——社会貢献、スポーツ支援を中心に、企業理念を教えてください。
「富士ゼロックスは、“ザ・ドキュメント・カンパニー”として目指すものに、次の3項目をあげています。
●知の創造と活用をすすめる環境の構築
●世界の相互信頼と文化の発展への貢献
●一人ひとりの成長の実感と喜びの実現
私たちは、この『世界の相互信頼と文化の発展への貢献』を目指し、この40数年にわたってさまざまなスポーツや音楽の協賛活動を行なってまいりました。それは、スポーツや音楽が、言葉や価値観の異なる人々が相互に感動を共感しあうことができるコミュニケーションの一つであると考えているからです。私たちの事業活動のベースには『知の創造と活用をすすめる環境の構築』により、人と人とのより良いコミュニケーションを実現していきたいという強い想いがあります。このように、事業で提供していきたい価値と、スポーツや音楽を通して多くの人々が理解し合えるということは、『コミュニケーション』という点で共通しているのではないでしょうか。
そして、サッカーをサポートしてきた大きな理由は、スポーツの中にもいろいろなジャンルがありますが、老若男女を問わず世界で一番接している方が多く、人気の高いスポーツがサッカーであるからです」
——Jリーグの大会を選ばれ、支援されるようになったきっかけは?
「私どもはサッカーに早くから関心を寄せ、'70年から『全国高校サッカー選手権大会』を協賛させていただいていますが、それがサッカーと関係を持つようになった第一歩でした。毎年、年末から年始にかけて行なわれ、全国の高校サッカー選手にとってあこがれの舞台であると同時に、日本のサッカーを支え、数多くの優秀な選手を輩出してきた大会です。当時まだ日本ではサッカーはプロ化されておらず、日本のリーグも企業スポーツ、アマチュアスポーツの時代。しかも、そのような中で支援するのは高校生ですから、かなり社会貢献という意味合いが強く、サッカーの裾野を広げる活動に関わるところからスタートしたと言えるのではないでしょうか。この高校サッカーの協賛は現在も続けていますので、かれこれ35年にもなります。その後、'79年から『ゼロックス スーパーサッカー』という大会を協賛させていただきました。世界のトップチーム、超一流プレイヤーを招待し、日本サッカーの強化と国際親善の実現に努めるということで、9回にわたり開催し、ベッケンバウアー(ドイツ)、クライフ(オランダ)、マラドーナ(アルゼンチン)など、世界のサッカー史に輝かしい足跡を残したスーパースターが来日、その名声に恥じぬプレーを披露して、日本全国のサッカーファンを魅了してくれました。日本も、こうした名選手、強豪チームとの対戦を通じて着実にレベルアップを遂げ、現在のように国際舞台で活躍する基礎が築けました。このような日本サッカーの飛躍を、微力ながらお手伝いできたのではないかと考えています。
そして、日本サッカーがようやくプロ化され、Jリーグがスタートした翌年の'94年からは『ゼロックス スーパーサッカー』改め『ゼロックス スーパーカップ』という形で、前シーズンのJリーグチャンピオンと、伝統ある『天皇杯全日本サッカー選手権大会』の優勝チームが対戦する夢のカードを特別協賛させていただくことになりました。そこから、Jリーグとのお付き合いも始まりましたが、この大会も今回で13回目を迎え、本格的なサッカーシーズンの幕開けを告げる大会として、サッカーカレンダーに定着するようになったのはうれしいことです」
——日本サッカーをスポンサードするようになって、企業として得られたことは?
「私共のビジネスはB to Bが主体ということもあり、“会社”対“会社”のお付き合いがほとんどで、ブランドに接する方はある程度限られてしまいがちです。オフィスの中で仕事をされる方々でないと、『富士ゼロックス』という名前、商品に触れる機会があまりない。Jリーグを支援させていただくことが、一般の方々に広く認知していただき、理解していただくきっかけになっていると思います。例えば、ビジネスマンを支えるそのご家族や、日頃は接点の少ない学生の方たちも、サッカーを通じて『富士ゼロックス』というブランドに接する機会を生むことができたのではないでしょうか。また、試合・大会がありますと実際に来場して楽しめるという面もありますので、私共のお客様をご招待して観戦していただくことで、いつもとは別の視点から私共のスポーツへの取り組みを理解していただけるという意味合いもあります」
——今後のJリーグに期待することなどありましたら。
「現在協賛している『ゼロックス スーパーカップ』を、常に会場が観客で埋め尽くされるようなタイトル戦にしていきたいですね。今年はJリーグの中でも特に“熱い”サポーターで知られる浦和レッズとガンバ大阪の対戦ということで、チケットも発売開始から45分で完売したと聞いておりますが、どの対戦であっても会場がフルに埋まる大会にしていきたいと思っています。ヨーロッパには、『UEFAスーパーカップ』というのがありますが、あの盛り上がり感、注目度は素晴らしいと思います。日本でもそのような大会にしていけたらという想いがあり、“スーパーカップ”という名もそこから付けられたと聞いております。
Jリーグも'93年にスタートして、すごくうまくいっていると感じています。この数年のように仙台や新潟など地方も盛り上がっていますし、地域と一体化したシステムというのがいい形で続いていて、子どもたちが小さい頃から地元のチームに親しんでいけるというプロセスがしっかりできあがってきていると実感しています。そういったなかで、より地域と密着したチームができ、それを応援するサポーターのベースがしっかりできあがることが、日本サッカー界のトップチームを競う『ゼロックス スーパーカップ』が盛り上がる要因になるのではないかと思いますので、現在のJリーグのプログラムをぜひ継続してほしいと思います」
——企業とJリーグの関係。どのようなパートナーシップが理想的だと思われますか。
「企業側の目的もさまざまかと思いますが、やはりJリーグが発展し、その恩恵として企業のブランドにも注目していただくために、協賛する大会をいかに発展させていくべきなのかを、Jリーグにも積極的に具申していこうと考えています。正しい仕掛けを考えてやっていくなかで、結果として社会にも貢献し、企業としてのブランド価値を高めていけることが理想です。そのしかけについては他のスポーツ団体もご苦労されているでしょうが、今、Jリーグはうまく進んでいると思いますので、その流れを断ちきらず、さらに新しい人たちが出て活躍してくれれば、企業との関係も新たな形が見えてくるのではないかと期待しています。
富士ゼロックスは、35年以上の長きにわたり、世界中で多くの人々に愛され、プレーされているサッカーを応援してきました。サッカーというスポーツを通じ、文化の発展や青少年の育成、国際融和に努めていく中で、サッカーと共に企業が成長し歩んできたと言っても過言ではないと思います。今後もぜひ、わが国におけるサッカー、そしてスポーツ文化のさらなる発展と繁栄に貢献していきたいと考えています」
取材・構成/宮崎俊哉・山田美恵(CREW) |