耳のきこえない母と耳の聞こえる息子の切なくも心に響く物語。
宮城県の小さな港町、五十嵐家の男の子が生まれた。祖父母、両親は、「大」と名付けて誕生を喜ぶ。ほかの家族と少しだけ違っていたのは、両親の耳がきこえないこと。幼い大にとっては、大好きな母の「通訳」をすることも「ふつう」の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心をもてあましたまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ大だったが…