――12月の武者小路実篤作『その妹』では大正時代の美しい日本語が印象的でした。今度は18世紀フランス貴族を描いた三島由紀夫の代表作。舞台のセリフ劇が続きますね。
「今まで私、セリフを「聞かせる」ことをしてこなかったんです。映像では普段の会話のようなリアルさを追求していて、セリフの「てにをは」までこだわることがあまりありませんでした。そんな私がセリフ劇に挑戦するなんて大丈夫か、と(笑)。ただ、『その妹』の千秋楽で、セリフのしゃべり方を変えてみるという挑戦が出来たのは自分の中では収穫でした。」
――最後まで「攻め」で行けた、と。
「ハイ、舞台に関しては失うものは何もないという強みがあるので(笑)。今度の『サド侯爵夫人』ではセリフを「歌う」必要があるかもしれないと(演出の野村)萬斎さんもおっしゃっていましたし、セリフを聴いていただける技術を習得しなければと思っています。『サド侯爵夫人』というタイトルだけれど、主役はサド侯爵。舞台と客席の間に、見えないサド侯爵が想像できるものにしないと。余計な言葉も足りない言葉も何もない、読み物として完成された作品なので、萬斎さんからは「言葉に縛られましょう」「言葉の緊縛です」とも言われていて。」
――おお……何だかエロティックな。蒼井さん演じるルネは、放蕩の限りを尽くす夫のサド侯爵をひたすら待ち続ける貞淑な妻ですね。
「全3幕の間に、「貞淑」という響きが変化して聞こえてくるといいなと思っています。三島さんがあとがきにも書いているように、この作品ではルネのお母さんが「道徳」、妹のアンヌが「無邪気さと節操なさ」というように、誰かが何かを現しているんですね。その中でルネが体現する「貞淑」という言葉の先入観がどんどん壊れていくお話だと思うんです。」
――ほかに萬斎さんからはどんなお話が?
「「貴族ごっこ」だと思ってオーバーに話してください、とおっしゃるのが印象的でした。でも性格が地味なもので、「歌い上げる」というのが苦手なんです。コレ!という決めゼリフを外して言いたがるクセがあって。その自分の弱さと向き合う期間だなと思っています。去年から今年にかけては苦手なことに挑戦する「苦行の年」にしようと思っていたので、その中でもヤマ場になりますね。名人芸は白石加代子さんや麻実れいさんといった素敵な先輩方を見ていただいて、私はもう玉砕覚悟で(笑)、懸命に生きている姿を見ていただければと思っています。」
▼「サド侯爵夫人」
3月6日(火) ~ 20日(火・祝) 世田谷パブリックシアター(東京都)
3月24日(土) ・ 25日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪府)
[劇作・脚本]三島由紀夫 [演出]野村萬斎 [出演]蒼井優 / 美波 / 神野三鈴 / 町田マリー / 麻実れい / 白石加代子
■一般発売:1月29日(日) 10:00
撮影:篠山紀信