ART MEETS YOU!

話題のアートスポットで「みる力」を磨く
~はじめての対話型鑑賞~
アフターレポート

もっと知りたい!という気持ちを後押しするプログラム「ART MEETS YOU!」の2月のプログラムは、アート作品を囲んで、感じたことや考えたことを言葉にしあう「対話型鑑賞」。作品を深く様々な角度から「みる」ことができるプログラムです。

対話型鑑賞ってなに?

今回のプログラム「対話型鑑賞」は、作品を囲んで参加者それぞれが感じたことを言葉にしながら、作品の見方を深めるといった鑑賞方法です。作品をよく見ることから始め、進行役が「この作品の中で何が起こっているでしょう?」と一人一人に考えることを促し、様々な意見を引き出しながら作品の魅力に近づいてゆく、という手法です。
プログラムの進行は、対話型鑑賞に取り組んでいるNPO ARDAが行いました。会場は2016年9月にオープンしたばかりの話題のアートスポット「TERRADA Art Complex」。アート界で影響力のあるギャラリーが集まる場所でたっぷりとアート鑑賞に浸りました。

よく『みる』ことが大切です

まずは最近観に行った(あるいは行こうとしている)映画や舞台や展覧会のチラシで自己紹介。関心や興味の対象も多様な人達が集まっていることがわかり、その人自身にもお互いに興味が湧いてきます。そして、ARDAのファシリテーターからアートと社会の関係について簡単なミニ・レクチャー。「私たちは作家のメッセージをうけとらなきゃと思いがちですが、現代の作家は問いながらモノをみて、作品をつくっています、その問い掛けは一体どんなものか?と考えながら、よく『みて』くださいね。」という呼びかけに誘われ、参加者のみなさんは各グループ6名程度になるよう分かれ展示作品への向かいました。

いざ、実践!

狩野哲郎「a tree as a city」

1つ目の鑑賞は、Yuka Tsuruno Galleryにて展示されていた、狩野哲郎さんのインスタレーション作品。
つり具や木の枝などで構成されたモビールがいくつも天井から吊り下げられている空間で、中央には三角錐が逆さまになった重りのようなものが天井から吊り下げられていました。

まずはよく見て、それぞれに感じたことを出し合いました。例えば「これはつり具でできているモビールだ」「ポイントで蛍光色が使われていて何だか気になる」など見た目の特徴や、「森の中にいるよう」「とても優しい感じがする」など繊細で感覚的な言葉も。他の人の意見に触発されて作品の見方がガラリと変わり、どんどん作品に惹きつけられていったようです。終盤には「吊り下げられているモビールは釣り針とエサで、釣られているのは我々かもしれない」といったような、作品の意図を探るような意見も出てきました。もっと「みたい」という所で次の作品へ。


「 (i,s,o,g,r,a,m) 」大和田俊 2017年

続いての作品は、山本現代で展示されている大和田俊さんの作品。
無造作に置かれた岩に、医療の現場で使われるような点滴が設置されて、岩に点滴が滴っている作品。壁に取り付けられたスピーカーからは微かな音が出ていました。

参加者からは「ガレキみたい」「病院」「洞窟」といった空間の観察から、「生と死を感じる」「『震災』をイメージさせる」「岩が破壊された建造物の一部で治療されているよう」などの感想が出てきたり、化石が使われていることを発見した方は「『時代』がキーワードなのかもしれない」「『死』よりもこれから甦ろうとしている『生』を感じる」など概念的な意見が飛び出しました。


作家さん登場

ここでアーティストの狩野さんが登場!狩野さんに、対話型鑑賞中に出た見方や感想を伝えてみました。ご自身の制作意図に触れるポイントがあったようで、鑑賞者から出た意見に呼応するような形で制作しながら考えたことをお話いただけました。
インスタレーションの中で「水中」「重心」を感じさせた重りがギャラリー自体の重心をコントロールするものでもあることや、切り口に色が付いていることでその先を想像したというエピソードには、余白の使い方や、今回は人が入り込める広い空間ではないので小動物や虫の視点で鑑賞者が作品をよく目をこらしてみることを促すような仕掛けがしてあることなど、作家自身から語られる言葉に豊かな発見がありました。
表面的な感想ではなく、じっくり見て様々な角度から感じ取った作品の魅力を作家に伝え、返答をもらえたことで、現代アートがぐっと身近に感じられるようになったようです。

カフェで振り返りタイム

このあと、自由鑑賞時間を挟んでから近くのカフェに移動し、各グループで観た作品を振り返りました。心に残った感覚や気になったワードなどをふせんに書いてボードに貼り付け、考えや意見の関係を探り、更に追求してゆく作業を行いました。
そうすると、例えば「生と死」でも、化石から溶けだした物質が私たちの身体に取り込まれ、生へと変換されていくような生と死の循環、生と死や現在と過去がパラレルに存在するような感覚、あるいは、石を溶かすという行為は科学を操ろうとする人間のエゴのメタファーではないかといった、対話後に熟成して生まれた言葉を聞けたり、その場では話しきれなかった言葉が共有できました。
また、似ているキーワードをまとめたり、関連性のありそうな言葉を矢印でつないでいくことで、鑑賞した2つの作品のコントラストが鮮やかになったり、一方でどちらの作品でも様々な対比を発見していたことに気づいたり。キーワードを並べて関連性を発見することで、更なる作品への理解が深まり、またひとつの答えを見つけようとするのではなく、理解の可能性を更に広げるような試みでした。

プログラムを終えて

参加者からは「作品についての事前知識がなくても、作品をよく見て、感じ、考えれば自分なりの理解につながるのだと思った」や「他の方の意見が新鮮でした。アートやものの見方に変化が生まれて、ものすごく楽しめました。」などの声が寄せられました。みなさん新しい鑑賞方法により、現代アートの見方が広がったり現代アートに触れる足がかりとなったようです。
知識を用いて分かろうとするのではなく、まずは自分なりに「みる」こと。これは現代アートに限らず、日常生活などでも実践したいアプローチですね。

チケットぴあでは、これからもプレミアム会員に向けた「ART MEETS YOU!」のイベントを開催していきますので、ぜひ今後のイベントに参加してみてください。会員同士の交流も含め、新しい感性の扉が開かれることと思います!

ART MEETS YOU! TOPページに戻る

ぴあ会員規約 | プライバシーポリシー

特定商取引法に基づく表示 | 旅行業登録票・約款等

動作環境・セキュリティ | ぴあ会社案内