──三谷作品への初出演になりますが、ご本人にお会いしたときの印象はいかがでした?
「一度食事をご一緒させていただいたのですが、お互いシャイなのか、同席した大泉洋さんの明るいノリを隠れ蓑に「どんな人間だ?」と窺い合った感じでした(笑)。三谷さんは「現代の生活に馴染みきれないような不思議な雰囲気」が僕にあると仰ったそうで、そこから「留学中の夏目漱石」という作品のアイデアも生まれたと聞いています。三谷さんにとって狂言師である僕は、どこか外国人に対するときのような距離感を感じさせる存在なのかも知れませんね。」
──舞台での現代劇も初だそうですが、演じる心構えも変わるのでしょうか?
「映像作品でも感じることですが、個人的には現代劇のほうが何でもアリな気がするんです。台本の行間に俳優の遊ぶ余地があるというか、書かれたこと以上の思いもよらぬことが起きる割合が高く思えて。ただ、三谷さんの場合は台本の完成度が高く最初から面白いわけで、俳優がそこに遊ぶ余地を見出すには手強い相手。稽古場では劇作・演出家に肉迫し、戯曲とせめぎ合えるくらいまで集中して作品に対峙したいと思っています。 ただこれまでの経験上、喜劇の要素を持つ作品現場での自分は非常に活気づくという自覚があって。狂言師の血と呼び合うのか、「自分の居場所にいる!」という手応えを強く感じることができるんです。その意味で、三谷ワールドに飛び込めることをとても楽しみにしています。」
──世界的に有名な実在の文豪を演じることをどう感じていますか?
「実は僕、あまり熱心な漱石の読者ではありません(笑)。でも今回はあくまで三谷さんの視点と判断で、エッセンスを抽出した漱石像を体現するのが僕の役割ですから、その求めに応じることだけを考えようと思っています。漱石と同じくロンドンへの留学体験があり、外国で暮らすことの孤独や不安といった当時のリアルな体験が、良い手がかりになるかも知れません。必要ならいつでも、留学時代の「イギリス人のココが変」ネタも三谷さんに提供できますよ(笑)。」
──共演陣の豪華さも観客には嬉しい贈り物です。
「初めての方が多く、僕自身もとても楽しみにしています。深津絵里さん演じるベッジとは恋に落ちる設定らしく期待が高まりますが、三谷さんですから、良い雰囲気になると浅野和之さんや浦井健治さんが急に現れる、的な展開じゃないでしょうか(笑)。僕と深津さん以外は皆さん複数役を演じる趣向とか。それを聞くと羨ましくもなりますが(笑)、負けじと存分に演技で遊び、三谷さんからもたっぷりいじられ、俳優としての喜びを堪能したいですね。」
取材・文:尾上そら 撮影:引地信彦
▼「ベッジ・パードン」
6月6日(月) ~ 7月31日(日) 世田谷パブリックシアター(東京都)
[劇作・脚本・演出]三谷幸喜
[出演]野村萬斎 / 深津絵里 / 大泉洋 / 浦井健治 / 浅野和之
□一般発売:4月17日(日) 10:00