椎原克知(シイバラカツトモ) のチケット情報

公演レビュー
  • 文学座アトリエの会「いずれおとらぬトトントトン」

    昭和のオリンピックが開催される頃、山奥にある精神に変調を来した患者を受け入れる病院での決まりきった日常に、ある日元香具師だという一人の患者が入院してきた。彼がどんな症状をかかえ、何故この病院にやってきたのか不明だが、彼が扇動する形で波風を立たせる。彼の計画とおり病室の扉の閂ははずされたが、従来の患者の反応は如何に……粗忽者には、時としてアトリエ公演が難解で、咀嚼できないことが多々あるのだが、本公演は、俳優陣はそれぞれの症状をそれらしく演じてはいるものの、粗忽者には不首尾で期待外れの作品であった。

    粗忽者の早とちり
  • フィルメーナ・マルトゥラーノ

    文化庁新進芸術家海外研修派遣者を中心に、イタリアのエドゥアルド・デ・フィリッポの作品を高橋正徳が演出した。ナポリに住むドメリコ・ソリアーノは大金持ちで事業は人任せの上、女好きで競馬狂いの浪費家。その家に25年間家政婦同然に扱われている内縁のフィルメーナ・マルトゥラーノは一計を案じて、大病を詐病し、ドメリコとの結婚を今際の願いとした。多少の後ろめたさを感じたドメリコは神父を呼び願いをかなえてやったところ、貴方の愛に元気になったと豹変した。騙されたドメリコは、手切れ金を渡すからこの結婚は無効だと怒り心頭、弁護士を依頼した。フィルメーナは貧民街で育ち、性を売り物にしその際、女好きのドメリコと知り合った。妻を亡くしたドメリコ・ソリアーノ家に入り込んだのだ。いぎたなくドメリコの薄情を罵る彼女の狙いは何なのであろうか?金なのか?自分に理のないことを弁護士から聞かされたフィルメーナはある事を吐露して、家を出ることにした。暗転すると結婚式の場面。・・・何があったのか・・・彼女の母親としての思い・・・大人の対応・・・本音で生きる女の力強さ・・・大人の機微  荒々しく罵声が飛び交った後の一服の清涼感を味わった佳作だ。粗雑だが芯の通ったフィルメーナを体現した山崎美貴と好き勝手に生きる鼻もちならないドメリコ井上倫宏の演技に尽きると言いて良いのでは。

    粗忽者の早とちり
  • 文学座 「明治の柩」

    近代化に邁進する明治時代、初めての公害事件と言える「足尾鉱山の渡良瀬鉱毒問題」に一生を賭けた田中正造の評伝劇。薄暗く時代を暗示させる足場を組んだ舞台、スピードのある展開、そして時代考証の確かな衣装、文学座の意気込みが感じられた。農民の先頭に立った指導者と評価される田中正造の計り知れない苦悩と理解者ともいえるキリスト教徒の木下尚江、社会主義者後に無政府主義者となる幸徳秋水との交わり。 議会と天皇にシンパする正造にも、彼らの影が次第に差してくる。単なる義民でも英雄でもなく、彼の果たした役割は何だったのだろうか?近代化・工業化といういつの時代も体制側が掲げる経済至上主義の御旗のもとに虐げられる民衆。この話は遠い過去の出来事ののだろうか。彼の不遇の死後、10年にもわたり彼に張り付いていた刑事のつぶやきや田中の妻が葬儀に語る「田中は人様のなかで暮らし、人様にご迷惑をかけて死んだ男です。どうぞ、どなたか、田中を弔う言葉を、田中を叱る言葉をかけてやってくださいませんか」に複雑な想いを持った。秀作である。

    粗忽者の早とちり
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