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チケットぴあインタビュー

『黴菌』 北村一輝

『黴菌』 北村一輝
演出家の駒になるより、 演出家とコラボしたい。

 あまりにも整った顔立ちは、役者にとって時にマイナスになる。顔の印象があまりに強いと、演じる役の幅を狭めてしまうから。ところが北村一輝は、どんな役でもカメレオン的に演じてしまう。そこには事前のリサーチや研究など、徹底的な集中がある。

「そういうことはやって当たり前だと、僕は思っています。俳優に限らず、どんな仕事でも表面をこなせるだけでは続かない。でもよく考えると、僕がそうするのは、人よりも自信がないからかもしれないです。自信を持つためにできる限りの下準備をするし、それが苦痛ではなく楽しいということで」

 そうした努力を積み重ねてきた人が、今、大きな変化のときを迎えている。

「最近、長期休暇を取りました。のんびりした時間の中で、自分を見つめ直して残ったのは"楽しみたいな"という気持ちでした。いままでの僕は"この作品にはこれが必要、自分にはこれが足りない"と客観性によって動いていたところがあった。でももっと感性に頼って、無茶苦茶に前に進むやり方をしてもいいんじゃないかなと。きれいに型にはまるより、はみ出してもいいから楽しみたいという気持ちが、いまとても強く湧いています」

 このタイミングで取り組むのが、約3年ぶりとなる舞台『黴菌』。作・演出は、人気劇作家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)。昨年、Bunkamura開場20周年の最後を飾った『東京月光魔曲』から続く「昭和三部作」の第二部に位置付けられるが、完全に独立した作品。昭和20年代半ばの東京を舞台に、ある富豪の屋敷で起きる事件をサスペンスタッチで描く作品になるらしい。KERA作品の大きな特徴は、笑いが随所に散りばめられながらもスタイリッシュで、説明めいたせりふはないのに登場人物の心の動きが強く刻まれること。

「独特の世界観ですよね。これまでなら、演出家の駒になってその世界に入り込むことがプロの仕事だと思いましたが、今度はコラボしてみたいという感覚です。KERAさんがどういう演出をなさるのかわかりませんが、早くそこに身を置いてみたいですね」

 完成台本よりも、稽古のスタートをわくわくしながら待っている。新しい北村一輝が立つ舞台を、私たちも早く観たい。



プロフィール
きたむらかずき●1969年、大阪府生まれ。99年公開映画『皆月』と『日本黒社会 LEY LINES』でキネマ旬報新人男優賞等を受賞。以降、広く注目を集め、『夜王』『天地人』『宿命1969-2010』など数々のドラマ、映画に出演。端正なルックスとどんな役でも説得力を持たせる演技力で高い評価を得る。

取材・文:徳永京子 撮影:本房哲治
ヘアメーク:山本絵里子、浅沼靖、池田美香
衣装:東宝コスチューム


▼「黴菌」
12月4日(土) ~ 26日(日) シアターコクーン(東京都)
[劇作・脚本・演出]ケラリーノ・サンドロヴィッチ
[出演]北村一輝/仲村トオル/ともさかりえ/岡田義徳/犬山イヌコ/みのすけ/
    小松和重/池谷のぶえ/長谷川博己/緒川たまき/山崎一/高橋惠子/生瀬勝久
□プレリザーブ:9月22日(水) 11:00 ~ 9月26日(日) 11:00  一般発売:10月2日(土) 10:00