──再び『罠』に挑みますが、初主演舞台となった去年の出来栄えは?
「自分としては、まだまだ出来たんじゃないかって想いがありますね。ダニエルって人物の、もっと深いところまで落とし込めたんじゃないかなと。だから今回またこの作品をやれることは、本当に嬉しいですね」
──本作の魅力をどんな点に感じますか?
「人間の怖さですよね。表と裏があったり、平気で嘘をついたり。やっぱり嘘をつく動物って、人間だけじゃないですか。それがこの作品に、スリルやサスペンス、緊張感というものを生み出している。そういう空気感が、この作品の大きな魅力だと思います」
──そんな作品に取り組むことは、演じる側にとっても負担が大きいのでは?
「そうですね。自分の一挙手一投足がお客さんを緊張させることにもなりますし、また緊張をほぐすことにもなる。そういった意味では、本当に頭の先から足の先まで、一つ一つの動きに気を遣いますから。すごく追い詰められますし、前回はかなり痩せてしまって。まぁ痩せたというか、やつれたかな(笑)」
──そのダニエル役に、再び挑むことになります。
「でもこの役に関しては、追い詰められることが役作りにもなりますからね。それに僕、“追い詰められる”ことってすごく大事だと思うんですよ。“追い込まれる”だとマイナスなイメージがあるけど、追い詰められるっていうのは、自分自身に十字架を背負わせること。それによって、さらに前に進める気がするんです」
──今回は加藤さん以外のキャストが一新。また映画監督の深作健太さんが、初の舞台演出を手がけられます。
「キャストの年齢層が上がっているので、より大人な、よりクールな作品になると思いますね。演出も深作さんに変わることで、カラー的によりダークになるというか。僕のアプローチの仕方にしても、相手が変われば、必然的に違ったものになるでしょうしね。今回はそこで生まれる感情に素直に、また新たなダニエル像を作っていけたらと思います」
──非常にネタばれが多い作品ではありますが、最後に本作をより楽しむポイントを教えてください。
「本当にいろんな見方が出来る作品だと思います。登場人物の誰目線で見るかによっても楽しみ方も変わりますし、そこからまた全体を見ることで、また新たな面白さが出てくる。だから1回目は、『うわっ、騙された!』と思ってモヤモヤして(笑)、2回目でスッキリして帰ってもらいたいなと思いますね」
取材・文:野上瑠美子 撮影:星野洋介