――不測の公演中止から短期間のうちに、朗読『宮沢賢治が伝えること』という全く新しい作品の制作に漕ぎ着けたことにまず驚かされました。
必死でした。約2週間で新たな企画をまとめ、上演めどを立てなければ全てが白紙に戻る。そんな状況下で思いついたのが詩の朗読です。実は自社所属の俳優が震災へのチャリティ朗読公演をやろうという別の企画があって。そこから「バージョン・アップした朗読の舞台ができるかも」と発想したんです。
既に芝居づくりを共有している方、いつか一緒にやろうと約束していた方。私が表現者としても人としても信頼している方々に、直接会ってお願いすべく連絡を取りまくりました。結果、お忙しい方ばかりなのに皆さんOKをくださり、さらに演出の栗山民也さんにも変更を飲み込んだうえで作品を引き受けていただけたんです。
――これまでの舞台づくりを介して得た信頼が、形として見えた瞬間ですね。
そんな客観視できる余裕はありませんでしたが(笑)、いくら感謝してもし足りないほどの運の良さと幸せは噛み締めました。
――朗読する作品を宮沢賢治のものに絞り込んだ理由は?
詩の朗読に決まった時点で栗山さんからも作品のご提案はいただいたのですが、うちは05年の「愛・地球博」で演出家・音楽家のJ.A.シーザーさんと『群読叙事詩劇・一粒の種』という舞台を創ったことがありまして。台本に賢治の『雨ニモマケズ』などが入っていた。その場面が実に素晴らしかったんです。声に出すことで力強く迫ってくる言葉を紡ぐ詩人だと認識を新たにしました。その時の感激が蘇り、私から賢治の作品をと言い出したんです。
しかも文献など読むと宮沢賢治の生没年は明治と昭和、それぞれ三陸地方が巨大地震による津波で多くの死者を出した年だと分かった。そんな発見により、この企画を進める確信を強めることができました。
――題材と企画、人間が呼び合ったようですね。
そうですね。出演者は日替わりですが何か芯を通したほうが良いと思い、ベースを担う男優をひとり固定し、そこに毎回新たな男優&女優が加わる3人構成にしました。朗読は、戯曲を演技によって立体化する通常の演劇とは違う。言葉に客観性を持ち、感情に溺れず読むほうが観客にリアルに感じてもらえる表現なんです。そういうことに精通した栗山さんという一流の演出家のもと、俳優の方々にはこの舞台が新たな表現に出会うチャンスになるかも知れない。企画を立てる時は良い作品にすることはもちろん、参加して下さる方たちの今後に繋がるプラス・アルファも、つい考えてしまいます。
私の仕事は俳優だけでなくプランナー、演出家までをプロデュースすること。だから作品を良くするためなら全員と対等に話し合い、自分の意見もはっきり提示しなければいけない。お客様に対して作品の最終的な責任を取る仕事ですから、そういう姿勢が不可欠だと思っています。こういうことすぐ言うから、ウルサいと思われちゃうのね、私(笑)。
▼朗読「宮沢賢治が伝えること」
5月9日(水) ~ 6月3日(日) 世田谷パブリックシアター(東京都)
※出演者など公演情報は特設ページをチェック
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