幕末を舞台に、無名の若者たちが真実を求め葛藤する姿を描いた『TRUTH』は、キャラメルボックスの代表的な作品のひとつ。この作品が9年ぶりの再々演を果たす。それと同時期に上演されるのが『TRUTH』の登場人物の一人、長谷川鏡吾の若き頃を描く『涙を数える』。今作に出演するキャラメルボックスの劇団員・多田直人と、客演の辻本祐樹、池岡亮介の3人がチラシ撮影以来の集結。演劇の話からプライベートまでたっぷり話を訊いた。
多田直人
――最初に『涙を数える』の話を聞いたときはどう思いましたか?
辻本祐樹: はじめマネージャーから、あのキャラメルボックスの客演と聞いた際は、「え、なんで!?」と驚きましたね。僕は最近、上川(隆也)さんとご一緒する機会が何度かあって、それにもご縁を感じました。憧れのキャラメルボックスに出演させて頂けますのは、大変嬉しいです。
池岡亮介: キャラメルボックスの芝居は、同じD-BOYSの上鶴徹さんが出演していたのを拝見していますが、僕自身は客演が初めてなので、どんな顔して参加したらいいかわからないです(笑)。時代劇も、テレビ番組でコメディっぽいものをやったことはありますが、舞台では初めて。以前から憧れはあったので、すごくうれしいです。
多田直人: 僕は劇団のなかで時代劇にキャスティングされることが多い方ではなかったので、公演が決まったときも「観られるのが楽しみだな」という思いしかなくて、まさかチラシに自分が載ることになるとは(笑)。『TRUTH』という作品のエピソード0的なものをやるというプレッシャーと、キャラメルボックス夏の時代劇の真ん中に立たせてもらえるプレッシャーとで、責任感がけっこうのしかかっている状況ですね。
――多田さんはおふたりを迎える立場になるわけですが、参加するに際してアドバイスのようなものはありますか?
多田: 辻本くんには時代劇の経験を存分に発揮していただいて、僕たちを引っ張っていってほしいです。
辻本: 経験があるといってもドラマがほとんどですし、舞台はまた違うと思いますから…。そんな…。
多田: でも何人も斬ってきたでしょう?
辻本: 斬りましたねえ(笑)。斬りましたし、斬られました。
多田: 池岡さんは『十二夜』(青木豪演出)でどんどん笑いをとっていたイメージが強いんです。その調子で稽古場の中心にいてくれたら。
池岡: いや、ふだんは本当に普通なんです、僕は。
多田: いちばん年下だよね、いくつだっけ?
池岡: 20歳です。
多田: キャスト全員の中でもバリバリ最年少だ!じゃあもうベタベタに甘えてもらって、マスコット的存在として稽古場を明るくしていただけたら。
――この3人が顔を揃えるのは宣伝写真の撮影以来と伺っていますが、お互いの印象をお聞かせいただけますか?
池岡: 僕が出演していた『ミュージカル テニスの王子様』(2ndシーズン)の最初のシリーズに辻本さんが出演されていたんです。しかも「2nd」で辻本さんと同じ役を演じていた方がすごく辻本さんに似ていたので、勝手に親近感があります(笑)。多田さんはチラシの写真撮影のときにとても和やかな雰囲気をつくってくださったので、ちょっと肩の荷が軽くなった感じがしました。そのときいちばん印象的だったのが、多田さんがすごく厚着だったこと。
多田: (笑)。みんながよく“寒い”っていうのは、着てないからだろって思うんですよね。
池岡: その時もまったく同じことを言われました(笑)。
辻本: 多田さんは頼りがいがありますよね。ついていきたい!って思います。最近少しずつ引っ張る側に立つことが増えてきて、「みんな俺に質問しないでくれ!」という気持ちなんです(笑)。多田さんをはじめとしてキャラメルボックスのみなさんは舞台経験を重ねた先輩方が多いので、ついて行こうと思います。池岡くんは、かわいらしいですよね。こんな時代が僕にもあったのかな……。でももちろん役者として学ぶ部分もあると思うので、一緒に頑張っていきたいですね。
辻本祐樹
――舞台や映像と、それぞれ活躍されているみなさんですが、ふだんの役へのアプローチ方法を教えてください。
辻本: 僕は、相手のセリフに対して返すことだけを考えています。もちろん自分の役の流れとかお客さんにどう見せたいかというポイントは押さえながら、相手がどう来るかで、それにどう返していくかというところをお互いで作っていく感じです。
池岡: そうですね、作品によって全く違いますね。演出家の方に引き出してもらったなという時もあれば、自分から提案できているなとか。前もって準備するとガチガチに固まってしまうので、ふにゃふにゃな状態で挑んでいます。今回は着物を着るので、どう見えるかは考えています。現代の若者は細いから、着物を着るとき、身体にタオルを巻くんですよ。その細さをなくすために、体づくりができたらと。
多田: けっこう太んなきゃいけないよ? だいぶイメージ違っちゃうかも(笑)。
辻本: 本当に、タオルでぐるぐる巻きにされますよね。でも着物って背筋がピンと伸びるから自然と姿勢がよくみえる。
多田: こんなかっこうして刀を差して、いつ死んでもおかしくないという気持ちの若者が百数十年前にいたのを疑似体験できるのはやりがいがあるし、着物を着ると、そういう気持ちが本能的によみがえってくる気さえするよね。
池岡: そうですよね。所作はまだ身についていないけれど、ちゃんとしないとって思う。あと、刀を振り回してみたい(笑)。
多田: わかる!長い棒を持つとそうしたくなるよね、男って。
辻本: ありますねー。
池岡: 小学校でもほうき持ったらもう絶対ですよね。
多田: そうだね(笑)。僕はメインと脇役とで役へのアプローチは違うんです。脇のときには、役者としては邪道なんですけど、とにかく外側からつくっていく。喋り方、姿勢、声の色。そして気持ち後乗せ。特にキャラメルの役者って気持ちから入るタイプの劇団なので、すごく異端だと思うんですよね。ただメインをやらせてもらうようになってからは、役を外側から作っても仕方ないなってことが何回かあったので、もう自分としてストンとそこにいて、起き上がりこぼしのようにどれだけ周りの演技を受けられるかだと思っています。
――じゃあ辻本さんと池岡さんはどんどん仕掛けていいんですね!?
