――この後の公演から森山未來が参加します。
「未來は本当に才能豊かな人。3年前一緒にワークショップをやった時から、体の記憶力が優れているだけではなく、動きに求められているエネルギーを毎回新しく生み出せる人だと思いました。また、彼は子供の頃から手塚治虫を知っていて、手塚作品とともに育っています。手塚作品とのリアルなつながりを彼が持っていることが僕の作品にも活かされています」
――手塚治虫を元々知っている日本人だけでなく多様な国籍のアーティストが参加していますね。
「手塚をテーマにした作品には"多様性"が必要でした。手塚の多様な考え方を受容する力を扱うには、様々な文化や表現手法を持つ人がいないと、僕は対処できないと思います」
――どのような反応が起きていますか?
「手塚に馴染みのない西洋のダンサーたちも、手塚作品を紹介したらとても興味を持ってくれました。もちろん日本の方は手塚をよく知っています。それぞれの観点で関わってくれるメンバーのおかげで、手塚作品の新しい読み方が広がりました。そして、他者に対してオープンな方ばかりが集まって良かったです。手塚の"深い好奇心と様々な人間の在り方を怖れずに語る力"を伝えたかったから。観客にも"自分とは異なる物事にも関わろうとするのが大事"ということを感じてもらえたら嬉しいです」
――手塚がシェルカウイさんに与えた影響は?
「手塚作品の"両側をみる"という考えに深く感銘を受けました。善悪で物事を決めるのではなく、両方を理解するという捉え方ですね。良い例が『鉄腕アトム』。アトムは、ロボットと人間の心という異なる性質を持ちながら、一歩進んで互いを理解するにはどうしたら良いかを常に考えているキャラクター。特にヨーロッパでは善悪をはっきりさせたがる傾向を感じるので、刺激を受けました。また、手塚作品では自然の力に対する畏敬の念や自然の脅威が描かれています。これも西洋ではあまり無い考え方です。日本は自然に対する謙虚な心が常にあり、生活にも現れています」
――この考えは作品の中にも出てきますか?
「そう。今回のパフォーマンスの中でも、僕が感じた手塚の哲学や日本文化を伝えるようなイメージがあります。僕は理論ではなく自分の感覚を信じるようにしていますが、子供の頃から日本文化に影響を受けてきて、アートを通して日本に対する親近感が出てきたのかもしれません。なんだか日本にいると気持ちが良いのです。また僕は、この企画に取り組み研究していく中で、いま手塚治虫がいないことの大きな悲しみも感じざるを得ませんでした。手塚は既に亡くなっていますが、『彼がいたらどのように考え、どうしたのだろう』といつも考えながら取り組んでいたので、その思いも作品を通して伝わってくると思います」
▼「テ ヅカ TeZukA」
2月23日(木) ~ 27日(月) オーチャードホール (東京都)
[出演]森山未來 / ヨン・フィリップ・ファシストロム / ダミアン・ジャレ / 上月一臣 / 工藤聡 / 大植真太郎 / ダニエル・プロイエット / ギュロ・スキア・ナーゲルフス / ヘルダー・シーブラ / ヴェヴョン・サンドビー / 黄家好 / 李波 / 鈴木稲水 / 堀つばさ / ウー・ジェー・パク / 他
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