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チケットぴあインタビュー

「THE BEE」 野田秀樹

「THE BEE」 野田秀樹
時間をかけて生まれた作品は、月日に磨かれ、一層の強さを身につけた──。 03年から05年にかけて野田秀樹がイギリスの俳優達とおこなったワークショップをベースにした『THE BEE』は、異例の絶賛を集めた06年のロンドン公演を経て、07年に日本で上演され、同年の国内の演劇賞を総なめにした。 そして来年、1月から6月という長い時間をかけてワールドツアー&ジャパンツアーが敢行される。初めてのニューヨーク、再演となるロンドン、さらに香港、日本と、挑戦の歩みを止めない野田に、海外公演に臨む心境を聞いた。

――年明け早々、長いツアーがスタートしますね。



「ニューヨークを皮切りに、海外は3ヵ所で公演を行います。でも実のところ、この作品はその後も上演を続けたい。ヨーロッパ大陸の方でもさらに何カ国かでやりたいなと思ってるんです。だから今回は"第一弾"みたいなつもりで。」



――野田さんのニューヨーク公演は、NODA・MAPになってからは初めてですよね?



「劇団(夢の遊眠社)時代には1度行っているんですけど、今回はどうしてもニューヨークでやりたかった。というのは、この作品は9.11の報復としてアメリカがイラクに侵攻したのを知った時に、僕の頭の中に浮かんだのが筒井康隆さんの小説『毟りあい』で、そこから生まれたという経緯があります。だからできた時から「これをアメリカ人が観たらどう思うだろう」という思いがありました。今は少し時間が経ってアメリカ国内の空気も変わってきたかもしれないけど、変わっていないものも確実にあるでしょう? それを考えると本当に、ごく普通のアメリカ人に観てほしいです。」



――イラク戦争は終結したことになっていますが、「暴力の連鎖」「終わらない報復」はまだまだ進行中で、欧米では今も非常に有効なテーマですよね。



「そう思うんですよ。ついこの間も、リビアのカダフィが殺害されたけど、その映像をわざわざ見せる姿を見ると、暴力に対する人間の熱狂、理屈を超えた感情みたいなものをすごく感じます。そしてそれは『THE BEE』の中で扱っている、暴力が日常に入り込んでいく空恐ろしさにとても近いと思う。だからもしかしたら、暴力の連鎖という部分では、更に状況は悪い方に進んでいるのかもしれません。」



――だとすると、まだまだ上演を続けなければならない作品ですね。



「構造としては非常に単純な、ふたつの家をめぐる物語なんだけれども、それが比喩するのが、人間が争いをやめない限り通用してしまうものなんです。ただ、暴力性というのは、自分で演じていて強く感じるんですけど、どこかの瞬間に"理解できない隙間"をつくらないといけない。延々と続く連鎖までは飛べないんです。でもそれはきっと大切で、暴力は絶対に理解できるものになってはいけない、説明のつくものになってはいけないと思うんですよね。理解できないからやっかいなんです。」



――だからこそ、考え続ける対象になる。



「そうそう。暴力をふるう人間の気持ちもわかるとか、そういう描き方は考えることを途中で放棄してますよね。そうではないものを、いろんな場所に行って『THE BEE』で提示したいんです。」




取材・文:徳永京子 撮影:源賀津己



▼「THE BEE」 English Version ワールドツアー
2月24日(金) ~ 3月11日(日) 水天宮ピット 大スタジオ(東京都)

▼「THE BEE」 Japanese Version ジャパンツアー
4月25日(水) ~ 5月20日(日) 水天宮ピット 大スタジオ(東京都)
5月25日(金) ~ 6月3日(日) 大阪ビジネスパーク円形ホール(大阪府)
6月7日(木) ~ 10日(日) 北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)
6月15日(金) ~ 17日(日) まつもと市民芸術館 実験劇場(長野県)