――『天使~』の上演は4度目になりますが、今回「虚構の劇団」でやろうと思ったのはなぜですか?
鴻上「まずは僕が20代の、第三舞台時代に書いたものを、虚構の若者たちがやったらどうなるんだろう?というチャレンジの意味ですよね。また『天使~』は僕にとっての集団論、つまり集団って何だろう?ってことを真正面から試行錯誤した作品。だからこそ劇団というある種の集団の中でやると、より面白さが増すと思ったんです」
――大高さんは今回を含め、すべての公演にマスター役で出演されています。
鴻上「虚構だと男役が1人足りない上に、マスターはなかなか肝の役なんですよね。それで誰かいないかな?と思ったら、あぁいるかと(笑)」
大高「大好きな作品なので嬉しいですよ。しかも初演当時は28歳だった僕も、今年で52歳(苦笑)。やっとマスターの実年齢になって……」
鴻上「僕もそこが楽しみなんですよ。大高がマスターの実年齢になって、一体どう見えるのか、響くのか」
大高「リアリティというよりかは、アクチュアリティ(=現実性)を目指していきたいですね。例えば方言のセリフで、ネイティブの人が聞いたらまったく違う発音なのに、その人のアクチュアリティがあれば全然OK、みたいな役者さんっていますよね。そういう僕なりのアクチュアリティを見せられたらと思います」
――今回の上演にあたり脚本は手直しされるのでしょうか?
鴻上「大枠は同じですが、もちろん修正は入ります。まずマスターが語る『進化論』。羽毛のついた恐竜化石が、ここ10年で続々と発見されているらしいんですね。だから僕、今すごく進化論には詳しいですよ。脚本には1ページも手をつけてないけど(笑)」
大高「……まぁとにかく、セリフを言う本人が分かるセリフにはして欲しいですね(笑)」
――改めて本作の内容を読むと、日本の現状とあまりに似通っていてちょっと怖い気がします。
鴻上「リアルですよね。メルトダウンした後の世界で生き残った人たちの話なので。それは状況としては非常に悲劇的なんですけど、ここではその中で懸命に生きようとしている人たちの姿を描いてるわけで」
大高「だから元気をもらって帰ってもらえると思うんですよね」
鴻上「そうそう。そこに勇気を得たり、頑張ろうって気持ちになれたり。まぁこれが演劇業界では"天とじ"と呼ばれる、親子丼とかカツ丼みたいな(笑)、そういう作品なので、一度は観といた方がいいと思いますよ(笑)」
大高「それさ、卵でとじるって言い方はするけど、"天とじ"っておかしくない? 天ぷらでとじるってことになるでしょ?(笑)」
鴻上「ハハハ、確かに!」
取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己
▼虚構の劇団「天使は瞳を閉じて」
8月2日(火) ~ 21日(日) シアター・グリーン BIG TREE THEATER (東京都)
□一般発売:6月12日(日) 10:00