――5年ぶりの菊次郎役。さらにドラマではなく舞台で演じるということで、新しい感慨はありますか?
「舞台で菊次郎をやることに関しては、“企んでない”ですね。他の役のときは細かい役作りとか、ギャグを織り交ぜたりなどを考えたりするんですが、すっかり体に馴染んだこの役では、輿水さんと石橋さんという“職人”の方たちが作った土台に乗せられて演じるだけで、もう充分に面白くなると分かっていますから。自分を解放できる役ですし、舞台は緊張するけれど楽しいです」
――物語は、ドラマで描かれていない、さきとの出会いから始まるとか。
「関東大震災の直後に、菊次郎が27歳、さきが21歳で出会って結婚して、それからたけしたちを育て上げ、年配になるまでを演じます。舞台は関東大震災の直後から始まるんですが、昨年の東日本大震災の直後が今なわけですよね。もちろん舞台化の話は何年も前からあったものですが、日本から豊かさがなくなりつつある中で幸せのありかを見つけようとするこの作品を、いま上演できるというのは、何か意味があることなのかもれしないなと感じていますね」
――照れ屋なのに酒を飲むと暴れてしまったりと、生き方が不器用な菊次郎には、昭和の男の美学のようなものを感じます。
「ウチは父親も木工所の職人だったので、それを見てきた自分には菊次郎の気持ちが分かるんですよ。昔はどこにでもいましたが、菊次郎も非常に人間らしい、悲劇と喜劇を背負って生きてきた人。ピュアでストレートで、どこかしら破れているのがむちゃくちゃチャーミングなんですよね。今だったらただの“破綻している人”になっちゃうけど(笑)。21世紀には見られなくなってしまった、そんな男の愛情や優しさを大切に演じたいですね」
――今日もお客様は大盛り上がりでしたね。
「こちらが計算せずにやった家族同士のリアクションや、親子のセリフのやりとりなんかを目の前で面白がっていただけるのが新鮮です。TVドラマだと、それは分からないですからね(笑)。詐欺に遭った時に、菊次郎の純真なセリフに笑いが起きたり、稽古とは全然違うところがラフポイントになったりするのも嬉しい。客席の皆さんが本当に喜んでくださっているのが伝わるので、これから観にいらっしゃるお客様も、ぜひ“お祭り”と思って楽しんでもらえればと思います」