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@ぴあインタビュー

ラッパ屋「ハズバンズ&ワイブズ」 鈴木聡

ラッパ屋「ハズバンズ&ワイブズ」 鈴木聡
ちょっとおバカで人間くさい、そんな市井の人々の暮らしをあたたかな笑いのもとに描き出してきた、劇団「ラッパ屋」。その作・演出を務める鈴木聡にとって、前回公演『凄い金魚』は生涯忘れられない作品となった。公演2日目にして起きた東日本大震災。そして改めて鈴木はこう感じたと言う。「自分は娯楽をやっているのだ」と。あのときの思いを胸に、彼が今生み出す、ラッパ屋流の喜劇とは?

――ちょうどラッパ屋さんは、前作『凄い金魚』の公演中に東日本大震災を経験されたんですよね。



「はい。ラッパ屋っていうのは、そのときに僕が一番考えていることを芝居にしようと思っているんです。で、そうなると今は、やっぱり震災のことから逃げるわけにはいかないなと。今回の震災で感じたのは、一人ひとりの考え方や感じ方に違いがあって、それが顕在化していったなということ。どの情報に触れるか、どの意見をピックアップするかによって、全然違う。もちろん夫婦でも差が出ますし、そうなるとやっぱりケンカになりますよね。逆に隣の旦那が同じ意見だったりすると……みたいな(笑)。だから起こっていることはすごく社会的な出来事なんですが、結果ものすごく個人的なことに集約していく。そうやって小さな話になっていくのが、ラッパ屋なんですよね(笑)」



――とはいえこれまでにない深刻な題材を扱うことで、ラッパ屋の作品として、何か変わっていく部分はあると思いますか?



「コメディであることにはこだわるんだけど、今回に関しては、必要以上に笑いをつくらなくてもいいんじゃないかと思っています。むしろ僕が震災や原発の問題で感じたことを、なるべく正直に出していきたいなと。僕は表現者としては情けないくらいに平凡で、小市民的なところがあると思うんですが、それはある意味、一般の人たちの代表でもある。だからそんな僕が東京で暮らし、そのときに感じていたいろいろな思いを、作品というかたちで記録しておきたいと思ったんです。その中でしぜんに笑いが生まれていけばいい」



――ラッパ屋さんの作品には、隣人の生活をのぞき見るようなおもしろさがあります。でも今回は、その対象が自分自身になるということでしょうか?



「そうですね。だから僕の意見があって、また別の人、別の人の意見、というのではなく、僕の中での意見が目まぐるしく変わっていく。だから一人ひとりの登場人物が、それぞれ僕の分身のような……。世の中を笑うというより、情報に振り回されたり、だいじなことを考えてこなかった自分を反省してオロオロする、僕自身を笑うことになるのかな」




取材・文:野上瑠美子 撮影:星野洋介


▼ラッパ屋「ハズバンズ&ワイブズ」
11月11日(金) ~ 20日(日) 紀伊國屋ホール(東京都)
11月26日(土) 北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)
□発売中