多田: もちろんです。
池岡亮介
――ではプライベートのことを少し。皆さんの趣味を教えてください。
多田: いいですね~、こういう話を通じてわかり合うっていうの。
辻本: 僕、それがいちばん苦手な質問です。無趣味なんです。本当にテレビっ子なだけなんですよ。丸一日、ずっとテレビ見たり、たまに映画館に行ったり。映画は派手なものが大好きで、テレビは海外ドラマをずっと観てますね。
――好きな俳優は?
辻本: ヒース・レジャーさんがすごく好きです。『ダークナイト』で役に入り込んで亡くなってしまったその役者としての生き様がすごいなって。僕は役を引きずらないほうなので……。あ、趣味か。あとはスキューバの免許を最近とりました。
多田: おおー、アクティブ!スポーツは何かやってらっしゃったんですか?
辻本: 急にインタビュアーみたいに(笑)。バスケットボールと、『ウォーターボーイズ』という作品に出たのをきっかけに水泳を少々。
池岡: あ、スポーツは僕と一緒です!バスケットと水泳やってました。
辻本: 共通点見つかったね。
池岡: 僕は趣味といえば散歩なんです。ひたすら歩いて、猫と心を通じ合わせたり。
多田・辻本: (笑)。
――じゃあ猫をなつかせるのは得意なんですね?
池岡: でも猫アレルギーなんですよ。
多田: なんだよ(笑)。
辻本: 全然通じ合えないじゃん(笑)。
池岡: 触れられないからこそ、目で対話するんです。歩いてる家族とか見て泣きそうになります。
多田: なんか……大丈夫(笑)?
池岡: たまに自分でも大丈夫かなって(笑)。家族連れの姿を見るだけで携帯を取り出して写真に収めたくなる。ほのぼのしていて、気持ちがほんわかするんですよね。あとはお酒です。散歩終わりで一人でふらっと飲み屋に立ち寄って。
辻本: ウソでしょ!? 一人で?
多田: おじいちゃんなの(笑)?
辻本: そこは自分とは逆だ。一人でうろうろできないし、一人でお店も入れないし。うらやましいな。
多田: 行動的だよなー。僕はテレビゲームを……。自分でやるんじゃなくて、サッカーとか野球のゲームを買って、コンピューター同士で戦わせておくのが好きなんですよ。それを見ながらパソコンでもゲームして、その合間にスマホのゲームやって、PSPとか3DSもやる。そしたらパソコンのゲームもテレビゲームの試合も終わってるからそっちを進めて……。そのサイクルでずっと家にいます。
辻本: すごい。ここまでの方は初めてお会いしました。
池岡: なんかギャップでもあり、しっくりくる感じもあって、愛らしいです。
――では最後に舞台への意気込みをお聞かせください。
辻本: キャラメルボックスファンのイメージをいい意味で壊せるような、楽しんでいただけるような作品づくりを稽古場でやって、本番で暴れたいと思います。劇場でお待ちしております。
池岡: サンシャイン劇場という大きな舞台で時代劇をやらせていただけることにまずは感謝しています。作品を通じてその感謝の気持ちを伝えられたら。最年少なので勉強させていただくことが多いと思いますが、「若い子がいたね」で終わらないよう、作品に溶け込めるように頑張ります。
多田: 1週間くらい前に初演の『TRUTH』をDVDで見たんです。とにかくみんなが熱くて、ウザくて(笑)。と同時に、すっごく面白かった。昔は一人ひとりが国のことを思って熱かったんだろうな、これって必要だよなって思いました。真夏に舞台でしか体感できないような、客席で観ているお客様も熱気にあてられてしまうくらいの熱をもって臨みたいと思いますので、それをぜひ浴びに来ていただけたらと思います。