——どこよりも早く、Jリーグに協賛した理由、きっかけを教えてください。
「Jリーグ発足前から、企業として協賛できるプロスポーツはないか、ずっと注目していました。ところが、当時日本で真に“プロスポーツ”と呼べるものといえば野球ぐらいしかなかったんですね。でも、今さら野球ではないだろうということで、将来芽生える可能性があるのは何か、ずっと模索していまして。ラグビーなのか、バスケットボールなのか、バレーボールなのか・・・そう考えていったら、やっぱりサッカーだろうとなったわけです。世界的に競技人口が最も多く、巨大なスタジアムも満員にできる。そんなとき、ちょうどJリーグがスタートするという話になりまして、タイミングがバッチリ合ったというわけです」
——企業としては、Jリーグにどのような価値を見いだされましたか。
「私どもが求めている“若々しさ”。もうピッタリのコンテンツではないかと思いました。ヤマザキナビスコの商品がターゲットとするコンビニエンス世代、10代後半から30歳前後でしょうか、その世代とも合致していましたから。そして何より、もうできあがっているものではなく、これから芽生える可能性に満ちていたということに価値がありました」
——Jリーグに協賛することによって得られたことは?
「社内的には、社員一人一人のロイヤリティが格段に向上しました。それまでスポーツイベントに協賛するということはありませんでしたが、Jリーグを協賛するようになって一気に上がりましたね。茨城県古河市に工場がありますが、まぁもともとサッカーが盛んなエリアですけど、Jリーグをサポートするようになってから工場内にサッカー部ができまして。社員が就業時間だけでなく、オフでもいっしょに過ごす時間が増えて、求心力が高まったと思います。リタイアされた方も、サッカーだけは続けたりしています。一方、対外的にはイメージ調査などを見ると、“若々しい企業”というポイントが上がりました。Jリーグをスポンサードしている企業としてイメージがアップし、評判がよくなったようです。求人もものすごく増え、リクルートしやすくなったというのも、Jリーグのお蔭でしょう」
——「ナビスコカップ」については、どのようにお考えですか。
「“3大タイトル”という位置づけになってきたことは、大変喜ばしいことだと思います。年間通して行われるリーグ戦とは違う、カップ戦ならではのよさというものを大切にして、Jリーグといっしょに、もっともっと盛り上げていきたいですね。天皇杯もありますが、Jリーグとしては一発勝負のトーナメントというのは他にありませんし。タイトル料もかかっているので、選手、チームのモチベーションも高まり、普段以上のプレイ、興奮した試合が期待できます。リーグ戦、出だしでつまづいたチームも、新たな気持ちで優勝を狙えますからね。また、ナビスコカップではニューヒーロー賞を設けていますが、若い選手がナビスコ杯で育って、Jリーグで大活躍して、さらに世界の場で戦えるようになってもらえば最高です」
——Jリーグに期待されること。Jリーグと今後展開されることは?
「協賛を初めて以来、“金は出すけど、口は出さない”というスタンスでやらせていただいてきたので、Jリーグに対して特に注文ということはありません。最恵国待遇扱いしていただいて、本当にありがたいと感謝しております。今後の展開につきましては、まだ具体的ではありませんが、Jリーグの基本理念である地域密着という点から、Jリーグにお手伝いしていただいて、先程お話しした工場のある古河市で地域貢献していきたいと思っています」
——パートナーとして、Jリーグがここまで成功した理由は何だとお考えですか。
「一番は、やはり初代チェアマン(川淵三郎)が打ち出された『百年構想』だと思います。“百年”ということは、“エンドレスにがんばっていこう”ということでしょう。地域に根ざし、サッカーという一つのスポーツに止まらず、あらゆるスポーツに間口を広げたクラブ。サッカーだけ発展すれば他はどうでもいいという考えだったら、ここまで人を引きつけなかったでしょうね。実は、Jリーグがスタートしたとき、マーケティング研究の方に“Jリーグ商品は3年たったら売れなくなる”と予見されました。実際そうなりましたが、私たちはJリーグ商品を売ることが目的ではなく、ヤマザキナビスコの商品を買っていただくことが目的なのだから、Jリーグといっしょにやっていこう、応援していこうと決めたわけです。あれだけ熱狂してくれるサポーターがいるんですから、絶対にやっていけると思っていました。Jリーグも1年目、2年目、3年目ぐらいまでは観客数が伸びて、ものすごい勢いで成長しましたが、そのあとちょっと低迷された。さまざまな要素があったでしょうが、そのまま落ち込むことなく地に足がついたような運営に切り替わって、また成長した。選手も技術面だけでなく、人間的にもレベルが上がりましたから、あの一時期落ち込んだのもいい経験かなと思います」
——日本サッカー界に期待されることは?
「とにもかくにも、フェアプレイであって欲しい。抜け出してきた選手と一対一になったとき、仕方ないから反則して止める。それも技術だと言われますけど、我々は大嫌いです。どんな状況でも、フェアプレイに徹すること。将来のある子供たちが見ているんですから。いよいよ来年はワールドカップですが、日本代表選手には体に気を付けて、ケガしないでがんばっていただきたい。海外組と日本組がうまく融合して、コンセンサスのとれた本当に一つのチームとなって戦ってもらいたいと思います。日本代表の今日の強さを支えているのはJリーグですが、そういう意味では、今回フロンターレの箕輪義信選手が代表に選ばれたのは嬉しいですね。長年Jリーグでがんばって、29歳にして初めての代表入り。まさにJリーグの象徴だと思います」
——最後に11月5日に行われますナビスコカップ決勝に向けて一言。
「ジェフ対ガンバ、とても興味深い対戦ですよね。できるだけ多くの観客に入っていただいて、いい試合を見せて欲しいと思います。イエローカードやレッドカードが飛び交うような試合だけはやめてもらって、最後まで正々堂々とお互い11人揃って戦い抜く。子供たちに夢を与えられるような試合。みんなが爽快な気持ちになって、感動するような試合を期待しています」
取材・構成/宮崎俊哉(CREW) |