主演を務める米倉との共演は今回が初めてだが、「舞台経験が少ないとは仰っていますが、やはり人前で何かすることの感性は非常に優れていると思います。技術だけにとらわれることなく、そこでスカーレットとして生きようとしているように見えますね。本当に口が悪いし好きでもない男と結婚したりする女性ですけど、米倉さんが演じることも手伝って不思議と憎めないんですよ。ひどいことを言ったりして憎まれ役になっているけど、それは自分が頑張らないとみんなが破滅してしまうと思ってやっていることだし、裏では泣いていたりする。そういう姿を見てお客さんは共感したりかわいく見えるんじゃないかなと思います」と、米倉や米倉が演じるスカーレットを客観的に語る。
また、寺脇が演じるバトラーは、奔放で傍若無人なスカーレットに興味を持ち、次第に愛していく男。人目を気にせず周りに流されない。そして野性的ながらも包容力のある人間だ。寺脇は「スカーレットに対する"目"を意識して演じている」と、演じる上で大切にしていることを語る。
「今のスカーレットをどう見ているのか、本心を見れているのか。その"目"は僕が表現するしかないので、いちばん気を遣っていますね。あと、バトラーという男の答えはセリフの中に何ヵ所かあるんです。ひとつ大きなものとしては、卑怯なことが嫌いであること。自分が生きていく上で大事なことはことを守りながら、世間が許す許さないではなく自分が信じたことを貫く男なんですよね。それと、戦争なんてバカなことには参加しないと言ってるけど、スカーレットを守る時は命をかけて守ったり、傷ついた少年兵が国のために頑張る姿を見て愛国心に目覚めていくところも含めてロマンチストだなと思いますね。"イイ男"を演じようとは思いませんが、自分の中でこんな男性だったらカッコイイなという理想を求めながら作るようにしています」
映画で広く知られ、舞台でも度々上演されてきた本作。長く愛されてきた理由は「人の強さが根底に流れているからでは」という。
「戦争時代の話ですが、自分の国に対する心とか、ひどい状況だけどなんとか生き抜こうとする姿が描かれていて、今の日本の状況と重なる部分がある。苦難や壁を乗り越えて生きるというエネルギーに満ちていますし、無力だけれど、頑張ることができるのも人間だということが強く流れているので、多くの方に観て頂きたいですね。さらにこの舞台版では "気持ち"がいちばん大きなテーマになっていて、衣装も豪華だし、大きな仕掛けもあって見ていて全然飽きませんが、その大きなスケールの中に繊細な人間の気持ちが描かれている。登場人物の気持ちの移り変わりはすごく見えてくると思います」と、最後に作品の魅力、舞台版の見どころを話してくれた。
公演は6月3日(金)から12日(日)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演された後、6月18日(土)から7月10日(日)まで、帝国劇場にて。チケットは現在発売中。
取材・文:黒石悦子