——まず初めに、スポーツ支援を中心に御社の企業理念からお話しいただけますか。
「弊社は、米国ジョージア州アトランタにあるザ コカ・コーラ カンパニーの現地法人として、日本でビジネスを始めて50年以上になります。スポーツ支援に対しては、世界規模の大会から草の根で行う地域のスポーツ大会に至るまで、グローバルで共通する基本的な考えに基づき、様々な活動を展開しています。
もともと飲料会社ではありますが、私どもとしては、我々が提供する飲料やブランド価値の体験、マーケティング活動やその他地域に密着した様々な企業活動を通じて、お客様の身体はもちろん、気持ちの上でもリフレッシュメント・爽やかさを提供して、前向きで幸せなひと時を過ごしてもらいたいという考えがございます」
——そもそもコカ・コーラとサッカーの関わりは?
「ご存知だと思いますが、FIFAでは1978年のワールドカップ・アルゼンチン大会からオフィシャルスポンサー制度を設けています。そのスタートの年から今の契約ですと2022年大会まで、ワールドカップを含むFIFAのトップパートナーとしてのパッケージ契約が継続しています。また商品提供については、今のようなスポンサー契約を締結する以前の第1回のウルグアイ大会から、始まっていたようです」
——FIFAと共に歩んで来られたんですね。
「はい。FIFAが現在の制度を整えた時から、私どもの意気込みとしてはよほどのことがない限り、未来永劫可能な限りサポートを続けていくぐらいの強い意志を持っており、パートナーとしての関係を築いています。因みに、W杯と同等の世界大会であるオリンピックに対しても同様の考えを持っております。1928年の第9回アムステルダム大会のときにアメリカ代表の応援団がコカ・コーラを運んだのがきっかけとなり、それ以来現在に至るまでパートナーとして大会の支援を続けています。世界的に言えばIOCのオリンピックと、FIFAのサッカー・ワールドカップに対しては、アトランタの本社を中心として、強いコミットメントを世界で共有しています」
——なぜ、スポーツを支援されるようになったのでしょうか。
「当然ながらコカ・コーラは飲料メーカーですから、我々がご提供できるのは“リフレッシュメント”。ではお客様にヘルシーでアクティブな生活を送っていただくのに、どういう時にリフレッシュメントが必要かと言えば、その最たる機会の1つはやっぱりスポーツなんです。IOCに加盟している国・地域が202 、FIFAが205ですが、コカ・コーラも200の国や地域で製品を製造販売していますから、スポーツに対する理念はもちろん、活動スケールという点においてもIOC やFIFAの目指すところと合致しているんです」
——まさに全世界ですね。
「我々は“いつでも、どこでも、誰にでも”とよく言いますが、どんなときでも、どんなところでも、そして老若男女誰に対しても、我々の製品を飲んでいただきたいというメッセージが込められています。 “サッカーは世界の共通語”なんて言いますが、我々としては“「コカ・コーラ」は世界共通のリフレッシュメント”。全世界でほぼ100%に近い方々が「コカ・コーラ」というブランドを認知し、ご支持をいただいておりますので、そういった点においてもサッカーとコカ・コーラには高い親和性があります」
——FIFA協賛を含め、これまで行ってきたサッカー支援・振興について教えてください。
「我々とサッカーの関係において一番歴史が長いのは全日本少年サッカー大会というグラスルーツの大会。小学生の日本チャンピオンを決めるクラブチームの大会を、第1回大会からもう30年以上にわたり支援を続けています。また以前はセルジオ越後さんと組んで、“さわやかサッカー教室”も長年やってきましたが、こちらは北澤豪さんや中田英寿さんをはじめ、後々日本代表としても活躍した多くのJリーガーも含めて、延べ10万人以上の小学生が参加しました。みなさんセルジオさんから手取り足取りサッカーを教わって、“あの時はすごく楽しかった”なって仰っています。30年くらい前まで日本では圧倒的に野球人気が高く、サッカーチームは全国に2000くらいでしたが、今では8000チームを超えていますからね。この土台には、全国各地で積極的にご協力いただいたセルジオ越後さんの影響も本当に大きいと思います」
——高校サッカーも支援されていますね。
「全国高校サッカー選手権はもう10年以上です」
——さらに、今回Jリーグを支援されるようになったわけですが。
