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@ぴあインタビュー

渋谷・コクーン歌舞伎 第十一弾『佐倉義民傳』串田和美

渋谷・コクーン歌舞伎 第十一弾『佐倉義民傳』串田和美
モダンなシアターコクーンの空間が江戸時代の芝居小屋へと様変わりする人気の“コクーン歌舞伎”が今年もお目見え。5年ぶりとなる新作に選ばれたのは、歌舞伎の名作『佐倉義民傳』を取りあげる。本水、本泥を使うなどのダイナミックさ、椎名林檎の曲を用いるなどの大胆さで毎回大きな話題を集めるコクーン歌舞伎が、民のため決死の覚悟で将軍に直訴する廉直な“義民”の生き様をどう描き出すのか。中村勘三郎とともに歌舞伎の地平を切り開く演出家・串田和美に話を聞いた。

──南北や黙阿弥といったコクーン歌舞伎のこれまでのラインナップからすると、『佐倉義民傳』は異色作ですね。



「みんなでワイワイしゃべっているうちに役者の間から「義民伝が面白いんじゃないか」って話になって。最初は僕も「え?」と思いました。ただあまりに自分とは距離のあるものだったから、かえって「よぉし、やってやる!」って気持ちになって(笑)。でもその「え?」をプラスに転換したらきっと面白いものができるという直感みたいなものはありましたね。「コクーン歌舞伎にもこういうものがあるんだ」と新鮮に感じてもらえるものが、絶対生まれると思う」



──現在、串田さんの頭の中にある演出プランをお聞かせください。



「『上海バンスキング』の本番中(取材当時)だし、僕の頭の中にもまだない(苦笑)。資料を見ると、明治以降に盛んに上演された作品なんですよね。この頃は登場人物に感情移入して泣くっていう言ってみればベタなものも多くてそれが歌舞伎の代名詞みたいになっちゃってるようなところがあるんだけど、それ以前のものにはもっと客観的で乾いた感覚がある。歌舞伎にはそっちの面白さもあって、僕はこの作品でもそちらを大事にしたいと思うんですよね。だからこそ余計に泣けるとか、もっと深くて大きな感動みたいなものにつながることもあるだろうし。いつもは原作の面白さが決め手になるんですが、今回は当時の資料があるのでそれも面白いですね。瀬川如皐が書いたこの歌舞伎に、それ以前に語り継がれていた伝説や別の人が書いて大阪で上演した芝居など、この題材にまつわるいろんなものをないまぜにして作っていこうかなと考えています」



──“伝統の継承”“伝統と新しいものとの融合”というのは今日的なテーマですが、串田さんはどう考えますか?

「伝統は大切なものなんだけど、問題なのは伝統を守る方法ですよね。相撲なんかでも、伝統を守ろうとするあまり本来の良さを失っちゃうってことがある。歌舞伎の場合はいつも庶民の味方で、お上にどんなに禁止されてもいろんな工夫をしながらかいくぐってみんなを喜ばせようとしていたという伝統があります。そこを忘れて、ただ守るだけでは伝統じゃない。だから「コクーン歌舞伎は新しい」と言われるけど、むしろ原点回帰だと僕は思っています」



取材・文:武田吏都



▼渋谷・コクーン歌舞伎 第十一弾『佐倉義民傳』
6月3日(木) ~ 27日(日) シアターコクーン
[演出]串田和美
[出演]中村勘三郎/中村扇雀/中村橋之助/坂東彌十郎/中村七之助/片岡亀蔵/笹野高史/他