――今年は『三人吉三』と『黒手組助六』と、若手中心の浅草歌舞伎では初めての"通し狂言"(歌舞伎では見どころを抜き出して上演することが多いが、初めから最後まで通して上演すること)がありますね。
亀治郎「お客様も通し狂言のほうが細かい点が分かりやすいのでは。浅草歌舞伎は初めて歌舞伎を観にいらっしゃる方も多いですし、そういう意味ではいい演目が並んだと思っております」
愛之助「例えば江戸時代だったら、物語の大筋を知っていて観に来られる方が多かったので、ひと場面を抜き出してお見せするだけでも泣けたわけですよね。でも今は、初めて歌舞伎をご覧になる方も多いと思うので、もっと深く歌舞伎を知っていただくためにも、通し狂言はいいんじゃないかと思いますね」
――ご自身の演じられるお役について、見どころを教えてください。
亀治郎「『独楽』は中学生の時に踊って以来、22年ぶりの上演となります。設定が浅草・雷門の前で物売りをするという踊りなので、ご当地でやりたかったんですよ。そして『黒手組助六』で権九郎、伝次、助六の三役早替りを初役で勤めることと、大詰の水入り(役者が本物の水につかる)が同じく22年ぶりに上演されること。水は冷たいほうが上がってから風邪を引かないそうなので、そこも挑戦です」
愛之助「『三人吉三』って、実は上方歌舞伎ではあまり上演されないんですよ。だから和尚吉三を演じるにあたって叔父の仁左衛門に聞いたら、『アウトローな若者を描いたものなんだから、若いお前たちが感じるものをやればいいんじゃないか』と。そういう舞台を勤められることが、浅草歌舞伎に参加させてもらう面白いところです。『壷坂霊験記』は、夫婦の情愛を描いた作品で、盲目の男の目が開くところが難しい表現ですが、叔父の我當に習ってしっかり勤めたいと思います」
取材・文:佐藤さくら 撮影:源 賀津己
▼新春浅草歌舞伎
1月2日(日) ~ 26日(水) 浅草公会堂 (東京都)
[出演]市川亀治郎 / 片岡愛之助 / 中村七之助 / 中村亀鶴
□発売中
市川亀治郎
片岡愛之助