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チケットぴあインタビュー

笑福亭鶴瓶落語会 笑福亭鶴瓶

笑福亭鶴瓶落語会 笑福亭鶴瓶
名作『青木先生』をはじめとする私落語だけでなく、古典落語にもオリジナルな解釈が光る笑福亭鶴瓶。50歳から本格的に落語と向き合った男は、それまでに覚えた噺をすべて捨て去り、新たに骨の髄まで染み込ませたネタは43席を数えるまでになった。前回の『笑福亭鶴瓶落語会』では、現役最強クラスの漫才師とのコラボが話題となったが、今回はゲストを招かず、鶴瓶ひとりによる独演会を構想中だという。果たしてその内容とは?

――今回の落語会についてお聞きする前に、足掛け2年に渡る全国ツアー『JAPAN TOUR 2009-2010 WHITE』で、鶴瓶さんがなにを感じたのかを教えてください。



「改めて『落語ってものすごい幅が広いんやなぁ。底力があるんやなぁ』と感じました。WHITEのセカンドシーズンでは、ゲストの出身地に僕が行って一緒に落語をやるという構成だったんですけど、おもろい落語家がいっぱいいてたから。たとえばね、新潟県出身の(三遊亭)白鳥は、地元にもかかわらず一席目でスベりよったんですよ(笑)。それがよっぽど悔しかったんでしょう。二席目ではお客さん参加型のネタをやってめっちゃウケて。ああいうスタイルの落語もおもろいなぁと感じたから、今回の落語会で僕も挑戦しようと」



――どのような噺になるのでしょう?



「『おやすみ』というタイトルなんですけど、ネタの途中で実際に来てくれてはるお客さんから3つのお題を募るんです。いわゆる三題噺。既に何回か舞台でかけてみたんですけど、ある時のお題が"ワールドカップ""胃カメラ""エリマキトカゲ"で。それをアドリブで落語にしたんですけど、エリマキトカゲから動物界の異種格闘技戦みたいになって、オチがね、ライオン対侍になると。で、勝ちよるんです、侍が。なんで侍が勝てたかというと、そのライオンが腹痛だったから」



――ははははは! ワールドカップでカメルーン代表が「不屈のライオン」と呼ばれていたのとかけたわけですね?



「そうそう(笑)。その他にあと二席やろうと思っているんですけど、一本は、女性落語作家が僕の実体験をもとに書き下ろしてくれた私落語で、もう一本が『錦木検校(にしきぎけんぎょう)』という古典の人情噺」



――古典と言えば、鶴瓶さんは落語の魅力を「悪人が出て来ない」と口にしますよね。



「うんうん」



――でも、たとえば、古典の『らくだ』は長屋中から嫌われているゴロツキの死を巡る物語で、ということは、「悪人」が作中に登場はしている。それで思ったのは、鶴瓶さんの場合、「悪人」という言葉の解釈が、世間的なそれとはちょっと違うのではないかと?



「それはあるかもしれない。性善説と言うのか、僕は根っからの悪人なんていないと思っているところがあるから。あとね、僕が感じる落語の一番の魅力は、"弱いもんが強くなる"というところ。今回挑戦しようと思っている『錦木検校』もそうなんです。全盲のマッサージ師で、その業界では身分の低い錦木という男と、大名の息子にもかかわらず父親に嫌われて今で言う窓際にとばされた角三郎という武士が親友になるんですね。つまり、このふたりって最初は"弱いもん"なわけです。そこからいかに強くなるか。ただ、先日、ネタの出来に不安を感じる出来事があったんやけど」



――どういうことでしょう?



「自分なりに錦木の演じ方がつかめてきたから、移動のタクシーの中でマネージャーに聴いてくれって頼んだんです。全盲の役柄やから目を閉じるでしょ? で、『角三郎様ぁ~!』って全力で演じてたら、コツ……コツ……って音がするんですよ。気になって目をあけたら、マネージャーが完全に寝てて頭を窓ガラスに当ててる音やったんですよ(笑)。『マネージャーが寝てしまう噺を舞台にかけれるのか?』とちょっとだけ心配になりましたけど、『錦木検校』のふたりが、いかに強くなるのかは、ぜひ会場で確かめてください」




取材・文:唐澤和也 撮影:星野洋介


▼笑福亭鶴瓶落語会
9月29日(水) ~ 10月3日(日) 紀伊國屋サザンシアター (東京都)
[出演]笑福亭鶴瓶
□一般発売:8月28日(土) 10:00