「我々としても、日本サッカーのトップにあるプロリーグですから、ぜひともJリーグさんをサポートしたいというのがありました。敢えて、なぜJリーグさんとパートナーとして組ませていただきたかったかというと、なんと言ってもJリーグは世界でも5番目くらいのリーグ。1試合あたりの観客動員という意味では、イタリアのセリエAより規模が大きく、930万人超えるぐらいですからね。野球に比べても伸びてきていますし」
——さらに伸びる要因もある。
「それが1つ目の理由ですが、2つ目としては我々のビジネスパートナーであるボトリング会社(ボトラー社)というのが日本全国、北海道から沖縄まで12社あります。それぞれが地域密着型のビジネスを展開すると同時に、各地域でコミュニティと一緒になって、社会貢献としていろいろなスポーツを支援しています。それが、Jリーグの地域密着と非常によくフィットしていた。相性が良かったんですね。それから3つ目は、サッカーシーズンの問題。我々はホットの飲料も販売していますが、基本はやはりアイスコールド、特に炭酸が強いですから。アイスコールドのシーズンと言うと、3月くらいからキャンペーンが立ち上がり、夏まで。秋以降は缶コーヒーの『ジョージア』などのキャンペーンとなりますが、ビジネスの規模ではアイスコールドの比重が高い。ですから、夏場をピークに基本、春から12月まで。そうなると、我々のシーズナリティにおいても、アイスコールドを中心とした飲料メーカーのビジネスとサッカーは合っているんです」
——なるほど。
「ちょっと異なる視点でお話をすると、我々の製品は、できれば誕生日とかクリスマスと言ったような、皆さんが少しでも幸せを感じられる様な時に飲んでもらいたい。多くの人々が“楽しいな、幸せだな”と思うようなときに、やはりコカ・コーラはふさわしい飲料だと思っています。みなさんがJリーグをスタジアムに観戦しに行く、あるいはテレビで観る時というのは、まさしく楽しいときじゃないですか。友達や家族と一緒に、楽しく盛り上がった気ちにある、そういうところで是非とも飲んでもらいたいという思いもあります」
——今回発表されて、反響はいかがですか。
「今、いろいろな企業スポーツが撤退、休部するような経済状況のなかで、私どもコカ・コーラシステム(日本コカ・コーラやボトリング会社など、コカ・コーラビジネスに関わる企業体)としては、逆に打って出た。暗い話題が続きがちだった日本のスポーツ界において、非常に前向きで、明るい話題提供をしたということもあり、おかげさまでご評価をいただいています」
——スタートしてまだそれほど経っていませんが、着実に実感されている?
「そうですね。全国各地域のボトリング会社へも、こんなにいろいろな大変な時期なのにJリーグ全体を支えてくれて非常にありがたいというお言葉をいただいているようです。それによって、それぞれの地域では地元のクラブチームとのリレーションもすごくよくなっていますし、それぞれのコミュニティで一緒になってサッカーを盛り上げていっていただければ、日本のサッカー全体が盛り上がりますからね。それが結局、サッカーの更なる普及にもなるし強化にもなる。日本代表がワールドカップ、オリンピックで戦うことにも繋がるし。私たちの今回の決断とアクションが、最終的にそうした成果に繋がればいいなぁという期待はすごくありますね」
——コカ・コーラさんがついにやってくれたなという感じですね。
「先程もお話させていただいたように、うちはもともとFIFAもありますし、セルジオ越後さんを招いての少年サッカー教室 など、ボトラー社の方でも地域に密着しながら、長年にわたり色々な形でサッカーと携わっていましたからね。因みに今回のJリーグの支援含めて、こういった活動を我々は“スポンサーシップ”と言わず、“パートナーシップ”と言っています。スポンサーと言うと、お金だけ払っているみたいに見られてしまうこともありますが、我々は対等なパートナーとして、志を共有した上で、我々の持つ様々なノウハウやリソースを活用して、共に成長していきたい、そんな風に思っています」
——すごく大きな差ですね。
「実際に、3月からは、『Coca-Cola Zero×Football』キャンペーンとして、Jリーグ戦の全節・全試合の観戦チケットが当たるプロモーションをはじめ、デザイン缶、Jリーグ情報を提供するウェブサイトの開設など、様々な活動を行っています。また、今後はクラブのホームタウン周辺で、オリジナルのクラブデザイン缶の発売など、長年のサッカー支援を通じて得たノウハウを総動員し、「コカ・コーラ ゼロ」らしく、ワイルドでクールにサッカーを楽しんでいただける企画を、全国の各地域に密着して提供していくような企画を考えているので、是非期待していただきたいですね」
——因みにどうして、「コカ・コーラ ゼロ」なのでしょうか?
