ART MEETS YOU!

〈レクチャー&交流会〉
“ペア・ルック”という試みで迫る二人のアーティスト
草間彌生×アグネス・マーティン
~現代アートの学校MAD特別編
アフターレポート

もっと知りたい!という気持ちを後押しするプログラム「ART MEETS YOU!」の3月のプログラムは、斬新でオリジナリティ溢れる特別レクチャー“ペア・ルック”をご用意。レクチャーの後は交流会も開催し、新しい仲間とレクチャー後のワクワクを共有しました。

ペア・ルックってなに?

今回のプログラム「ペア・ルック」は、一般的な美術史とは距離を置いて、アーティストを意外な組み合わせでペアにして比較していく手法です。時代・地域を横断して作家を見つめることで、両者の関連性やその当時の世相が明らかになり、今まで見えてこなかった創作の源や悩み、精神世界までもを浮かび上がらせます。現代アートの学校MADで展開されていたこの“ペア・ルック”を、今回はぴあプレミアム会員様向けに特別にアレンジして行いました。
プログラムの進行は、この手法を生み出したロジャー・マクドナルド氏。さっそく二人のアーティストについてのレクチャーが始まりました。

二人が描くのは抽象画という共通点

まず冒頭で「両アーティストの共通点は、抽象絵画を制作するアーティスト」という点に触れられました。19世紀半ば、写真の登場により、絵画の存在意義は揺らぎ、アーティストの意義が問われるようになります。そうした時代の流れの中で、抽象絵画が生まれていったのですが、いったい二人は何を描いたのでしょう。アグネス・マーティン氏と草間彌生氏の作品を何点か見比べながら、抽象絵画という共通点以外にも、二人の交点があるのか探っていきました。

禅に影響を受けたアグネス・マーティン

両者は共にニューヨークで活躍したアーティストでした。マーティン氏は1950年代にニューヨークでデビュー。1950年代、アートシーンはパリからニューヨークへシフトしていった時代。マーティンはキャンバスにグリッドを描く作品をひたすら制作していきました。
彼女の絵画は鑑賞者に、時間をスローダウンして向き合うこと、参加することを提案してくれている作品だと、ロジャー・マクドナルド氏は分析します。じっと眺めていると、グリッドがキャンバスを飛び越えて「永遠」に続いていくように見えてくるそうです。
1950年代のアメリカはジャクソン・ポロックの全盛時代。そして鈴木大拙によって「禅」がアメリカ人に紹介され、その思想が広がっていった時代でもありました。マーティンも禅の影響を受けたのでは、と分析されています。マーティンはニューメキシコ州の砂漠に一人で移り住み、作品を制作し続けました。まさに禅僧のような生活を送っていたとも言えます。テート・モダンで開催された彼女の回顧展を観たマクドナルド氏は「展示空間がまるで教会や礼拝堂のように感じられた」と語ります。

活動領域を拡散させた草間彌生

水玉作品が象徴的な草間彌生氏のキャリアは、日本画から始まったそうです。日本の絵画展にも出品されていたそうで、当時は神秘主義やシュルレアリズム、禅の影響が作品に見て取れるといいます。
草間氏もマーティン氏と同じく1950年代にニューヨークへ行き、60年代のニューヨークで活発に活動。次第に活動領域はキャンバスを飛び出します。1968年のベネチアビエンナーレでは、イタリア館の前でゲリラ的なパフォーマンスアートを行うなど、公共空間や街などに表現領域を広げていきました。近年ではファッションブランドなどの商空間や商品などへも表現の場が拡がっています。また、一面鏡張りで水玉空間が無限に拡張されたような作品も発表しており、鑑賞者に「永遠」や「無限」を感じさせる作品を多く残しています。

急に二人の作品が“近く”見えてくる

ペアで観る前は、共通点があるように思えなかった二人の作品が、アーティストの生涯や時代背景などを追ってみることで、共通点のヒントを見出すことができました。「永遠」や「無限」というキーワードから、両氏のグリッドと水玉表現が、実は同じことを表そうとしていたのか?といった見方もあることに気づきます。
「絵画の見方は人それぞれで何通りもある。名画は私たちに様々な解釈を生み出してくれます。まずは5分でも足を止めて、ひとつの作品をじっくり眺めてみましょう。」という話で幕を閉じました。

プログラムを終えて

参加者からは「参加しないと気づかなかった作家の姿や、絵に対する切り口を感じることができおもしろかったです。」や「ペア・ルックというとらえ方を他の分野で応用して自分なりに考えてみたくなりました。」「久しぶりに学生に戻った気分で大変楽しい講義でした」などの声が寄せられました。初めて体験する手法によって、新しい鑑賞方法や見方の幅が広がったようです。
全く異なるアーティストを比べることで、より理解を深める手法。
今まで触れる機会が少なかったアーティストの魅力を知る手法として、実践していきたいですね。

「ART MEETS YOU!」2016年度のプログラムは今回が最終回。2017年度も、新たな切り口でお客様の「もっと知りたい!」気持ちを後押しするプログラムをご用意しておりますので、是非お楽しみください。
現代アートの学校MAD2017でもペア・ルックを用いてアーティストの表現に迫るレクチャーをご用意します。セザンヌやピカソといった誰もが知るアーティストから、日本では紹介される機会の少ないビル・トレイラーやエミリーウングワレーまでを深く知るチャンスです。
他にもMADには刺激的な学びがありますので、チェックしてくださいね。
MAD http://mad.a-i-t.net/category/bodyofpainting/

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