――まず、本作の上演が決まった時のご感想はいかがでしたか?
水谷「まさか自分が於継をやることになるとは、考えたこともなかったので驚きました。杉村春子先生や山田五十鈴先生、淡島千景先生の素敵な於継を、嫁の加恵を演じながら見てきましたので、台本の読み合わせをした時には気後れのしっぱなしでした。これからお稽古を通して、私らしい於継を探っていきたいと思っております」
波乃「この作品といえば、父(先代の中村勘三郎)が原作を読んであまりの面白さに、青洲役に決まっていた中村富十郎さんに電話して、『俺が出るから』って強引に出演を決めたという逸話があります(1973年の新橋演舞場公演)。私も初演(1967年、芸術座)からほぼ全ての上演を観ているくらい大好きな作品ですし、今回もぜひ成功させたいですね」」
三田村「僕は最初にお話をいただいて、まず新派の舞台に立てることが嬉しくて震えてしまいました。それに初演の頃といえば、ちょうど上京して劇団の入団試験を受けては落ちて……と、役者になりたいと燃えながらもなかなか叶わなかった頃。当時の勢いを青洲の志に重ねて演じられたらいいなと思っています」」
――嫁と姑の対立というのは、いつの時代にも気になるテーマですが……。
水谷「於継にとって加恵は、自分が望んで迎えた嫁なんですね。一番大切な人だったのに、青洲が京都から帰ってくると、於継の中で何かが変わってしまう。"夫婦"が出来あがって自分の居場所がなくなってしまい、可愛さが憎さに。その不思議な心の動きを、どうとらえてお客様に伝えていくかというのが難しくて、初日までの課題ですね」
波乃「父が青洲の時、於継は杉村先生、加恵が先代の八重子先生だったのですが、おふたりがさまざまな工夫を凝らして演じてらしたのを覚えています。そういう女優同士の緊張感というのも、この舞台の見どころですね。今回は、ケンカはすれど姉妹のようなお姉ちゃま(水谷)と私ですから、舞台では嫁姑として火花を散らすようにしなくてはと(笑)」
三田村「たとえばテレビドラマなどではただの嫁と姑のケンカに終わりそうなところも、それ以上の深みをもって描かれているのが、この作品の素晴らしいところなんです。その間で右往左往しそうな青洲も、ふたりの間でどんと構えているところがすごい。研究に没頭して周囲に無頓着なタイプなのかとも思いますし、知り合いの学者さんを観察して、役作りに生かしたいと思っているところです(笑)」
――ふたりの戦いは終盤、意外な展開を見せますね。小陸や、青洲の姉の於勝も、それぞれ女の業を背負って生きている。その描かれ方がなんとも魅力的です。
水谷「小陸が大好きなんです。最初からふたりをじっと見ていた、作家の目ですよね。"加恵さんはお母はんによう似て来ました"。ドキッとします」
波乃「本当の意味で勝ったのはどっちだったのかしらって、ハッとさせられますよね。演じるにあたって、自分の中にある"女"の部分を意識するかは……どうかしら(笑)。でも舞台に上がったら、ね。加恵として、その部分もお見せできればと思っています」
三田村「本当に完成度が高くて、これほどの脚本にめぐり合えることはなかなかないと思うくらいの作品。プレッシャーもありますが、今はワクワクする気持ちでいっぱいです。心して挑みますので、ぜひお客様にもこの作品の面白さを観て、感じていただきたいですね」
『華岡青洲の妻』
六月新派特別公演
6月4日(月) ~ 23日(土) 三越劇場 (東京都)
松竹新派特別公演
6月28日(木) 大垣市スイトピアセンター 文化ホール(岐阜県)
7月1日(日) 一関文化センター 大ホール(岩手県)
7月4日(水) 森町文化会館 大ホール(静岡県)
7月6日(金) 知立市文化会館 かきつばたホール(愛知県)
7月7日(土) 能登演劇堂(石川県)
[作]有吉佐和子 [演出]戌井市郎 / 齋藤雅文 [出演]水谷八重子 / 三田村邦彦 / 波乃久里子 / 丹羽貞仁 / 瀬戸摩純 / 井上恭太 / 甲斐京子 / 高橋よしこ / 小泉まち子 / 柳田豊
左から、波乃久里子 、三田村邦彦、水谷八重子
水谷八重子
波乃久里子
三田村邦彦