烈です。そういう意味では、対戦相手によって色々な駒を使い分けられることが今の男子の強みなんですけど」
――女子についてはどうでしょう? 柳本ジャパンは3位以内を狙えるのでしょうか?
「もちろん! 監督も本気で狙ってます。今の女子はアテネ五輪が土台になっていて、あの時若かった栗原恵、木村沙織、大山加奈らがアテネで悔しい思いをしたことで、彼女たちは一段と成長しました。ピークはまだその先のロンドン五輪かもしれませんが、今はチーム全体が右肩上がりで、結果を出さなければいけない時期になったと言えます」
――今回のワールドカップのライバルチームとなると、どこになるでしょう?
「全部です(笑)。強豪のブラジルに勝っても、タイに負けちゃったら意味ないわけですから。11試合あって、とにかく1つでも多く勝つということです。とにかくこれまでのワールドカップで日本が五輪出場権を獲得したことはありませんし、男女とも今回は未知なる挑戦になると思いますよ」
――毎回周囲を驚かせてくれる柳本采配ですが、今回のサプライズは何でしょう?
「高校生セッターの河合由貴をメンバーに加えた点ですね。ワールドカップはヒロインが生まれるケースが多いですし、新しい風をチームに吹き込んでみたのでしょう。それと、ここで経験を積ませて、将来は竹下佳江の後継者になって欲しいという期待もあると思いますよ」
――女子のキープレーヤーは誰になるでしょう?
「エースの栗原ですね。彼女がこけちゃったら正直苦しいです。もう今の女子は栗原のチームになりましたから。しかも彼女は3年ぶりにコートに帰ってきて、色々な思いを持って今回は臨んでますしね」
――では最後に、今大会を体育館で観戦しようという方に観戦のポイントをお願いします。
「やはり世界のトップレベルのバレーを間近で見られるというのは魅力だと思うんです。男子だとサーブが120kmを超えますし、女子も100kmは超えますから、それはもう凄い迫力です。あと、通の方には日本が戦っていないBサイトの会場での観戦もお勧めしたいですね。世界のトップレベルの選手のプレーを本当に近いところで堪能できますし、場合によっては選手と話したりサインをもらったりすることも出来るかもしれませんから」
取材・文:中山淳 撮影:新関雅士
大林素子
大林素子
1967年東京都生まれ。中学1年からバレーボールを始め、中学3年の時に東京都中学選抜に選出される。その後、高校バレーボール界の名門八王子実践高校に進む。'86年、日立に入社。'88年ソウル五輪、'92年バルセロナ五輪に出場する。'95年にイタリアセリエA・アンコーナに所属、日本人初のプロ選手となる。帰国後、東洋紡オーキスに所属、'96年アトランタ五輪出場後、翌'97年に引退する。現在、日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JVA(日本バレーボール協会)テクニカル委員、VAS(バレーボールアドバイザリースタッフ)としても活動中。