――今回、新たに演劇活動をされる中で、改めてOOPARTSをプロジェクト名としてつけられたのは?
「年も年なんで、気負った感じはないんですが、もう一度お芝居をやろうかというときに、新しい名称をつけるイメージができなくて。OOPARTSという名前でやるということは、表現悪く言うと“借金返済”みたいな(笑)。(演劇活動で)やり残してきたことに対して、もう1回ちゃんとやらなくちゃいけないなという思いで、じゃあOOPARTSという名前を使いましょう、と。“Out Of Place ARTiSt”(=場違いなアーティスト、プロジェクト名はこの頭文字を取ったもの)というのも、当時は札幌だけでやらせていただいておりましたけれど、今は東京でもお仕事させていただくようになっているので、僕は今が一番“Out Of Place”、場違いなアーティストというのがしっくりきているんです」
――1998年に劇団OOPARTSを解散されたときのことを、新しい自伝的小説『ダメダメ人間』でも「演劇と決別した」と書かれています。
「根本的に芝居嫌いなんですよ(笑)! 舞台観るのもあまり好きじゃないですし。(舞台は他のエンタテインメントに比べて)一番高飛車ではないかと個人的には思うんです。“ご覧ください!”って(演者は)一段高いところにいて、観客とは違う(存在)っていうのはね。“携帯は切れ、静かにして観ろ”って何様ですか(笑)? それが僕の演劇の考え方。それに対しての“決別”なんです」
――今回、新作「CUT」を上演する会場は、Zepp Sapporo、Zepp Tokyo、Zepp Osakaと全てライブハウスです。
「これが紀伊國屋ホール、本多劇場だったら、“何でその劇場でやるんですか?”って訊かないですよね。それは(人のアンテナに)ひっかからないからだと思うんです。まず、質問して頂けるようなことをやろうと。 (新作は)混沌とした空間が作りたかったので、自由にレイアウトを組めて、いろんなところから役者さんが出てきたりする、そんな空間を作り上げるのには、Zeppが適しているのかなと」
――新作「CUT」はどんな設定になりますか?
「内容が映画の撮影現場という設定です。舞台というよりは、会場全体が撮影スタジオになっているんですね。そして、開演時ではなく開場時から芝居が始まります。役者さんも例えば照明助手など、役柄で撮影の準備をしている。お客様は「CUT」という芝居の、架空の映画『青い空の果てに』のエキストラの皆さんという役柄になっていただきます。単に芝居を観る観客ではなく、自分もこの映画に参加しているひとりの人間であるという意識の上で舞台を観ていただけたら」
――最後に新しい自伝的小説『ダメダメ人間』の話を。30歳でプロダクション、OFFICE CUEの社長になられて、それ以降、自問自答を繰り返し、挫折を経験しながら葛藤する日々を綴っていらっしゃいます。なかには「『本当はチヤホヤされたいんだろう』『本当は、TEAM NACSが羨ましいんだろう』」と自分自身への赤裸々な問いかけをする場面もありますが、この境地に達するまで十何年かかったのでしょうか。
「十何年経って(いろんなことが)わかっちゃダメなんです。死ぬまで葛藤で、死ぬまで自己嫌悪で、死ぬまでダメ人間なんです。ダメであるからゆえに、人は死ぬまで頑張るんです。そうやって、前進していくことが大切だと思うので。(人生の)途中段階として、先ほどおっしゃられたようなことを書きましたけれど、これからもまだまだ挫折しますよ! でも、たくさん挫折してきたから、多少の失敗は怖くないです。また乗り越えればいいじゃん!って。自己嫌悪やダメ人間であることは、一方では自分を強くさせているのだと思います。この本を読んでいただいて、そのことを感じとっていただければと思います」
取材・文:@ぴあ編集部 Hair&Make:西岡達也(vitamins)
▼Takayuki Suzui Project OOPARTS「CUT」
10月14日(木)~22日(金) Zepp Tokyo(東京都)
10月26日(火)~30日(土) Zepp Osaka(大阪府)
[出演・劇作・脚本・演出]鈴井貴之
[出演]宇梶剛士/田中要次/野間口徹/増沢望/諏訪雅/土佐和成/木下智恵/
占部房子/納谷真大
□発売中
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鈴井貴之
ダメダメ人間 それでも走りつづけた半生記
2010年9月10日発売
\1,260-(税込)/メディアファクトリー
話題作『ダメ人間』につづく、鈴井貴之の自伝的私小説、第2弾!
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