――ラッパ屋と"モテ"というのが新鮮な組み合わせですね。
「"モテ"の物語ではあるけれど、やっぱりテーマとしては"オヤジ"なんですよ。なんだかモテるということが流行ってますよね。モテ期とかモテ服とか。照れずに『モテたい』と言えるようになってきたのかな。若者はそのための努力を堂々とする。オヤジもモテなきゃいけない気になってるかも」
――そんな風潮を鈴木さんはどう見ていますか?
「若い世代は僕らオヤジ世代よりも、目標に向かって正しい努力を無駄なくする、ということを心がけている気がします。世間的なサクセスを追いかける人も、無理しないで自然体で暮らしたいと思う人も。僕らは行き当たりバッタリだったけど、若者は目標に向かって無駄なことをしたがらない。それが"モテ"ということにも表れてる気がする」
――"肉食系"だけでなく、森ガールと言われる層も選ぶ服や物ははっきりしてますもんね。
「バラエティ番組のひな壇芸人さんみたいに、誰もがキャラを立てないといけない気分ですしね。気のきいた若者は、はっきりした目標をもつキャラの立った何者かになろうとしてると思います。そうじゃないと埋もれちゃう、という危機感で。オヤジ世代はもっと無自覚でしたね。仕事をこなしていく年月の中で徐々に自分のキャラが立っていった。世間や、時代や、周囲の人々との共同作業みたいな感じで」
――そんな、ある意味"無自覚なオヤジ"が急にモテ始めると…。
「強気になって、次に立ち止まって、『会社員』や『中年男』だけではない自分を見つめます。そこで初めて自問する。『俺って何?俺の目標は?』(笑)。不倫ドラマではなく、恋をきっかけにやっと目覚めたオヤジが、新しい人生をつくろうと七転八倒するお話にしようと思います。だから主人公はバツイチという設定。胸を張って恋愛ができる境遇ということで」
――ラッパ屋の客席の年齢層が幅広いのは、そういった登場人物への共鳴が大きい気がしますね。
「特に中高年の方に、マスメディアではなかなか見つからない、自分が面白いと思うものを見つけようとする人が増えたのかなとも思います。僕自身会社勤めをしていたから思うんだけど、会社で起こることって本当に面白い。だからそんな経験をしてきた人たちにも納得してもらえるものを書けたらいいなって思うんですよ」
取材・文:佐藤さくら 撮影:星野洋介
▼ラッパ屋「YMO~やっとモテたオヤジ~」
12月18日(土) ~ 26日(日) 紀伊國屋ホール(東京都)
2011年1月8日(土) ・ 9日(日) 北九州芸術劇場 小劇場(福岡県)
[出演]おかやまはじめ/三鴨絵里子/俵木藤汰/岩橋道子/福本伸一/木村靖司/大草理乙子/宇納佑/熊川隆一/岩本淳/武藤直樹/中野順一朗
□一般発売:11月6日(土) 10:00