──筧さんにとっては3回目の『広島に原爆を落とす日』だそうですね。
「最初は‘82年に劇団☆新感線でやって、それは僕がつかさんの作品に初めて触れた芝居なので思い出深いですよ。それからしばらくして今回演出する岡村(俊一)君のプロデュースで小劇場の役者をいっぱい寄せ集めてやったもの('89年、ペーパーカンパニープロデュース)があって、今回で3回目です。ただ今回はその台本のままじゃなくて小説版をもとに一から立て直して作るので、ほとんど新作といっていい内容になるんですけど」
──もちろんフィクションではありつつも、広島への原爆投下という事実をモチーフにした強烈すぎるラブストーリーですよね。過去に演じてみて、どんな思いを抱きましたか?
「若い頃は意味なんかわからず、何も考えないでやってるから……。まあ、愛する女性一人のために他の何十万もの人間を犠牲にしてもいいというような覚悟をぶつける男の意気込み。そしてそれを受け取る女性の、歓びのようないろいろ深い思いが交錯する何かっていうところがこの作品の一番のポイントなんだろうけども……。うーん、言葉では説明ができんなあ(苦笑)。つかさんの作品は、あまりつじつま合わせようと思ってやったり観たりするものでもないような。つかさん自身、役者に口立てしているセリフの内容がさっきと今で違っていることがよくあります(笑)。でも人間ってそんなものだったりしますけどね」
──この作品で出会って以来、つか作品に数多く出演していますが、どんなところに強い魅力を感じますか?
「観客としての感想で言うと、映画のような醍醐味を演劇で感じるんですよね。役者の動き、しゃべらせ方、照明、選曲……などが全部重なったときの味が本当に絶妙で、僕が思うつかさんの凄さはやっぱりその“混ぜ合わせ感”。ぴったりくる言葉が見つからないんだけど、やっぱり“芸術”なんですよね。ああいうちょっとひりついた感じの空間芸術の作り方は、僕が思うにつかさんしかできない。だから岡村君が演出する今回は、そういったものをお借りしつつ岡村ワールドで作り上げられる、また違った芝居になると思う。でもその核の部分がちゃんとわかっていれば、つか作品は受け継がれるということなんでしょうね」
取材・文:武田 吏都 撮影:源 賀津己
▼『広島に原爆を落とす日』
8月6日(金) ~ 22日(日) シアターコクーン(東京都)
8月27日(金) ~ 29日(日) 森ノ宮ピロティホール(大阪府)
[劇作・脚本]つかこうへい [演出]岡村俊一 [監修]杉田成道
[出演]筧利夫/仲間リサ/リア・ディゾン/大口兼悟/馬場徹/武田義晴/山本亨/山口紗弥加/他
□7月4日(日)10:00 一般発売
★先行実施中