「『コカ・コーラ ゼロ』では、この2月から新キャンペーンを展開し、“WILD HEALTH”という新たな価値を提案しています。 “コカ・コーラならではの美味しさやワイルドさと、糖分ゼロ・保存料ゼロといったヘルシーさを両立した” 「コカ・コーラ ゼロ」と、“熱狂・興奮×健康・前向き”という情緒的価値を提供するサッカー。どちらも“型にはまらない発想で、2つの相反する価値を同時に提供する”という点で共通しており、強い親和性を感じたのが大きいですね。サッカーって、スタジアムで熱狂・興奮するなど、ある意味ではクレイジーになったりするじゃないですか。とってもワイルドではあるんだけれども、一方で基本的にスポーツなんですごく健康的で。さらに個人的に言えば、89分50秒くらいがずっと緊張や集中を強いられるのに、ゴールの瞬間には、“ウオー!”となってストレスやエネルギーを発散・解放する。そのサッカーならではの対比というのも『コカ・コーラ ゼロ』ぽいですね。
またこの『コカ・コーラ ゼロ』というブランドは2007年に発売した比較的新しいブランドですが、お蔭様で発売以来大好評で、私たちにとっても今後の成長が楽しみな、とても重要なブランドです。Jリーグという強力なコンテンツに対しては、やはり同じく強力なブランドがパートナーとしては相応しい、という考えもありました」
——社内、社員の方たちの反応はいかがですか。
「すごいですよ。待っていましたとばかりに、私が予想していた以上に反応がよくて(笑)。好きなチームがある人もいるし、フットサルをやっている人もいるし、スポーツ好きな人が圧倒的に多い会社ですから、Jリーグは身近なんでしょうね。また、ボトラー社もJリーグ36チームのうち16チームをサポートしていますから、非常にありがたい機会だと思ってもらっています」
——各エリアごとの活動もこれからは出てくるということですね。
「そうですね。地域、エリアの特長に合わせていろいろな企画を考えています。全国のボトラー社の企画担当の方もサッカーファンが多いようで、企画実行にむけて、物凄い気合を感じています(笑)」
——まさに地域密着の活動ですね。
「そうそう、社会貢献ということで言い忘れてしまいましたが、以前、弊社のオフィシャルパートナーとして契約させていただいていた中田英寿さんとは、サッカーを活用した社会貢献活動に一緒に取り組ませていただきました。企画の段階から色々とディスカッションして、FIFAワールドカップで子どもたちの夢を叶えたいということになったんです。試合開始前に国旗を持って入場するフラッグベアラーの権利をグローバルの契約で我々が持っていたので、全国の中学生を対象に公募する企画を立てました。知っている国、知らない国もあるでしょうが、どんな国か調べてレポートをくださいという課題を出して優秀な作品をまとめた中学生をワールドカップのフラッグベアラーにご招待したんです。ものすごいいいレポートが出てきて、選考委員長にもなっていただいた中田選手ともども、関係者はみな驚きましたね」
——子どもたちの夢を叶えたわけですね。
「当選した子どもたちをドイツワールドカップに連れていって、世界中の子どもたちと一緒にキャンプに参加してもらって。晴れの舞台である日本戦では、日本の国旗を持って日本代表の選手と一緒に入場してもらって。その時はワールドカップという機会にちなんで一生懸命外国について調べていただきましたが、調べるっていい勉強になりますよね。これが直接の動機付けになるかは分かりませんけど、外交官になりたいとか、国連に行きたいとか、FIFAに入りたいとか。そういう子供たちの将来の夢のきっかけを作ることも、社会貢献だと思っています」
——サッカー選手、ファンへのメッセージをお願い致します。
「先にも申し上げましたが、我々を“スポンサー”ではなく、“パートナー”として見ていただきたいですね。みなさんと一緒にJリーグを、ひいては日本のサッカー界全体一緒になって盛り上げていくパートナーでありたいと願っています。 『コカ・コーラ ゼロ』は幸いなことに多くの方に認知していただいており、広告宣伝的なことの意味合いのみを求めてパートナーになったわけではありません。日本でサッカー、もしくはスポーツをする人がたくさん増えることは、日本人の心身ともに健康になることにも繋がると考えており、それが我々のビジネスを通じて目指すべきところである訳です。ですから、今回のJリーグへの協賛や「Coca-Cola Zero X Football」のような活動を通じてパートナーとして協働することで、Jリーグそのものの価値があがり、観客動員も増えて、サッカーやJリーグを好きな人が増えていけばいいですよね。サッカーファンの皆さん、是非今後とも一緒にJリーグや日本のサッカーを盛り上げていきましょう」
取材・文:宮崎俊哉(CREW) 撮影:新関雅士 |