――翻訳劇の演出には以前から興味を持っていたのですか?
「いえ、僕も翻訳コメディに対して、"おしゃれで皮肉っぽい笑い"のようなちょっと敷居が高いものという印象を持っている一人でした。なのでお話をいただいたときはできるのかなあという思いもあったんですけど、この作品をブロードウェイで観たとき、現地のお客さんがまるで「ドリフ大爆笑」の客みたいに、終始ガハガハ笑っていて(笑)。それを見て、この作品を日本でもガハガハ笑えるものにすることにトライしてみたいなあと思ったんですよね」
――"コント作家"マギーさんから見て、この作品の面白さはどんなところにありますか?
「日本でもウケるなと思ったのは、非常にオーソドックスな、キャラクターに根ざした笑いであったこと。だから翻訳コメディによくある文化の違いでわからないような笑いは皆無に等しかったんです。まずお話自体、ある子供のケンカの被害者と加害者の親同士が話し合うという設定で、それって別にフランスじゃなくても、日本の団地でだってあり得る身近な題材ですよね。ヴェロニクだアランだ言い合ってるけど、演技形態まで外国人みたいにやらなくてもいいし(笑)、『山田さんとこの奥さんと田中さんとこの奥さんがなんかエラいことになってるなー』って風に見えたらいいなと思います」
――それにしても、贅沢なキャストが揃いましたね。
「自分が出会った素敵な役者さんってみんな謙虚で、演出家の言葉にすごく耳を貸すんですよね。そういう方たちには『なんでも言って』っていう間口の広さがあって、こっちから投げると『わ、こんなのが返ってきた』っていうキャッチボールができるのがすごく楽しくて。大竹さんと秋山さんを演出するのは初めてですけど、お2人とも絶対にそういう懐の深さを持っていらっしゃると思うんで、「こうなったらどうなります?」「こんなんどうでしょう?」っていうキャッチボールを稽古場でたくさんして、笑いについても深いところまでやりたいですね。ほんとに4人がほぼ出ずっぱりでポンポン掛け合いながら、90分間ぶっ通しでケンカを見せるような感じなんです。この4人全員がいろんな手数、いろんな技を次々繰り出していくバトルになるので、面白くならないわけがないと思いますよ!」
取材・文:武田吏都 撮影:源賀津己
▼「大人は、かく戦えり」
2011年1月6日(木) ~ 30日(日) 新国立劇場 小劇場(東京都)
2011年2月5日(土) 名鉄ホール(愛知県)
2011年2月11日(金・祝) ~ 15日(火) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪府)
[出演]大竹しのぶ/段田安則/秋山菜津子/高橋克実
□一般発売:11月13日(土) 10:00