――劇団の解散を聞き、「そうだろうな」と自然に思われたそうですが。
「ええ、鴻上さんも新しい劇団を始めているし、僕ら俳優もそれぞれに活動の場や機会を増やしている。復活しても劇団として、その後コンスタントに公演していけるのか疑問だったんです。だから「解散しようと思う」と切り出されたときも、正しい意見・良い判断だな、と思えて。」
――84年の入団以来ホームだった第三舞台という劇団は、筧さんにとってどんな場所だったのでしょう?
「僕は大学在学中に劇団☆新感線に入っていたんですが、主宰のいのうえひでのりさんに「お前は東京志向がある。今度第三舞台という劇団がオーディションをやるから受けて来い」と言われたのが入団のきっかけで。鴻上さんの芝居を観たこともないまま受験・合格・上京という、ヒドい入り方をしているんですよ(笑)。最初に渡された『朝日のような夕日をつれて』の戯曲もサッパリわからない。いのうえさんは振付のように一挙手一投足役者に指示を出す演出家だったから、僕は第三舞台に入って初めて、自分が何もできない、考えられない役者だということを突きつけられたんです。そもそも鴻上さんは役者に、「舞台に普通に出てくるな、何かやれ」とか言う人だったから(笑)、各種ダンスはもちろん器械体操や殺陣など、とにかく自分の引き出しをつくらないと劇団の中に居場所がなくなってしまうんです。そうやってお尻を叩かれつつ、必死に着いていく場所でしたね。今も、あの時の引き出しが役立つことがたくさんありますから。」
――久々の芝居づくりで、鴻上さんとの関係性は変わりそうですか?
「お互いの関係性は変わらないんじゃないかな。でも、周囲からの見られ方は変わっている。鴻上さんも当時のようにどこへ噛みついても平気な無名の人間ではなく、人の上に立つ人になっているし、僕らも外向きに俳優個人としての顔がそれぞれちゃんとある。その僕らが、もしかしたら20年近く前の舞台以来劇場や演劇と離れている方、劇団の最盛期の記憶のままいらっしゃるお客様と、最近の僕らしか知らないお客様、その両方が混在する客席に向かうというのはとても難しいことだと思っているんです。結局やれることをやるしかないんだけど、そのために今はニュートラルでいられるよう、自分の心をどこに置くか精神統一している感じですね。」
――具体的な内容はまだ分かりませんが、新作に対してどんな意気込みをお持ちですか?
「個人的には、劇団の舞台を知っている方には最初「昔と同じだ」と思わせ、その後「甘かった!」と感じて欲しいですね。鴻上さんもノスタルジックで終わるようなことは絶対にない、裏切ってくると思うので、ただの「終わり」ではなく「この先」に繋がるエネルギーを、僕らもお客様にも感じてもらえる。そんな舞台にしたいと思っています。」
▼第三舞台30周年 封印解除&解散公演 「深呼吸する惑星」
11月26日(土) ~ 12月18日(日) 紀伊國屋ホール(東京都)
12月22日(木) ~ 26日(月) 森ノ宮ピロティホール(大阪府)
1月6日(金) ~ 9日(月・祝) サンシャイン劇場(東京都)
1月15日(日) キャナルシティ劇場(福岡県)
□一般発売:
東京(紀伊國屋ホール)・大阪=発売中
大阪・東京(サンシャイン劇場)・福岡=10月29日(土) 10:00