チケットのことならチケットぴあチケットぴあ

こんにちは、ゲストさん。会員登録はこちら

チケットぴあインタビュー

劇団鹿殺し「僕を愛ちて。-燃える湿原と音楽-」 丸尾丸一郎×菜月チョビ

劇団鹿殺し「僕を愛ちて。-燃える湿原と音楽-」 丸尾丸一郎×菜月チョビ
劇団鹿殺し。一度聞いたら忘れない名前のインパクトである。舞台を埋め尽くす壮大なセット。動きの多い肉体派の演技。ロックがガンガンに流れ、役者がシャウトする。フルボリュームの生演奏で迫ってくる楽隊の存在。まさにケレン味たっぷりの芝居だが、ストーリーはどこか、心の琴線にそっと触れる繊細さが見え隠れする。荒ぶる魂と傷だらけのハートを持つ劇団が、結成10年、満を持して、本多劇場に初進出である。作品は、2008年の自信作「僕を愛ちて。」作家・役者の丸尾丸一郎と、演出・役者の菜月チョビに話を聞いた。

――振り返って、どんな10年でしたか?



丸尾丸一郎「計画や目標を立てて、少しづつ実現していく。そういう10年でした。関西で旗揚げして、3年目に「東京へ行こう!」と目標を定めて5年目で実現。芝居だけで食べて行きたいと思い、路上パフォーマンスでその目標をクリアして。あっという間の10年でした」



菜月チョビ「むずかしかったのは、劇団員の出入りがあったこと。そのたびに、劇団らしさとは何かを考え直すことが必要だった。東京で5年間、やっとかたちになってきた。10年間、「やりたいことをメンバーに伝える」ということに力を割いてきたので、力を入れなくてもそれが伝わる関係にあこがれますね」



丸尾「根がまじめなので、友だち感覚ではやっていけないんです。仲よく、ではなくて、目標に向かってストイックにやる団体なので。だからメンバーも変わっていく」



菜月「勝ち負けや、白黒をつけたがる(笑)。稽古場で、客演の人も交えて、絆を深めるためにゲームをやるじゃないですか。そういうときも、きっちり点数つけます。「そこまでちゃんと点数つけますか?」って、客演の人によく言われます(笑)」



――これからの10年は?



丸尾「サンシャイン劇場(客席数816席)以上の劇場で、コンスタントにやれるようになりたい。作品のスケールもそうですし、劇場のサイズもそう。それにトライする劇団でなくては。観客動員の分母を増やしていかなければいけないと思う」



菜月「ラスベガスで見たシルク・ド・ソレイユ、あれが目標です。作品、演出がすばらしい。ベガスで観た「LOVE」はかっこよかった。意外にアナログな表現方法なんですよ、シンプルな舞台。演劇の根本だと思うんです。観る人のテンションを上げる、元気にする舞台なんです」



――でも、鹿殺しの芝居は、パフォーマンスではなく、ドラマ性がきっちりありますね。



丸尾「自分の経験をもとに台本を書いている。次の10年は、経験ではなく、架空の世界を書けるかが勝負。チャレンジしなきゃいけないです。ストーリーと演出ががっちり噛み合って、(テンションを)上げるところは上げて、落とすところは落とす。物語の強度をより強くして、スケール感を手に入れたい。ストーリーから離れるつもりもないです」



――「僕を愛ちて。」、2007年初演の作品の再演版です。



丸尾「「僕を愛ちて。」というタイトルから入った作品。生きていくうえで大切なことは、「愛してもらいたい」ということ。ぼくが一番だって言ってもらいたい。自分を突き動かす気持ち。そういう気持ちを込めたタイトルです。作品の中にも男兄弟が出てきますが、ぼくは、実生活でも男の兄弟がいます。男の兄弟って、切っても切れない絆というか感情があるんだと思う」



――作品の舞台が釧路なのはなぜ?



「大学のときに2回行ったことがあります。観光地なのに閉鎖的な気がした。閉鎖的な土地を舞台にして、男兄弟が愛されたいと思う物語を書いた。これも、大学のときの経験から出てきたモチーフです」



――初演版とは異なる点はどこですか?



菜月「初演のときの3倍の人数が出演します。だから、もはや新作と思ってください。粟根まことさんの父親と、息子がふたり。母なる愛を見失った3人の芝居。初演のときとアプローチを変えています。バンドのシーンは、ロックバンドとしてのパフォーマンス。もうひとつ、それとは別に、楽隊が出てくる。楽隊は、派手で和のテイスト。アコースティックなんだけどロック」



丸尾「音楽は丁寧に作りたいですね。試行錯誤が必要。本多劇場に負けない音圧。ずっとやりたかった劇場ですからね」



菜月「本多劇場は、劇場らしい劇場。ロビーがあって、階段があって、芝居を観に来ました!という気持ちになる」



丸尾「本多劇場で観る芝居は、おもしろくないときと、おもしろいときがはっきり分かれる気がします。きちんと見せられないと、後戻りしてしまう。本多劇場を埋められれば、次の挑戦権が得られる。ここを使いこなした作品を見せたいですね」





▼劇団鹿殺し「僕を愛ちて。-燃える湿原と音楽-」
1月15日(土) ~ 23日(日) 本多劇場(東京都)
[出演・劇作・脚本]丸尾丸一郎
[出演・演出]菜月チョビ
[音楽]入交星士
[出演]オレノグラフィティ / 山岸門人 / 橘輝 / 傳田うに / 坂本けこ美 / 高橋戦車 / 粟根まこと / 廣川三憲 / 森貞文則 / 谷山知宏 / 西田夏奈子 / 加藤裕 / 他
□発売中