――バーミンガム・ロイヤル・バレエ団は、クラシックバレエと、英国独自の創作作品を軸とした作品を楽しませてくれますが、カンパニーの魅力をお聞かせ下さい。
「バーミンガムロイヤルは若手が多く、いつも元気なエネルギーに満ちているカンパニーです。自由な感覚で、新しい作品にチャレンジを重ねており、英国ロイヤルバレエ団とは、姉妹的なカンパニーで、同じ演目を取り上げる事も多いです。」
――「真夏の夜の夢」では、パックとオベロンの、踊り方や表現にどのような違いがありますか?
「18歳の頃など若い時代は、生き生きとしたジェスチャーが多いパックが、自分にとても合っていました。オベロンは王の荘厳さを全身からかもし出しながら、妖精でもありますので、難しい表現が必要とされますが、今の自分にはぴったりの役ですね。 」
――カンパニーの素晴らしいダンサー以外で、共演してみたい方は、男性女性を問わずいらっしゃいますか?
「もちろんミハイル・バリシニコフです。彼の存在が、バレエを始めた理由でもあります。自分がパートナーに求めているものは、息が合うかどうかなのですが、質問されて思い出した、素晴らしいダンサーがいます。シンシア・ハーヴェイです。完璧なテクニックの持ち主で、とても美しいバレリーナです。驚くようなテクニックを持つバレリーナは他にもいますが、表現が冷たく感じる事があります。ビデオを見ていても、男性のヴァリエーションはしっかり参考にするのですが、女性の場面には興味が持てず早送りをしていたのに、シンシアの場面はしっかりと目が釘付けになってしまいます。人柄も明るくて、ドン・キホーテで共演できたら楽しいだろうなと思います。」
――チーさんは、ロシアのメソッドと、ロイヤルスタイルという伝統の中に、自分の個性を取り込んでおられます。いつか「バヤデール」のソロルや、「マノン」のデ・グリューを見たいなど、観客は想像が掻き立てられてしまいますが、今後踊ってみたい、新しいレパートリーはありますか?
「バヤデール!僕がバレエを踊るきっかけになった作品と言えます!ソロルは強引でありながら、エレガントな雰囲気を併せ持つ魅力的な役だと思います。「白鳥の湖」は、どうも頑張り過ぎて熱い王子になってしまいますが、ソロルは自分の感性をフルに発揮できると思うので、是非踊ってみたいです。「マノン」のデ・グリューは、あまりイメージが湧いてきませんが、ロミオも踊るまでは想像がつかなかったのに、実際踊ってみるとしっくりと役にはまりました。」
――バレエ以外で興味のあることや、他のジャンルの芸術を鑑賞されることはありますか?また、食生活にとても気をつかっていらっしゃるようですね。
「とにかく格闘技が大好きです。ボクシングはバレエと同じで、テクニックが必要な上、強い意思が必要とされます。バレエは競争ではないので、順位が決まりませんが、格闘技は必ず勝負が決まる魅力があります。クラシック音楽はよく聞きますし、読書をしながら表現のヒントを探します。あらゆるリサーチをして、役の個性を理解し、自分がどこに何を感じるか、いつも探求しています。食生活についてはスポーツサイエンスに興味があり、実行しています。お陰で身体の痛みが少なく、厳しい健康管理に成功しています。調子が悪いと集中力が欠け、朝早くからのレッスンにも行きたくなくなり、楽しく踊れません。自分は足を出しただけで美しく見える身体ではないので、ジャンプやターンの勢いが落ちると、ダンサーとしての魅力を失ってしまいます。身体能力のレベルが今よりも下がったら、ダンサーは続けられません。キャリアを長く保つために、身体にはとても気を使っています。僕は舞台で観て頂いたメージより実は小柄なので、筋力や動きで大きく見せています。」
――「小さな村の小さなダンサー」は、現役の有名なダンサーが、実話を元にした映画の主演をするということで、大変な話題となりました。映画に出演されて、ご自分の内面や生活が変わったと思われる部分はありますか?
「バレエダンサーとして疲れかけているときに、この話がきて意欲が湧いてきました。 役者も素敵な仕事だと考えています。バレエダンサーは完璧さにこだわり、批判主義者が多いのですが、監督から自分のエゴの為ではなく、お客様の為に演技をしろという言葉があり、物の見方がとても変わりました。飛行機に乗るにもビジネスクラスで、ちょっとしたフィルムスターの気分を味わいました。 」
――映画のラストシーンは、バレエという芸術がどれだけ美しいものか、観客の心の 中に残してくれた場面です。この撮影について、思い出はありますか?
「実はラストシーンが、初めてカメラの前に立った場面なのです。スケジュールの関係で、順序が逆になりました。台詞を何度も忘れてNGをたくさん出してしまい、とても寒い中、大勢の役者やエキストラの方を待たせてしまいましたが、2~3時間経った頃に、何をすべきかが自然に自分の内面に入ってきて、その後は役になりきる事ができたのです。」
――また、映画に出演されるとしたら、どのような作品を望みますか?
「演技一本で勝負ができる、ダンサー以外の役をやりたいです。 実現するかはわかりませんが、中国人ギタリストの役でオファーがあります。 いつか、ボクサー役をやってみたいですね。 」
強い信念に基づいた生き方を、常に心から離さない芸術家である。ツァオ・チーが映画の中で見せる驚異的な跳躍を見て、バレエを初めて見た観客の中に、身体をワイヤーで吊っていると信じている人がいたという。バレエを未知の芸術として感じている方にも、生の舞台を体感して頂きたい。未だ続く余震に不安が消えない今、優雅な幻想の世界で心を癒したい。
取材・文:高橋恭子(舞踊ジャーナリスト)
▼英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団
5月14日(土) 鎌倉芸術館 大ホール(神奈川県)
5月17日(火) ゆうぽうとホール(東京都)
5月19日(木) 愛知県芸術劇場 大ホール(愛知県)
5月25日(水) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール(兵庫県)
5月21日(土) ~ 29日(日) 東京文化会館 大ホール(東京都)
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